鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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大変長らくお待たせいたしました!投稿です!
ちなみにイベントはやっとE3甲を突破しまして、E4丙にかかったところです。なんでE4にも陸上型がうじゃうじゃしてるんだ…



066. アサマ作戦6合目 パールネウス攻撃(2)

 中央暦1640年6月11日、パーパルディア皇国「聖都」パールネウス。

 パールネウスを囲む高さ30メートルの二重の城壁に設けられた門は、例になく固く閉ざされており、城壁の上に設置された魔導砲を操る砲兵たちはピリピリした雰囲気を湛えていた。その視線は敵意に満ちて、城壁の外を睨み付けている。

 その兵たちの視線の先には、パールネウスの城壁の外側に布陣している軍隊の姿があった。もちろん、パーパルディア皇国陸軍の友軍などではない。敵である。

 パーパルディア皇国に対して宣戦を布告し、武力侵攻してきた元属領73ヶ国連合軍、リーム王国軍、トーパ王国軍、そしてロデニウス連合王国軍からなる大連合部隊が、パールネウス北東部に布陣して同市を占領しようとしているのだ。

 

 かつて無いような強敵の襲来を前にして、パールネウス守備隊の兵士たちは、決死の覚悟を固めていた。

 特にロデニウス連合王国に対しては、パーパルディア皇国は殲滅戦を宣言している。それはつまり、パーパルディア皇国はロデニウス連合王国の国民を一人残らず虐殺する、という宣言であるが、同時にロデニウス連合王国もパーパルディア皇国民を皆殺しにできる、ということでもあった。そしてその殲滅戦の宣言が、最悪の形で跳ね返ってきたのだ。

 文明圏外国どころか、上位列強であるはずのムー国ですら裸足で逃げ出すような力を持ったロデニウス連合王国軍。その苛烈な攻撃により、第三文明圏最強を誇ったパーパルディア皇国皇軍は、いずれも壊滅的な被害を受けている。

 特に海軍は、戦列艦・竜母合わせて総数1,000隻を超えるほどの大艦隊を揃えていたはずが、今や生き残った艦艇は100隻にも満たず、新造艦の補充も損傷艦の修理も不可能、という惨憺たる有様である。

 竜騎士団も、“一度飛び立てば七つの大軍を滅ぼせる”とまで謳われた()()()()()の最強航空部隊であったはずが、ロデニウス連合王国軍が投入した戦闘機により、敵機撃墜どころか制空権の死守すら叶わない。

 陸軍にしても、200万を誇った兵力は半分以下となり、しかも生き残りの兵士たちは各々が分断された状態である。

 

「来るなら来い……! パールネウス市街地には指一本触れさせんぞ……!」

 

 パーパルディア皇国皇軍・パールネウス防衛隊兵士のうち、城壁の上で魔導砲を操る砲兵たちは、敵意を剥き出しにして城壁の外を睨み付けた。

 

 

 一方、

 

「うーむ、あの城壁の上にある魔導砲を何とかせんと、攻略もへったくれもないな、こりゃ……」

 

 大連合部隊の本陣を出たところからパールネウスを囲む城壁を見上げて、ロデニウス連合王国陸軍第3軍団司令官クワルク・サムダ将軍が呟いた。

 パールネウスを囲む城壁は30メートルもの高さがあり、しかもその上には射程2㎞を誇る魔導砲が配備されている。陸戦では……いや、陸戦に限らず空戦でもそうであるが、高所を押さえるというのは、それだけでアドバンテージたり得るのだ。

 

「あの魔導砲をどうするか……? しかし、あの砲台より高い所となると、空くらいしかないぞ。空に大砲を配備することなんてできんし、かといって我々のWG42では城壁の上に届くかどうか。そして届いたとして、あの魔導砲に上手く当てられるか、保証がない……どうしたものか……ん?」

 

 ブツブツと呟きながら思案していたその時、彼の脳裏に閃くものがあった。

 

「そうか、空だ! 空なら、我が軍の優秀な航空隊がいるじゃないか。航空支援を要請して、壁の上の魔導砲を全部吹っ飛ばしてもらえば良いじゃないか!

ハハッ、どうして気付かなかったんだ!」

 

 やっとこさ名案を思い付いた彼は、にっこり微笑むと本陣へと引き返していった。これから、パールネウスを攻め落とすための作戦会議が行われるのである。

 

 

「それではこれより、作戦会議を開会します」

 

 生真面目な表情のミーゴの言葉の下、作戦会議は開始された。

 

「今回の会議の議題はずばり、パールネウスを如何にして攻め落とすか、です。

前回のパールネウス基地攻略の際には、皆様の働きのおかげを以ちまして、比較的早期に基地を落とすことができました。今回はそう上手くいくかどうかは不明ですが、必ず攻略する道はあるはずです。皆様には、忌憚のない意見交換をお願い致します」

 

 そう言って元属領73ヶ国連合軍の司令官ミーゴが着席すると、早速挙手する者がいる。トーパ王国軍コラー中隊指揮官(隊長)アーノルド・ネイランだ。

 

「今回の攻略対象であるパールネウスですが、これまでのパーパルディア皇国の都市とは桁違いの防御力があることは間違いないでしょう。何せ、あれだけ高く厚い壁があるのですからな。あれを突破するのも、容易ではないでしょう。

それに、あの壁の上には魔導砲が配備されていて、2㎞も先からこっちを狙ってくる訳ですからな。あれさえなければ、まだ何とかやりようもあるのですが……。ですので、まずは壁の上の魔導砲を何とかする必要がありますな」

(アーノルド殿も、私と同じ意見か)

 

 サムダがそう考えていると、リーム王国軍の将軍カルマも頷いた。将軍だけあって、彼も城壁の厄介さは分かっているようだ。

 

「ええ。あの魔導砲がある限り、まともに近付けませんしね」

 

 苦虫でも噛み潰したような顔で、カルマも口を開く。ここが意見の出し所だと考え、サムダは口を開いた。

 

「私としましても、全く同じことを考えておりました。そして(せん)(えつ)ながら、あの魔導砲を何とかする見込みの有りそうな策を思い付きました」

「え? サムダ殿、あの魔導砲の対処法を思い付いたのですか?」

 

 ミーゴが驚いて声を上げる。

 

「はい。あの魔導砲を撃たれるからこそ、我々にとって脅威になるのだと思います。でしたら、制空権を確保して空から攻撃を行い、魔導砲を1つ残らず破壊してしまえば良い、と思うのですが、如何でしょうか?」

「なるほど、空からの攻撃ですか!」

 

 サムダが説明すると、合点がいった様子でミーゴが頷いた。

 

「はい。ただこれには、“パールネウス上空の制空権の奪取”が必要になりますが」

 

 サムダがそう言った時、

 

「ならばここは、我々リーム王国の竜騎士団にお任せあれ!」

 

 唐突に、カルマが口を挟んだ。

 

「我がリーム王国軍の竜騎士団は、先日の戦いで大きな損害を受けましたが、戦力を増強し、回復致しました。その竜騎士団を以て、パールネウス上空の制空権なぞ簡単に奪取してご覧に入れましょう!」

 

 カルマとしては、今度こそ()()()()()()()()()()()()()輝かしい戦果を挙げ、同国に恩を売っておきたかったのだ。

 少し前のパールネウス基地攻略でも、いや、それよりもっと前のアルーニ攻勢の時から、リーム王国軍はある程度の活躍こそしているものの、“美味しいところ”の大半をロデニウス連合王国軍に持っていかれている(と、カルマは思っている。まあ実際、結果的にそうなっているのは否定できないが)。今度こそ戦果を挙げておかなければ、これ以降ロデニウス連合王国に恩を売るチャンスなど、そうそうないであろう。

 

「それは心強い。ではカルマ殿の意見を入れて、パールネウス上空の制空権確保は、リーム王国軍の竜騎士団にお願い致しましょう。よろしくお願い致します、カルマ殿。リーム王国軍の指揮官の皆様にも、よろしくお伝えください」

 

 ミーゴが、カルマに頭を下げる。

 

「承りました。必ずやパールネウス上空の制空権を奪ってご覧に入れましょう!」

 

 やけに自信満々に言うカルマ。実は彼にも、ちょっとした勝算があったのである。

 

(いくらパールネウスと言ったって、城壁内に飛行場があるとしても、飛行場にいるワイバーンの数はそう多くはないだろう。壁の大きさを考えれば、幾ら多くても50程度ってところだ。それなら、先日増援を受けた竜騎士団で何とかなるはずだ!)

 

 先日のアルーニ攻勢の際、リーム王国軍は100騎の竜騎士団を投入して、パーパルディア皇国皇軍のワイバーンロード竜騎士団と戦った。

 パーパルディア皇国竜騎士団はワイバーンロードを装備している。対して、リーム王国軍の竜騎士団は()()()ワイバーンの装備であり、質ではリーム王国軍が劣っていた。だが、リーム王国軍100に対してパーパルディア皇国軍は20程度。数の差で押し切れると考えていた。

 実際に対峙してみると、リーム王国軍竜騎士団は最初の奇襲で12騎のワイバーンロードを撃墜し、残り9騎にまで敵を減らすことができた。が、敵の竜騎士団は激しく抵抗し、最終的にパーパルディア竜騎士団は全滅したものの、リーム王国軍竜騎士団は100騎から50騎にまで討ち減らされた。軍隊の定義でいうなら「全滅」扱いである。

 そこで、カルマも含めたリーム王国軍・パーパルディア侵攻部隊上層部は、本国に竜騎士団の増援を依頼し、50騎から300騎にまで戦力を回復させたのだ。なお、これはリーム王国軍ワイバーン騎士団の8割にも当たる戦力の投入である。本国の警備等もあるため、これ以上の増援は不可能だった。

 カルマはこれを以て、パールネウス上空の制空権を奪取できる、と見込んだのだ。幾ら相手がワイバーンロードでも、これだけの数があれば何とかなるはずだ。

 

(もう、アルーニでの失敗は繰り返さない。見ていろ、ここで活躍するのは我々だ……!)

 

 カルマはぐっと、両の拳を握り締めた。

 それを見ていたサムダは、心中密かにあることを考えていた。

 

(これは、ちょっと支援要請を早める必要がありそうだな……)

 

 

 翌6月12日午前9時、パールネウス市内 パールネウス防衛隊司令部。

 

「総司令! 対空魔振感知器に多数反応あり! 数は約300! これは……反応の大きさから考えて、おそらく通常型ワイバーンです!」

 

 パールネウス防衛隊の総指揮に当たっていた皇軍総参謀長ステァリンの下に、部下が焦った様子で報告を上げた。

 

「ワイバーン300か。おそらくリーム王国軍だな。

よろしい、ワイバーン隊は全騎出撃! リーム王国軍と見られる敵ワイバーン隊を殲滅せよ!」

 

 ステァリンの号令一下、飛行場には緊急発進(スクランブル)を意味するアラームが鳴り響き、竜騎士団が次々と上空に舞い上がっていく。その数は51騎。これで“全力出撃”というのであるから、パーパルディア皇国竜騎士団も落ちぶれたものだ。

 だが、例え数が少なかろうとも「腐っても列強」である。この51騎全て、装備しているのはワイバーンロード()()()()。時速430㎞を叩き出せる、パーパルディア皇国が世界に誇る「世界最強の飛竜」ワイバーンオーバーロードなのである。通常型ワイバーンとの性能差は歴然としており、多少の数の差では(くつがえ)し切れないほどの性能差があった。

 

 そんなこととは露知らず、出撃してきたリーム王国軍竜騎士団は、迎撃に上がってきたパーパルディア皇国竜騎士団と交戦に入った。多数の飛竜が絡み合う様子を見上げて、カルマはほくそ笑んだ。

 

(やはり、パーパルディア皇国の竜騎士団は50騎程度か。……勝った、計画通り)

 

 ところが、そのカルマのにやけ顔は、交戦開始からたった2分で崩れ去った。

 リーム王国軍竜騎士団は数で押し切ろうとしたものの、パーパルディア皇国竜騎士団の猛攻の前に、次々と撃墜されていく。パーパルディア皇国の飛竜も落ちてはいるのだが、キルレシオはどう見ても1対15くらいの差があった。

 加えて、パーパルディア皇国の飛竜はワイバーンロードよりも大きく、速度も速いようだ。

 

(まさか……これ、()()()()()()()()か!?)

 

 カルマがそう確信した時には、既に遅かった。

 瞬く間に、半数以下にまで討ち減らされたリーム王国軍竜騎士団は敗走。それを追跡するパーパルディア皇国の一部の飛竜が、リーム王国軍野営陣地上空にまで到達し、導力火炎弾を発射、リーム王国軍陣地は炎上した。算を乱して逃げ惑うリーム王国軍歩兵が、何人も導力火炎弾の炎の煌めきに消えた。

 パーパルディア皇国の一部の飛竜は、そのまま大連合部隊の本陣を蹂躙するかに見えた……が、危機を察知したロデニウス連合王国軍が、独断行動で「全軍集まれ」を発令。逃げてきた他の軍隊の兵士を護りながら、ハノマーク装甲車のMG34機関銃や歩兵の持つ九九式軽機関銃の銃身に仰角をかけ、必死に対空弾幕を張って飛竜に足止めを喰らわせた。なおこの際、トーパ王国軍コラー中隊も総出で対空戦闘に当たり、“3()2()()()()()()()でワイバーンオーバーロードを1騎撃墜する”という大戦果を挙げている。

 

 そして、大連合部隊が必死の対空戦闘を行って、どうにか時間を稼いでいる間に“援軍”が到着した。それは、突如としてパールネウス上空に姿を現した多数のレシプロ航空機だった。

 実は11日の作戦会議の後、サムダはパールネウスに接近しつつある南方軍集団総司令部に向けて、「パールネウス城壁上に魔導砲多数あり、攻略は困難。また、12日9時にリーム王国軍竜騎士団が攻撃を行う予定なるも、失敗の公算あり。よって、上空援護機を要請する!」と、通信を送っていた。それを受けた堺は、直ちに第13艦隊空母部隊のうち、エストシラント沖に展開している「(しょう)(かく)」「(ずい)(かく)」「(たい)(ほう)」に対して「急降下爆撃機と戦闘機による上空援護を実施せよ」と打電した。そして12日の朝、3人の空母艦娘は第601航空隊の「(れっ)(ぷう)」や零戦に護衛された、「(すい)(せい)」と「(りゅう)(せい)」と「Ju87C改」からなる航空部隊を飛ばしたのだった。

 その陣容は、「零戦52型(熟練)」が17機、「烈風(601空)」が18機、「彗星(601空)」が24機、「流星」が33機、そして「Ju87C改(Rudel Gruppe)」が24機というものである。

 

 パーパルディア皇国竜騎士団はこれを迎え撃った。だが、ワイバーンオーバーロードは最高時速430㎞しか出せないのに対して、戦闘機は軒並み時速550㎞を余裕で出せる。という訳で、質で勝るロデニウス連合王国軍航空部隊は、ワイバーンオーバーロードを次々と撃墜し、あっさりとパールネウス上空の制空権を確保した。

 そして、エアカバーの無くなった城壁と飛行場に向けて、急降下爆撃隊が攻撃を開始。導力火炎弾の発射態勢に入ったワイバーンを思わせる急降下に、城壁の上で魔導砲に齧り付いていた砲兵たちは、慌てて逃げ出さざるを得なくなった。

 

ヒュウウウウ……ドガアァァァァン!

 

 あっという間に城壁の上には爆弾が雨霰と落下し、魔導砲が次々と破壊される。時折魔導砲の砲弾が誘爆し、爆弾の爆発による爆炎に混じって巨大な火球が発生し、空に向かって立ち昇る。その爆発音に匹敵するような、ウウウウウウウウウーーー!!! という、どこかで聞いたようなサイレンに似た甲高い音が響いた。

 上空から飛行場に向けて急降下するのは、上方に向けて折れ曲がった妙な翼と突き出た脚を持つ機体。そう、ドイツ第三帝国が誇った傑作急降下爆撃機、シュトゥーカことユンカースJu87である。しかも、「空の魔王」こと"ハンス・ウルリッヒ・ルーデル"大佐率いる精鋭爆撃隊、「Ju87C改(Rudel Gruppe)」であった。

 

「良いかガーデルマン! 逃げる奴はパーパルディア兵だ!」

 

 独特の甲高い風切り音……サイレンに似たその響きから「悪魔のサイレン」と呼ばれ、恐れられた……に負けないような大声で、シュトゥーカの操縦桿を握る妖精ルーデルが叫ぶ。

 

「じゃあ向かってくる奴は!?」

「よく訓練されたパーパルディア兵だ!」

「結局敵じゃねえか!!」

 

 質問に対して妖精ルーデルが返してきた答えに、シュトゥーカの後部機銃手座席に座る妖精……こちらは仲間内で"エルンスト・ガーデルマン"と呼ばれる……が、思い切りツッコミを入れる。

 

「そういうこった! 投下!」

 

 ニンマリと笑いながら照準器を覗き込んでいた妖精ルーデルは、一声叫ぶや爆弾投下レバーを引いた。

 機体の下で金属質の作動音がすると同時に、機体に強烈なGがかかり、胃の腑を始めとする内臓が全て下腹に押し付けられたかのような感覚が、二人の妖精を襲う。尻は座席に押し付けられ、根でも生えたかのようだ。

 キャノピー正面に見えていた景色が下方に吹っ飛び、地平線と空が見える。

 「悪魔のサイレン」が聞こえなくなると同時に、地上に閃光が走り、鈍い爆発音が響く。投下した爆弾が、敵の飛行場を直撃したのだ。

 

「よし、命中だ。それじゃ、帰りますかね!」

 

 地上に走る爆炎をちらっとだけ確認し、妖精ルーデルは操縦桿を引いて機体を上昇させる。

 ルーデル隊の攻撃を最後に、航空隊はパールネウス上空を離脱していった。

 

 

 この航空戦において、大連合部隊とパーパルディア皇国皇軍は、共に大きな損害を出した。

 まず大連合部隊のうち、リーム王国軍竜騎士団は、なんと300騎中216騎も喪失し、壊滅状態に陥った。残った84騎も戦意はガタ落ちしており、とてもではないが作戦行動が取れる状態ではない。リーム王国軍竜騎士団は、またもや壊滅状態に追い込まれたのである。

 しかもリーム王国軍は、歩兵部隊にも損害が出ており、作戦行動可能な歩兵の数は僅か4,000名弱(こちらも、作戦行動を取るだけの士気があるかは別問題)という有様である。

 その一方で、危険を察知して素早くロデニウス連合王国軍陣地に逃げ込んだトーパ王国軍には損害は無く、73ヶ国連合軍とロデニウス連合王国軍も、空襲による被害は少なくて済んだ。

 パーパルディア皇国皇軍はと言うと、竜騎士団51騎のうち45騎が撃墜されている。このうち、リーム王国軍竜騎士団に撃墜された者の数は、()()4()()にすぎない。その他2騎がロデニウス連合王国軍の対空弾幕に引っかかって撃墜され、1騎がトーパ王国軍により撃墜。残りは全て、ロデニウス連合王国軍の戦闘機によって撃墜されたものである。

 生存する6騎のワイバーンオーバーロードも、生還こそできたものの滑走路が穴だらけにされており、着陸は何とかできたが発進は不可能となった。その他にも、パールネウス城壁上の魔導砲は、ロデニウス連合王国軍急降下爆撃機による爆撃と、戦闘機による機銃掃射で全滅し、砲兵隊にも多数の死傷者が出ていた。

 

 結果をまとめると、 リーム王国軍はまたしても恥の上塗りを重ねたのである。

 

「くそっ! くそっ! くそぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 航空戦が終了した後、多数の焼け跡が残るリーム王国軍野営陣地にて、カルマは怒鳴った。その両手は、血が滲むほど強く握り締められている。

 ()()()()()上に、またも“美味しいところ”をロデニウス連合王国軍に持っていかれた。彼はそう考えていたのだ。

 

(またこれか……! ちくしょう! もう、ロデニウス連合王国に恩を売るチャンスが無いじゃないか……!)

 

 カルマは、ギリギリと歯軋りするのだった。

 

 

「敵航空機は撤退したものの、我が方の竜騎士団は壊滅し、飛行場も発着不能。状況は依然として予断を許さない、か……」

 

 一方、パールネウス市内・皇宮内に設けられた皇軍司令部にて、パーパルディア皇国皇軍総参謀長ステァリンが苦い顔で呟いた。

 現在のパーパルディア皇国皇軍・パールネウス防衛隊は、完全に()()()の状態である。補給はパールネウス市内の工場での生産によってしか賄えず、食料も武器も供給が心許無い。それに対して、敵は数も多く武装も強力ときている。おまけに、パールネウス上空の制空権は、敵に完全に奪取された。

 状況としては、かなり不味いと言えるだろう。しかも、城壁の上に配備されていた射程2㎞を誇る魔導砲は、先の空襲で全滅してしまっている。

 

「魔導砲を備えた城壁があれば大丈夫だ、と思っていたが、まさか航空攻撃でその魔導砲を破壊していくとはな。くそ、これではジリ貧だ」

 

 呟くと、彼は幹部クラスの部下に指示を飛ばす。

 

「持ち運び可能な野戦用魔導砲を壁の上に揚げて、壁上固定砲の代わりにしろ! 壁上固定砲がある限り、敵がこの街を陥とすことはできん」

「はっ!」

 

 ステァリンの指示に、部下が敬礼で応じる。しかしこの時、室内の片隅をネズミくらいの大きさの小さな生物がチョロチョロと走り抜けたことには、誰も気付かなかった。

 いや、室内を走り抜けた()()は、ネズミのような小動物などではない。油虫(植物につくアブラムシに非ず。Gで始まる名前の、台所なんかによくいる黒い虫のことである)でもない。よく見なくても、それはネズミなどではなく、むしろ“小人”というべき姿形をしている。

 そう、これは、“人間のように見えるが、決して人間などではない生物”なのである。

 

 その小人のようなナニカは耳をそばだてながら、誰にも案内されることなく、慣れた足取りで建物の中をどこかへ走っていく。時折廊下を行き来する足音が聞こえると、慌てずに物陰に身を隠し、相手が通過してしまってから周囲を確認して、またチョロチョロと廊下を走り出す。

 ほどなく、そいつは皇宮内の中庭へとやってきた。中庭は整然と整えられており、戦争などとは無関係に美しい花が咲き、木々は夏に向けて青々と茂り、魔導噴水の水音が涼しげな雰囲気を醸し出している。その中庭の片隅に向けて、そいつは木々の間を走っていった。そして、()()()()中庭の奥まった角のところで立ち止まる。

 と、急に何もない空間から幽霊のような白い手が一本、にょきっと突き出る。事情を知らぬ者が見たら、ぎょっとすること請け合いな光景である。

 人間のようなナニカは、一切躊躇(ためら)うこと無く、その白い手の上にひょいと飛び乗る。その直後、ナニカを乗せた白い手は、虚空にすっと消えた。

 

 

 何かの部屋、もしくは通路と思われる空間。その壁には、一面に何やら訳の分からない機械類がびっしり取り付けられており、様々な色の光を点滅させている。

 その空間に、先ほどの人間のようなナニカ……妖精はいた。「日焼け」という言葉とはおよそ無縁なほど白い肌を持つ女性の掌に乗って、身振り手振りを交えながら何かを話している様子である。

 

「うむ、ご苦労だったであります」

 

 妖精が報告を終えると、その色白の女性……陸軍特殊船丙型の艦娘"あきつ丸"が声をかける。

 

「では休憩であります。場合によっては、今一度出てもらうかもしれませんので、しっかり休んで欲しいであります」

 

 彼女がそう言うと、その妖精はビシッと敬礼(もちろん陸軍式敬礼である)し、彼女の艤装の中に引っ込んだ。

 

「ふー、この"でぃぐろっけ"とやらの中での缶詰めも、楽じゃないでありますな」

 

 妖精が艤装の中に入ったのを確認し、彼女は一つ息を吐いて、ちょうど通りかかったエルフ族の男性……このディグロッケ3号機の機長に話しかけた。

 

「そうでしょう? 私はもう慣れっこになりましたが、新米などは未だにヒイヒイ言っていますよ」

 

 機長は肩を竦める。

 

「作戦のためとはいえ、このような窮屈な真似をさせてしまって、申し訳ないであります」

「いやいや、あきつ丸さんがお気になさることはありませんよ。私共の機体は隠密性が高いですからね。まあ、敵地のど真ん中に着陸するなんて作戦に駆り出されるとは、全く思っても見ませんでしたが」

 

 そう言って、機長は苦笑いをした。

 

 実はパールネウス皇宮の中庭の片隅に、ロデニウス連合王国軍・独立第1飛行隊に所属するナチス製UFO「ディグロッケ」3号機が着陸し、光学・電磁気・魔力の全てを対象にしたステルスを張って身を潜めていたのである。何故このような大胆かつ危険極まりない真似をしているのかというと、それは「ある作戦」のためだった。

 

(提督殿から伝えられた"あの作戦"……確か「とろいあん・ほーす作戦」とか言いましたか、それの発動の時まであと約一日。提督殿のいる部隊は、無事にパールネウスに到着できたでありましょうか……?)

 

 それだけが、"あきつ丸"には気がかりだった。

 

 

 だが、"あきつ丸"の心配は杞憂に終わった。

 6月12日の午後10時、満天の星空が見える時刻になって大分経った頃、エストシラントを発ったロデニウス連合王国軍・南方軍集団、総勢34個師団約40万人が、ついにパールネウスの南に到着したのだ。ちなみにほとんど時を同じくして、パンドーラ大魔法公国とマール王国の連合軍約6万人も到着している。

 ほとんど昼夜兼行の道程であった。その途中で、待ち構えていたパーパルディア皇国皇軍との戦闘が何度かあったことを考えれば、かなりの強行軍だったと言っても過言ではない。よくこんな過酷な道程をこなせたものである。

 

「やっと着いたか、パールネウス……。何とか『トロイアン・ホース作戦』開始前に到着できて良かったぜ……」

 

 血走りながらもギラギラ光る目で、堺はパールネウスの城壁を見詰めながら呟いた。その城壁は、闇の中にその姿をぼんやりと浮かび上がらせており、一枚の板のようにも見える。

 

(「トロイアン・ホース作戦」の発動は、明日の午前9時だ。その15分前までに、兵たちに休息と旨い飯を摂らせて、英気を回復しておかなければ……)

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 さて、他の場所で他の人々がどのような行動を取っていたのか知るために、ここで少し時間を遡ろう。

 中央暦1640年6月12日の夕方、ロデニウス連合王国首都クワ・ロデニウス 連合王国軍総司令部。

 

「そうか、いよいよパールネウス攻略開始か」

 

 軍幹部の一人から報告を受けて、ロデニウス連合王国軍総司令官・ヤヴィン軍務卿は呟いた。

 

「長く続いたこの戦争も、いよいよ最終局面だな。一日も早いパールネウス攻略を望む、とノウ将軍に伝えてくれ」

「はっ。では、失礼しました」

 

 幹部は退室していった。

 一人執務室に残されたヤヴィンは、壁にかかったフィルアデス大陸の地図を見ながら考える。

 

(長かった。本当に長かった。

1月にフェン王国でパーパルディア軍と戦って以来、(れん)綿(めん)と続いてきたこの戦争が、とうとう終わろうとしているのだな……)

 

 フィルアデス大陸の地図は、大きく書き換えられていた。具体的には、「パーパルディア皇国」と書かれた領域の大半が赤い斜線で塗り潰されている。塗り潰された領域には、「デュロ」「レノダ」「エストシラント」等の地名が含まれていた。

 そう、この“赤く塗られた領域”は、ロデニウス連合王国軍だけでなくパーパルディア皇国に宣戦布告した各国の軍によって占領された地域である。その赤い領域の中に少しだけ、陸の孤島のように塗られていない地域がある。その中心には「パールネウス」という名前が付けられていた。

 

「何とか、補給が途絶する前に決着が着きそうだな……」

 

 彼は呟く。

 実はロデニウス連合王国軍には、ある深刻な問題が起きていた。補給物資が足りなくなり始めており、特に銃弾や砲弾が底を尽きつつあったのである。クワ・タウイや再建したビーズルの工場で生産を行い、生産したそばからクワ・タウイやピカイアの港に待機している輸送船に物資を積み込んでアルタラス島へ輸送、そこから各前線へ物資を送る手筈であった。だが、消費が思った以上に多く、生産が追い付かなくなりつつあったのだ。

 これは、ロデニウス連合王国軍が「総力戦」という、“近現代戦争の何たるか”を十分知らなかったことにも原因がある。「総力戦」の概念を知らぬがために、工業生産能力をどの分野にどれだけ振り分けるべきか、戦費をどの分野にどれだけ割り振るべきか、というようなことを手探りで探るしかなかったのである。

 これ以外にも、兵士の倫理観やら戦術やら、ロデニウス連合王国軍は多数の問題を抱える軍隊であった。

 

(まさか、補給でここまで苦しむことになるとは思わなかったな……。これが堺殿のいう「近代の戦争」という奴か、勉強になったわ。

人的資源が多いからといって、無闇に軍隊を拡張するのも考え物だな。国力に見合うだけの規模の軍隊を持て、欲張るな、ということなのだろうな)

 

 ヤヴィンはそのように考えていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 同じ6月12日の夜、第二文明圏外ムー大陸西方 グラ・バルカス帝国本土 帝国軍情報局。

 この日の仕事を終え、帰宅しようとしていたバミダルの元に、ナグアノが報告書を持ってきた。

 

「由々しき事態です。第三文明圏のパーパルディア皇国に行っている、諜報員エンリケスからの定期通信が途絶えました。

状況から考えるに、おそらくパーパルディア皇国とロデニウス連合王国との戦争に巻き込まれ、死亡したものと思われます」

「何?」

 

 報告書を受け取り素早く目を通しながら、バミダルは溜め息を吐いた。

 

「この世界のニュースは耳にしていたから、ある程度予想はしていたが、やはりか……。これで、我々がロデニウス連合王国の情報を手に入れる手段は、今のところゼロになった訳だ。早急に別の手立てを考えなければ。

ところで、“ロデニウス連合王国の技術レベル”については推定できたか?」

「は、航空機の目撃情報から考えるに、ロデニウス連合王国の軍事技術は“最高で我々と同程度”ではないかと推測されます。誠に驚くべき結果ではありますが、分析結果はそのようになりました。

また、エストシラントを攻撃した機体の中に、我が国のアンタレス型艦上戦闘機に似た形状の機体が多数あったことから、ロデニウス連合王国は空母を保有している可能性があります。エストシラントを攻撃した単発機は、600機程いたとのことですから、これが全て空母から発進したものとしますと、数にして10隻以上の空母がいるかと思われます」

 

 ナグアノのこの報告を受けて、バミダルの眉間にシワが寄った。

 

「アンタレスに似た機体に、多数の空母の保有が疑われる、か……。もしかすると、ロデニウス連合王国の技術は我が国に匹敵するかもしれん。

引き続き情報収集に当たれ。抜かるなよ」

「はっ!」

 

 ナグアノは、ビシッと敬礼した。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 その頃、タウイタウイ泊地では、

 

「ふぅ……」

 

 数日ぶりに秘書艦私室に戻ってくることのできた"大和(やまと)"が、寝間着に着替えながら溜め息を一つ吐いていた。

 彼女は、3日前にはタウイタウイ泊地に戻ってきていたのであるが、「大東洋海戦(暫定呼称)」や「カタストロフ作戦」の報告書を書いたりしなければならなかったため、まともにゆっくりしている時間がなかったのである。

 

「それにしても、あの“戦争犯罪人の護送”は疲れました……。"霧島"や提督の報告書は見ていましたが、まさかあんなに()()()()()()だったとは。不覚でした……」

 

 呟き、彼女はもう一つ溜め息を吐いた。

 

 言うまでもないが、"大和"のいう「戦争犯罪人」「身勝手な御仁」とは、レミールのことである。"大和"が今まで見てきた人々の中でも、彼女の態度は最悪であった。

 “第三文明圏に冠たる列強パーパルディア皇国の皇族”だという自身の身分を傘に着て、待遇の改善は要求する。聞いてもいないのにパーパルディア皇国のことを自慢気にぺらぺらと喋り、文明圏外国の分際で列強国の皇族を捕らえるなど言語道断、さっさとここ(営倉)から出せと言い張る。果ては食事の配給の隙を見計らって、とうとう営倉から脱走する(ただし、乗組員にとっても大迷宮と言えるほど複雑な「大和」艦内ではどうにもならず、即座に御用となったのであるが)。まさに傍迷惑な人間であった。

 しかも彼女は、乗組員の妖精たちの態度を見て"大和"がこの艦の長であると知るや、ピンポイントで暴言を浴びせてきた。そのため、"大和"は「見ざる、聞かざる」を徹底し、聞き流していたものであるが……それでも、心労は溜まる。

 タウイタウイに到着し、地下の営倉にレミールを放り込んで、彼女はようやくこの()()から解放されたのだった。

 

「はぁ……」

 

 また溜め息を吐きながらも、彼女は寝る準備を整えていく。電探を兼ねた(かんざし)を外し、ついでに桜の花をあしらった髪飾りも外してしまうと、いつもはポニーテールにまとめている長い焦げ茶色の髪が解けて、彼女の肩や背にかかった。

 ちなみに、寝る時にまで付けていると流石にきついので、九一式徹甲弾の弾帽を模したパッドは外してある。これを聞いて良からぬことを考えた紳士諸君には、本日から第三艦橋勤務を命ずる。異論反論口答えの類は、これを一切認めない。

 

 部屋の明かりを落とし、"大和"はベッドに入る。その枕元にはどこから持ってきたのか、堺が職務の際に用いる制帽である白い提督帽が置いてあった。

 横になると、途端に疲れがどっと襲ってくる。このところの疲れが一気に噴き出てきたのだ。しかも、訓練の後に感じるような“身体的な疲れ”ではない。どちらかというと、“精神的な疲れ”である。

 

 それも、無理からぬ話であった。

 彼女は、タウイタウイ泊地に集う艦娘たちの中でも一・二を争う総合性能を持ち、またその練度は他の艦娘たちを差し置いて最も高い。だが、その優秀さ故に、彼女はとんでもない作戦に駆り出されたのだった。「カタストロフ作戦」という、パーパルディア皇国軍とは直接関係のない、パーパルディア皇国の一般市民多数を戦火に巻き込み、そして多くの銃後の人々の命を断ち切り、血を流す作戦に。

 提督から、引いては軍上層部からの命令だったとはいえ、「エストシラントに対する艦砲射撃」という彼女の行動は、結果的に何の罪も無い人々の命を多数奪うことになったのだ。「自分自身の取った行動が、果たして正しかったのか?」という“疑問”が、そして多くの罪無き人々の命を奪ったという“罪の意識”が、彼女の心に見えざる棘となって突き刺さっていた。その棘が抜けることは決してなく、彼女の心を蝕み続けているのだ。レミールの件も、それに追い討ちをかけていると言える。

 

 半ば夢うつつの無意識で、彼女は提督帽を胸元に抱き締めた。そして意識を手放しながら、寝言のように呟く。

 

「提督……早く、無事に帰ってきてくださいね……。大和は……ここで、待っていますから……。

……早く、会いたい……」

 

 その言葉を最後に、"大和"の意識は暗転し、夢の世界へと落ちていった。

 

 

 そして"大和"とは対照的に、深夜遅くまで起きていたのが、ムー国の技術士官・マイラスである。

 観戦武官としてロデニウス連合王国に派遣されている彼は、「タウイ図書館」から掻き集めたデータを、ムー語の辞書と首っ引きで自身のノートにまとめ直し、場合によっては再計算を行っているのだ。そしてムーの技術を上げ、九六式艦上戦闘機や金剛型戦艦の国産化に寄与しなければならないのだ。

 ちなみにこのところのマイラスは、連日“白熱電球を発明しようとしている時のエジソン並み”にしか睡眠時間を取っていない。つまり、2、3時間しか寝ない日々が続いているのだ。

 

「えーと……あれ? この数値、どうしても合わないなぁ……? くそぅ、どこかで計算を間違えたか……」

 

 ホテル「ラ・ロデニウス」の一室にて、魔導ランプの明かりの下、鉛筆を走らせていた手を止めて、血走った目でノートを…隅から隅までびっしりと計算した数字が書き込まれたページが延々と続くノートを見詰め、彼は呟く。その直後、彼は1つ大きな欠伸(あくび)をした。

 そして彼はやおら立ち上がり、氷魔法を封じ込めた魔石を利用した冷蔵庫を開けて、1本の瓶を取り出す。それには「コーヒー」と書かれたラベルが貼られ、夜の闇を反映したかのような黒い液体が入っていた。

 瓶の蓋を開けたマイラスは、コーヒーをブラックのままラッパ飲みした。彼の喉仏が5回ほど上下に動き、口内をコーヒーの渋みと独特の芳香が満たしていく。

 よく冷えたコーヒーで無理やり脳に刺激を与えた彼は、「ふう……」と大きく息を吐いた。そして机に戻り、ノートとにらめっこして再計算にかかる。

 

「まだ寝る訳にはいかない……。理論上、ここの計算結果はもっと大きな数字になるはずだ……。

こいつの間違いを見つけるまでは、今夜は寝られんぞ……! この計算結果に、ムーの航空機開発が懸かっているんだからな……!」

 

 誰が見ても“無茶をやりすぎている”としか思えない疲れ切った声で、マイラスはそう呟いた。




まさか、パールネウス攻略に決着がつかなかったとは…次回、必ず決着します!
マイラス…もういい、もう、休めっ…!


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次回予告。

風前の灯となった、パーパルディア皇国の命運。そして、ロデニウス連合王国軍の補給が続かなくなってきていることは、堺も把握していた。補給が途絶する前に決着をつけるべく、ロデニウス連合王国軍は「トロイアン・ホース作戦」を発動する…
次回「アサマ作戦6合目 パールネウス攻略(3)」

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