鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。 作:Red October
試験期間はまだ少し続きますので、まだ更新遅い時期が続くかもです…
中央暦1640年6月20日 午前9時、パーパルディア皇国「聖都」パールネウス。
ステァリン率いる皇軍司令部がロデニウス連合王国軍に降伏し、組織的な戦闘は終了したのであるが、では
戦火の遠ざかったパールネウスでは、ロデニウス連合王国軍が厳重な警戒態勢を敷く中で、講和会議が始まろうとしていた。
参加国は、まず戦勝国たるロデニウス連合王国と、敗戦国であるパーパルディア皇国。それから、実際に軍を派遣してパーパルディア皇国と戦った元属領73ヶ国連合(アルタラス王国はこちらに含まれる)、リーム王国、パンドーラ大魔法公国、マール王国、トーパ王国。そして、宣戦布告こそしたものの軍を派遣していない国家として、フェン王国、シオス王国、アワン王国、ネーツ公国、ガハラ神国、マオ王国その他の国家。
これらの国家の外務大臣クラス、あるいは全権大使などといった錚々たる面子が、パールネウス皇宮の大会議室に顔を揃えていた。それ以外にも、会議室には各国の報道陣も詰めている。その中に「ロデニウス連合王国の新聞・
この大会議を仕切る司会進行役は、ロデニウス連合王国外務部トップ・リンスイ卿。それと、「司会進行補佐」として、堺が参加し……いや参加
ロデニウス連合王国の全権大使は、元クイラ王国で外交に当たっていた貴族のメツサル、そして元クワ・トイネ公国外交部員の1人ヤゴウである。
パーパルディア皇国からは、全権大使として皇族の中でも最年長の男性、グリーゼ・フォン・エストシラントと、皇軍総参謀長ステァリンが出席していた。
そして始まったパールネウス講和会議であるが…堺は後に日記の中で、この会議の様子について次のように記している。
『会議は怒鳴り合う、されど進む』と。
何でこんな表現になったかは言うまでもない。“戦勝国の権利”を得た各国が、自国の国益を激しく主張し合ったからだ。
まあ、地球よりも外交関係が未発達なこの世界のことであるし、やむを得ないところもある程度あるのだが。
「それではこれより、パールネウス講和会議を始めます。お集まりの皆様には、遠路遥々お越しくださいまして、有り難く存じます」
リンスイ卿のこの丁寧な一言と共に、会議は開始された。
まず手を挙げ、発言権を得て起立したのは、73ヶ国連合の代表の1人として出席していた、元属領カース出身の将軍ミーゴである。
「我々は、いずれもかつてパーパルディア皇国によって独立を奪われた国ばかりです。従いまして、まずはパーパルディア皇国に対し、我々73ヶ国全ての完全な独立を承認することを要求します。またその際、我々の旧領の完全回復を求めます」
やはりというべきか、属領としては
「それと、パーパルディア皇国は我が国カースも含め、属領とした国々から多数の人々を“奴隷”として連行しております。私としては、こうした人々を祖国に帰すことを、パーパルディア皇国に対して要求するものであります」
ミーゴのこの話を聞いて、堺は密かに感心していた。
(なるほど……事情はどうあれ、この世界にも“奴隷解放”に当たる考え方があるのだな)
この世界……少なくとも、堺の知っている範囲である第三文明圏には、奴隷制度が未だ根強く残っている。そこから見ても、第三文明圏は地球よりも物の考え方が酷く遅れていることがよく分かる。特に人道面や倫理観なんかは、目も当てられないレベルだ。
ミーゴはおそらく、「自国の発展に必要な人材を得るため」という名目で、パーパルディア皇国に対して奴隷解放を要求したのだろう。「人道的見地及び道徳的な面から考えて、双方に
だが何にしても、「奴隷が良くない」という考え方があるのは、喜ばしいことである。
堺は挙手し、発言権を得て起立する。
「私としましても、“奴隷を解放する”というお考えには賛成です。
パーパルディア皇国は、これまで自国の発展のみを考え、各国から
私としては、パーパルディア皇国はこれまでの自身の行いを反省し、奴隷売買・奴隷所有その他“奴隷に関する一切の事項を禁止する”と共に、奴隷若しくはそれに準ずる立場の者として連行された各国の人々に対し、“謝罪と賠償を行った上で祖国に帰すべき”と考えます」
「人道的立場から~」等と言ったとしても、伝わるかどうか分からなかったため、堺はこのように発言した。
「ふむ。ではパーパルディア皇国に対し、元属領を始め第三文明圏内外から連行した人々を祖国に返すこと、及び公的な謝罪と賠償を求める、ということですな?」
司会進行役を務めるリンスイが、要求事項を紙に書き留める。
「それでは、次に領土のことですが……」
リンスイがそう切り出した途端、各国の代表たちの目がギラリ! と光った。
この世界では、大体どの国も自国の領土とその拡大には熱心なのである。
「パーパルディア皇国によって属領にされていた73ヶ国の方につきましては、基本的には“旧領の回復”でよろしいでしょうか?」
リンスイがそう尋ねると、73ヶ国の代表たちは一斉に口を開いた。
「旧領回復は
「それに加えて、
「我々だって出兵したんだぞ! 領土の見返りくらいはあるはずだ!」
まあ……出兵したのだから至極当然の要求のように思えるが、何とも身勝手な面が見える。
「なるほど……では、73ヶ国連合の皆様の意見を受け入れ、パーパルディア皇国に出兵を行った国については、領土の見返りあり、ということでよろしいでしょうか?」
リンスイがそう言ったその時、シオス王国の代表が手を挙げた。
「ちょっと待ってくれ。ここには、我が国の他フェン王国やアワン王国等、実際の軍の派遣こそ行っていないものの、パーパルディア皇国に対して宣戦を布告した国々の代表の方々もいる。
特に一部の国家は、貴国ロデニウス連合王国からの要請を受けて、パーパルディア皇国に宣戦布告している。そうした国家に対する見返りはあるのか?」
この問いに対し、リンスイは“予め用意していた答え”を返した。
「それにつきましては、大東洋共栄圏利用における“各種サービスの優遇”をさせていただきたいと思います。例えば食料支援・技術供与・武器の取引時における割引額を引き上げ、“より安い値段でのサービス”をさせていただきたいと思います。もちろん、サービスの質を落とす、なんてことはしませんよ」
実際、大東洋共栄圏における武器の提供等の取引は、加盟特典の割引サービスをフル活用したとしてもお値段が高い。文明圏外国にとっては、そう簡単に手が出せるものではないのである。
そこでリンスイは堺の助言を得て、ロデニウス連合王国が取引で得られる利益をなるべく少なくして、文明圏外国にも飛び付きやすくするプランを立てた。一国相手に多数の利益を得るより、多数の国から少しずつ利益を得る方を選んだのだ。
ちょうど香港の宝石商が、5割の儲けで2個売るより2割の儲けで5個売ろうとするのと同じ、“薄利多売”の考え方である。
「また、貴国シオス王国やアルタラス王国、フェン王国等の、“我が軍が利用する飛行場がある国家”に対しては、将来的に“民間航空路線を含む
例えばシオス王国の場合ですと、貴国にあるムー国の飛行場を“我が国が利用する”形となりますから、ムー国、シオス王国、そして我が国でシオス王国の飛行場を利用します。但し、あの飛行場は元々民間のものですので、ムー側からは『軍用だけでなく、民間の空港として利用できる状態にすること』という条件が付いております。なので、軍専用の利用はできませんが、シオス王国空軍を設立する場合、シオス王国の飛行場を利用することができます」
「なるほど。では、我がシオス王国が貴国の航空機を購入して空軍を設立するとなると……」
「はい。あの飛行場に、貴国の空軍の機体を展開して利用する形になります」
「なるほど、ありがとうございます」
シオス王国の代表が着席すると、今度はフェン王国の代表が挙手した。
「では、我が国の飛行場の場合はどうなりますか?」
「はい、貴国の飛行場は我が国が建設したものですから、我が国と貴国での共同利用となる予定です。民間機も利用できるようにすること、という条件付きで、貴国の空軍も利用することができます。もちろん、航空機の販売等については、割引サービスさせていただきますよ」
「了解しました、ありがとうございます」
恭しく頭を下げ、フェン王国の代表は着席した。
「話が大分ずれてしまいましたので、一旦話題を戻しますね。実際に軍を派遣して、我々と共にパーパルディア皇国と戦っていただいた国家の方には、領土による見返りを考えている、ということです。また、宣戦布告こそしたものの、実際に軍を派遣していない国家に対しては、大東洋共栄圏への参加権を緩和し、参加しやすくすると共に、共栄圏への参加特典となる“各種サービスにおける大幅割引”を以て報酬とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?」
リンスイからのこの意見に、反対を唱える者は誰もいなかった。パーパルディア皇国の代表2人ですら沈黙している。尤も、この2人は真っ青になっていたが。
「反対意見はないようですので、この方針としたいと思います。
この話題を進めるに当たり、まず決定すべきは、我々がパーパルディア皇国からどれだけの領土を得るか、ということです。言い換えると、パーパルディア皇国に
そこで一つの案なのですが……パーパルディア皇国の領土を、パールネウスから半径100㎞圏内に縮小する、という案を提唱します。敗戦国とはいえ、パーパルディア皇国は多数の国民を抱えております。いくら何でも、領土全部を要求する、というのは酷な話です。ですので、最低限必要な領土を計算した上で、この案としました」
リーム王国など領土拡張に熱心な国家は、パーパルディア皇国の領土全てを要求し、それを戦勝国間で山分けする案を持っていたようであるが、彼らは苦い顔をするだけで、それを口に出すことはなかった。彼らにも、憐れみの心くらいはあったからである。
「この方向性でよろしいでしょうか?」
リンスイのこの問いに、パーパルディア側からの反論はない。まあ、“反論しようがない”というのもあるのだろう。
「反対意見がないようですので、これは決定事項とさせていただきます。
さて、次の問題ですが……まず、どれだけの土地がパーパルディア皇国の支配下から離れることになるか、ということです」
この時点で、パーパルディア皇国に出兵した国家、特にリーム王国の代表の目がギラギラと輝いていたのは言うまでもない。
「元々のパーパルディア皇国の面積は、およそ7,700,000㎢。それに対し、パールネウスを中心にして半径100㎞圏内の面積は、およそ31,400㎢ですから、大体パーパルディア皇国領の0.4%がパーパルディア皇国に残される計算になります」
パーパルディア皇国がどれほど矮小な存在になってしまうか、お分かりいただけるだろう。“第三文明圏の覇者”だった頃の往時の姿は、もはや見る影もない。
ちなみに、では旧パールネウス共和国領のうちでどれだけの面積の土地が失われるか、というと、ざっとこんな計算になる。
旧パールネウス共和国の面積は、アルタラス王国とほぼ同程度だった、とされている。アルタラス王国の国土面積は、日本の本州の約1.5倍、つまり約342,000㎢であるから、
31,400÷342,000×100=9.18……
つまり、約9.2%となる。
要するに、パーパルディア皇国に対して所有が認められた土地は、旧パールネウス共和国領の10%にも満たなくなってしまったのである。
「ただし、先ほどの7,700,000㎢という数字は、属領も含めた面積です。これだけの面積を、属領とパーパルディア皇国に出兵した国家で分け合う、という形になります。
これに関してですが、パーパルディア皇国に出兵した国家の代表者の皆様からは、何か意見はございますか?」
リンスイがそう尋ねると、トーパ王国の代表が挙手した。
「我がトーパ王国は、この領土獲得を辞退したいと思います。
理由としては、“本国からこの地までの距離の遠さ”が上げられます。これだけの距離を隔てた地を支配する、というのは不可能です。従いまして、トーパ王国は今回の領土獲得を辞退させていただきます」
ちなみにこれは、トーパ王国現国王ラドス16世からの勅命があったものである。
「その代わりとして、我がトーパ王国はロデニウス連合王国に対し、大東洋共栄圏における交易での大幅割引や、合同軍事訓練の優先的な開催を要請致します。我々は、いわば“フィルアデス大陸に住まう人々をグラメウス大陸の魔物から守る守護者”です。強くなければ、守護者を務められないでしょう」
「ふむ……なるほど、承知しました。では、トーパ王国はパーパルディア皇国に対し領土割譲は求めない、ということでよろしいでしょうか?」
「左様です」
トーパ王国の代表から確認を取ったリンスイは、各国代表の方に向き直った。
「という訳で、パーパルディア皇国から切り取った領土は、リーム王国、マール王国、パンドーラ大魔法公国、そして元属領73ヶ国で山分けする、という形となります」
ここで、パンドーラ大魔法公国の代表が挙手し、発言権を得て起立した。
「少しお待ちください。先ほどの発言……パーパルディア皇国から切り取った領土を山分けする国家の中に、貴国の名がなかったと思うのですが、聞き間違いでしょうか?」
「いいえ、聞き間違いではありません。我々ロデニウス連合王国は、パーパルディア皇国に対して領土割譲は求めませんので」
このリンスイの爆弾発言に、各国の代表たちがざわつく。パンドーラ大魔法公国の代表は、非常に驚いた様子で聞き返した。
「なっ!? 戦勝国の中心である貴国が、パーパルディアに領土を求めないですと?」
「左様でございます。我々はパーパルディア皇国に対して、領土の割譲は求めません」
「それはそれは……お差し支えなければ、理由をお伺いしても?」
パンドーラの代表にそう聞かれて、リンスイはちらと堺の方を見た。「貴殿が説明してくれ」という合図だ。
意図を察し、堺は起立すると口を開く。
「本件は私からご説明致します。理由としましては、『我が国はロデニウス大陸の支配のみで十分であり、これ以上の領土を必要としないため』であります。
我が国は確かに、人口4千万人を抱えてはおりますが、これまでロデニウス大陸のみでその4千万人を養うことができております。なので、これ以上の領土は必要ありません。従って、我々もトーパ王国と同様に、パーパルディア皇国に対して領土割譲を求めません。
それに、ロデニウス大陸とフィルアデス大陸は遠く離れております。もし仮に領土を得て支配するとしても、その維持にかかるコストと、領土を得たことによるメリットが釣り合わない、と判断しました。
以上2点の理由から、我々はパーパルディア皇国に対して領土割譲を求めないこととします」
既に堺は、パーパルディア皇国に対して領土を求めるのはデメリットが多すぎる、と判断していたのだ。
確かに領土が増えるというのは、一見良いことのように見えるが、実際は必ずしもそうではない。デメリットも存在している。
まず、領土が拡大するということは、その分“統治する土地が増える”ということであるから、土地が拡大しすぎると統治が大変になる、という点が挙げられる。すると、統治のために役所を置いたりすることになるが、この役所が
この他にも、領土管理や防衛のために多数の軍隊が必要になり、その分“軍事費が膨れ上がって財政を圧迫する”という欠点もある。そして何より、「植民地支配は
そう言った点を考慮し、堺は「パーパルディア皇国から領土を得る、ということは避けるべきです」とリンスイに意見具申したのだ。そしてリンスイは、その具申をすんなり受け入れたのである。
「な、なるほど……」
パンドーラの代表が着席したのを確認し、再びリンスイが口を開く。
「では、トーパ王国の戦勝国の権利につきましては、細かいところは別途定める、という形にさせていただきます。領土については、我々は一切求めませんから、皆様の分配を監視するだけになりますが、如何なさいますか?」
と、リーム王国の代表が手を挙げる。
「では、リーム王国から意見具申です。我々はパーパルディア皇国の南の沿岸部に、飛び地を確保しております。それを中心に領土を得る形にさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ふむ……ご意見は承知しましたが、貴国はパーパルディア皇国のどこに飛び地をお持ちですか?」
リンスイが質問するのを聞きながら、堺は腹の底で毒
(飛び地、ねぇ……。どーせどさくさに紛れて掠め取っただけだろうが。火事場泥棒め)
「我が国の飛び地は、セニアの地になります。地図で言いますと、ここになります」
リーム王国の代表は、パーパルディア皇国南南東の沿岸の一点を指した。
実は、領土拡張に熱心なリーム王国は、アルーニ方面に兵を派遣したのみならず、パーパルディア皇国海軍が壊滅状態に陥っているのをいいことに、海上から別動隊を回してセニアに上陸させ、海岸沿いに長さ20㎞、幅10㎞の土地を占領していたのだ。セニアはパーパルディア皇国においては「荒れ地」とされており、人もあまり住み着いていない。そのため、ロデニウス連合王国軍主力の大攻勢もあって、パーパルディア皇国はセニアの地に軍隊を送ることができなかったのである。
しかも、ロデニウス連合王国海軍の艦隊は、「パーパルディア海軍は壊滅した」と判断して、その任務を「パーパルディア皇国に物資を運ぼうとする各種輸送船の拿捕」に切り換えていた。逆に言うと、パーパルディア皇国の沿岸部の方には、あまり注意を向けていなかったのだ。そのためリーム王国は、結果的にロデニウス連合王国海軍の不意を衝く形で、領土を獲得したのだった。
見事な
「承知しました。では、リーム王国はパーパルディア皇国の東部を中心に領土を得る、ということでよろしいですか?」
「異存はありません」
リーム王国の代表が着席すると、続いてマール王国とパンドーラ大魔法公国の代表が同時に立った。
「それでは我々パンドーラは、パーパルディア皇国の北西部一帯を得る、ということで」
「ではマール王国は、パーパルディア皇国の南西部を得ることに致します」
「承知しました。それでは、残りは元属領73ヶ国で山分けにすることにしたいと思いますが、異存はございますか?」
リンスイのこの提案に、反対意見はなかった。
「では、この案で行くことにします。国境線については如何しますか?」
リンスイがそう言った途端、マール王国とリーム王国の代表同士が睨み合いを始めた。そのテーマは、「どっちがエストシラントを得るか」ということだ。
エストシラントは言わずもがな、フィルアデス大陸最大の都市。そこを手にすれば、経済的な影響は計り知れない。
ところが、両者が睨み合っているところへ、堺が口を開く。
「あー……エストシラントについてですが、かの街は今、壊滅状態に陥っていますよ。
エストシラントはパーパルディア皇国の
今のエストシラントは、市街地の少なくとも5分の4は焦土と化していますよ。あの街が再建されるには、5年か10年は見込む必要があるかと思います」
堺がそう言った途端、
「「何……だと……」」
双方の代表が肩を落とした。
まあ、そんな状態になっているとは想像もしていなかったのだし、仕方ないだろう。
「そこで提案ですが、エストシラントを敢えて“どの国にも属さない中立地帯”としては如何でしょう? 何も、わざわざ壊滅した街に拘る必要性はないと思いますが?」
この堺の提案に、
「ま、まあ……そういうことならば……」
「壊滅状態なら、止むを得ませんな」
双方が納得して、矛を納めた。
(やれやれ……これ以上の武力衝突はゴメンだからな)
堺はそっと、胸を撫で下ろすのだった。
その後、話し合いによって国境が定められた。
リーム王国は、パーパルディア皇国(旧パールネウス共和国領)の南東部4分の1を領土とし、マール王国は南西部の4分の1を、パンドーラ大魔法公国は北西部の4分の1を、それぞれ獲得する。また、エストシラントはマール王国、リーム王国どちらにも属さない中立地帯とする。
そして、残った旧パールネウス共和国領の北東部4分の1は、属領になっていた国家が山分けすることになったのである。
また同時に、属領同士で連携して、共同体を結成することが承認された。属領はパーパルディア皇国に全てを取り上げられた状態だったため、一国のみで立ち直るのは難しいものがあったのである。そこで、「困った時はお互い様」の考え方で、属領同士で助け合って国家となる、ということにしたのだった。これにより、73個の属領のうちフィルアデス大陸に国土を持つ国家は連携し合って、ドーリア共同体を始めとする6つの共同体に分かれることとなった。
なお、こうした共同体に対しても、リンスイは大東洋共栄圏への参加を呼び掛けており、各共同体で検討が行われることになった。
「では、会議を再開致します。
次の議題ですが……」
領土関連の話が決着したところで昼休憩に入り、各国の代表たちが昼食を摂って戻ってきたところで、不意にリンスイが厳かな口調で話し始める。会議の場は、水を打ったように静かになった。
その瞬間、堺は(来たな)と直感した。
「ここで、我がロデニウス連合王国は、戦勝国の権利を発動します。
先ほども申し上げましたが、我が国はパーパルディア皇国に対して、領土の割譲
そこで今から、パーパルディア皇国に対する我が国からの要求を読み上げます」
(やっぱりな)
堺の直感は当たっていた。いよいよロデニウス連合王国からの要求が、パーパルディア皇国に突き付けられる時が来たのだ。
リンスイが堺の方を振り向き、手招きして合図する。堺は、要求文書を手にして立ち上がった。
要求文書に書かれた、複数の条項。それは、国王カナタ1世を始め、軍務卿、各軍大臣、外務部、各州の州知事クラス、そして堺と、大勢のロデニウス連合王国上層部メンバーが、寄って
条項の中には、パーパルディア皇国にとって歓迎できる項目も入っている。しかし幾つかの条項は、パーパルディア皇国にとっては“屈辱極まりないもの”だろう。
だがそれでも、戦勝国の権利はしっかり主張しておかなければならない。
堺は、居並ぶ各国代表の面々と、向かいの席で青い顔をしているパーパルディア皇国の代表2名を一通り見渡した後、ゆっくりと口を開いた。
「それではこれより、要求文書を読み上げます。
本件文書に記す通り、ロデニウス連合王国はパーパルディア皇国に対し、以下のことを要求する……」
ロデニウス連合王国の要求については、次回をお待ちくださいませ!
ゆ、UA23万突破に加えて、総合評価5,200ポイント突破だと!? 本当にありがとうございますっ!!!
評価3をくださいました怠惰の遣い様
評価4をくださいました緑のくじら様
評価5をくださいましたぽけっとぽけっと様
評価7をくださいました有澤重工様、47式小銃様
評価8をくださいましたヴァル樽様、必殺雷撃人様
評価9をくださいましたkasaphkkk様、再buster様、hal2114様
評価10をくださいました銀翼様、エトトリ様、ニアデス トーテム様、夢若様
ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!
次回予告。
昼休憩を挟んで再開された、パールネウス講和会議。再開と同時に、ロデニウス連合王国は「戦勝国の権利」として、パーパルディア皇国に対し要求を突き付ける。その内容とは…
次回「パールネウス講和会議(3)」
p.s. アンケートで「拒否権は無い。描け。」の投票率が高くて草でした。
まあ…そのうちひっそりと描かせていただきます。