天候というものはなんとも気分屋である。先程までバケツをひっくり返したように雨が降っていたと思えば次の瞬間には太陽が元気に顔を覗かせる。その逆もまた然り。
雨音が響く喫茶店のカウンター席でこの店オリジナルのブレンドコーヒーを啜る常連客が一人。
「タクトってば、そんなところで黄昏てないでこっちに来て一緒に遊ぼうよ!」
そんな彼の腕をノリノリな様子で引っ張っているのは他称お嬢様の金髪の少女だ。
顔を見ればほんのりと赤く、言動も普段と打って変わって非常にフレンドリーである。
あたかも酒に酔っているかのような見栄えだが鼻を動かしたところでアルコール類の匂いは無く、コーヒー豆のいい香りが鼻をくすぐるだけだ。
「コーヒー一杯でここまで酔えるのはいいな。将来的に酒税を納めなくても済むじゃないか」
「お前は呑兵衛か」
大層羨ましそうにするタクトに、リゼは相変わらずキレのあるツッコミを入れる。
なんと息の合った漫才だろうか。
「しかしカフェインで酔うとは聞いていたがここまでしっかりべろべろになるとはな」
「ふふ、甘えん坊なシャロちゃんも可愛いでしょう?」
タクトの腕に抱き着いて離れようとしないシャロを眺めながら千夜は微笑む。
「否定はしないがこれは甘えてると言うよりは酔っ払いがシラフに絡んでいる様にしか見えないが……」
「そうかしら? シャロちゃんは結構タクト君に懐いてると思うのだけど」
気づくとシャロはタクトの腕にしがみついたまま寝息をたてていた。
どうやら騒ぎ疲れたようだ。
「ウサギは安心する時にしか眠らないらしいわよ?」
それはウサギが苦手なシャロに対する皮肉だろうか。
「別に俺が彼女に対して何をした訳でも無いと思うがな」
タクトはシャロを起こさないようにゆっくりと席を立つと、彼女を抱き抱えて自分の座っていた場所に座らせた。
「チノちゃん……無自覚って罪だよね……」
「そうですね……」
なにやら女性陣が顔を赤くしていたが、タクトにはその理由を知る由もなかった。
そんな彼にツッコミを入れるかのように雨と風がラビットハウスの窓ガラスを強く叩いた。
「それにしても凄い雨だな」
「私達が来た時はそうでもなかったのに……」
千夜の言う通り、シャロと彼女がラビットハウスに来た時にはまだ太陽が燦々と輝いていた。
しかし丁度彼女達が席に座った瞬間に天候がガラリと変わったのだ。
そのせいか、それとも平常運転なのかこの日はまだ彼女達以外に客は来ていない。
「迎えを呼ぶからよかったら家まで送ってくよ」
リゼが携帯電話を取り出しながら言うが、千夜はハッとした表情でそれを断る。
「い、いえ! 私がシャロちゃんも連れて帰るわ!」
千夜はシャロを背負うとそのまま店を飛び出した。
なんと美しい友情だろうか。タクトは若干の感動を覚えつつ二人を見送った。
千夜とシャロが店を出ていって数十秒後、彼女達は戻ってきた。
どうやら数メートル歩いたところで千夜の体力の限界が来たらしい。
道端に倒れた彼女達はタクト達によって救い出されたものの、すっかりびしょ濡れになってしまった。
そのままでは風邪をひくと言うことで千夜とシャロはチノ達に連れられて風呂に向かった。
タクトは流石についていく訳にはいかなかったので、カウンター席でティッピーをモフりながら飲みかけのコーヒーを啜っていた。
「タクト君、こんにちは」
「こんにちは、タカヒロさん」
店の奥から現れたのはバーテンダーの制服を身にまとったタカヒロだった。どうやらバータイムの準備をしにきたらしい。
「いつもうちに来てくれてありがとう。チノも喜んでたよ」
「いえ、俺はこの店のコーヒーを目当てに来ているだけで何もしていませんよ」
「はは、白波家は親子揃って謙虚だな」
笑いながらグラスを布巾で拭く彼の姿はとても画になる。ダンディという言葉は彼のためにあるようなものだろう。
「それにしてもタクト君のバイト先が力武さんのところだったとは驚いたよ。あの人もうちのバータイムの常連さんだからね」
バータイムという言葉を強調したタカヒロにティッピーは顔をしかめた。
自分の喫茶店ではなく息子の営業の方が繁盛しているのが気に食わないのだろう。
「力武さんから聞いてます。昔は親父とよく飲んでいたとか」
「そうだね。前はよくアキヒロと力武さん、時々もう一人の友人がここで騒ぎ合っていたよ」
彼はしみじみという様子で頬を緩める。
タカヒロはワイングラスに紫色の液体を注いで、それをタクトの前に差し出した。
「……タカヒロさん。俺はまだ酒は飲めませんよ」
「大丈夫。少しでいいから飲んでみて」
タクトは訝しげな表情でワイングラスを持ち上げ、中の液体を口の中に流し込んだ。
その液体の正体にタクトは眉をぴくりと動かした。
「これは……ブドウジュース……?」
アルコール特有の匂いも無く、飲み込んだ時に体が熱くなる感覚もないその液体はブドウの味がするだけだった。
「これはアキヒロがこの店で気に入って飲んでいたものだよ」
「親父が……?」
タカヒロはブドウジュースの瓶をタクトに見せる。コルクで栓をされたその容器の見た目はワイン瓶と大差なかったが、瓶の側面の洒落たラベルにははっきり果汁百パーセント葡萄ジュースと書かれていた。
どうやらこの街で採れたブドウを使用しているらしい。
「……親父は下戸だったんですか?」
「いや、酒豪という言葉は彼のためにあるのではないかと言うくらい酒は強かったよ。昔上司とビールの飲み比べをした時があったのだけどね、アキヒロはその上司の倍の量を飲んだにも関わらずケロッとしていたんだ」
タカヒロはあの時の隊長の悔しそうな顔は見物だった、と笑った。
「そんな酒豪さんがどうしてジュースしか飲まなかったんですか?」
「彼自身の口からは一度も聞いたことは無いけど、万が一酔っ払って家族に迷惑を掛けたくなかったからだと、俺は思うよ」
「……どうしてそう思うのですか?」
タカヒロは拭いていたグラスを置き、次のグラスを手に取った。
「彼は昔から自分より他人を優先する癖があってね、俺もその癖には何度か命を救われた」
タクトは父親が軍事関係の仕事をしていると言っていたことを思い出す。
恐らくタカヒロは同じ部隊にでも居たのだろう。
「そんな他人のことばかり考えていた彼がこの店で話していたのは家族のことがほとんどだった。余程君達のことを大切に思っていたのだろうね」
「……」
「最も、俺も結婚しているからその気持ちはよくわかるよ。もちろん、ティッピーもね」
彼の言葉にティッピーは頬を染める。
「九年前にアキヒロが仕事でこの街に居た時も年に数回しか家族に会えないと嘆いていたよ」
「凄い大袈裟ですね……」
タクトが呆れるように言うとタカヒロは笑った。
「はは、そうかもしれないね。でも、タクト君も将来父親の気持ちがわかる日が来るかもしれないよ」
「……」
その言葉にタクトは何も返せなかった。果たして自分にそのような未来があり得るのか。自分の過去を知った上で寄り添ってくれるような人が現れるのか。今の彼にはわからなかったのだ。
タクトがワイングラスの中のブドウジュースを飲み干したところで店の奥の扉が開き、チノ達が入ってきた。
シャロと千夜は風呂を上がったようで、チノから借りたらしい寝巻きを着ている。
「二人共、湯加減はどうだったかな?」
「とても気持ち良かったです」
「あ、ありがとうございました!」
千夜とシャロはタカヒロにお辞儀をする。
「それは良かった。よかったらみんな今日はうちに泊まっていくといいよ。布団の予備はたくさんあるからね」
「そうですね。外は凄い雨ですし、是非泊まっていってください」
「いいんですか!?」
「もちろん」
香風親子のありがたい申し出にリゼ達は喜んだ様子で頷いた。
その様子を見ながらタクトは帰る準備を進める。
「タクト君もどうだい?」
「俺もですか……?」
タクトは驚いた顔をしてタカヒロに向き直った。まさか自分が話題に上がるとは思ってもいなかったのだ。
「もちろん。君だけを除け者にする理由はどこにもないからね」
「そうですよ。それに、この雨の中傘もささずに歩くなんて危なすぎます」
せっかくの好意を無下にする訳にもいかなかったので、タクトは首を縦に振った。
友人の家でのお泊まり会の経験が無い彼は若干の緊張を感じながらも、心が高ぶるのを自然と理解した。
タクト達はタカヒロに礼を言い、その後チノの案内により彼女の部屋にお邪魔させてもらっている。
部屋の中は綺麗に片付いており、なんとも落ち着いた雰囲気がある、彼女らしい部屋だという印象が強い。
なおココアとチノは現在入浴中である。二人で風呂に入るくらいには仲良くなったらしい。
まあそれはさておき、タクトには先程から気になっていることがある。
「リゼ」
「な、なんだ?」
タクトはリゼの姿全体を視界に入れながら尋ねてみた。
「中学時代が恋しくなったのか」
先程から彼女の服装はチノの中学の制服である。似合ってなくはないが、サイズが小さいせいかスカート丈が短いように見える。
タクト的にはこれはこれで悪くないと思ってる節があるが、それを口に出したら彼の人生に終止符が打たれることになるだろう。
「ち、違う! ココアとチノにジャンケンで負けたからこれを着ている訳であって、決して着たいから着ている訳じゃないぞ!」
赤面しながら制服を腕で隠すが、積極的に着替えようとしないのは満更でもないのだろうか。
そんないつもと一味違うリゼの様子にシャロの目は釘付けのご様子だ。
是非とも写真に収めたい光景だが、タクトはまだ三途の川を渡る気はないので根性で耐えていると、この事態を引き起こした張本人方が戻ってきた。
「上がったよー!」
「まだやっていたんですか」
自分達が作った状況に対してなんという言い草だろうか。
「わ、私はお風呂に入ってくる……ん? なんかココアの匂いがしないか?」
リゼは人の匂いを嗅ぎ分けることができるらしい。もしかして普通の女子高生にはそういう類のパッシブスキルでも備わっているのだろうか。
「あはは、私の匂いってなにー?」
「違う! 飲む方のだよ!」
「ふふふ……実はこれを入れてみたんだ!」
どうやら違ったようだ。
相も変わらず素晴らしいツッコミを入れるリゼに、ココアが見せた物は入浴剤の袋だった。
表には大きな文字でココアと書かれており、隅の方に飲用不可の注意書きがある。
「これでリゼちゃんも甘い匂いに……」
「余計な事を……」
リゼは怪訝そうな表情でチノの部屋を後にした。
しかしタクトは見逃さなかった。彼女が部屋を出る時に少し口角が上がっていたことを。
「上がったぞー」
しばらくしてリゼは満足そうな表情で戻ってきた。どうやらココア風呂の評価は上々らしい。
タクトはリゼが部屋に入ってきたことを確認してから風呂に入ろうと立ち上がった。
「次は俺だが、着替えは……」
「私が父に言って用意してもらうのでタクトさんは先にお風呂に入っててください」
「そうか。ありがとう」
「ごゆっくり」
着替えの問題も解決し、タクトは足取りも軽く風呂場に向かった。
無事に入浴を済ませたタクトは用意された着替えに袖を通し、チノの部屋に戻った。
「あ! タクト君おかえり!」
「お風呂どうでしたか?」
「ああ、いい湯だった」
「それは良かったです。タクトさんもコーヒー飲みますか?」
「じゃあ一杯もらおう」
彼女達はそれぞれコーヒーカップを持ち、一つの小さなテーブルを囲んでいた。
シャロはコーヒーカップの代わりにぬいぐるみを抱いている。ここで彼女にコーヒーを与えようものなら彼女が抱えるのはぬいぐるみではなく、ここにいる誰かになるだろう。
「タクト君も来たところで、皆の心に秘めてることを聞きたいんだけど……」
タクトがチノからコーヒーカップを受け取り、彼女の隣に腰を下ろしたところで千夜が静かに言い出した。
その瞳はまるで恋をする乙女のようだ。一般的なパターンならば、ここで想い人を暴露していく流れになるだろう。
そのことを考えてか、シャロはなにやらそわそわし始めた。
そして、頬に手を当てて千夜が言ったのは、
「……とびっきりの怪談を教えて?」
怪談。
つまりみんなで怖い話をして盛り上がろう、ということだ。
紛らわしい言い方をする千夜に、シャロは睨みを飛ばしている。
「怪談ならうちのお店にありますよ」
意外にも百物語の一番手はチノだった。それもまさかのラビットハウス原産の怪談だ。
タクトは興味ありという表情でチノの話に耳を傾けた。
「……リゼさんとココアさんはここで働いてますけど、落ち着いて聞いてください」
声のトーンを落として話し始めるチノに、ココアとリゼはごくりと生唾を飲み込む。
シャロに至っては両手で耳をふさいでいる。
「この店は夜になると――」
丁度その時、雷鳴が轟き四人の少女は悲鳴をあげた。
チノは続ける。
「……目撃情報はたくさんあります……父も私も目撃しました」
「そ、それは……」
一呼吸おいてチノは言い放った。
「暗闇に光る目……小さく、ふわふわな……白い物体……!」
チノの言う謎の物体にタクトは心当たりがあった。
白くてモフモフであり、時々ダンディな声で喋るそれはとある喫茶店のマスコットウサギである。
しかし、一生懸命怖がらせようとするチノにそれを伝えることはタクトにはできなかった。
可愛いは正義である。
「……じゃあ次は私ね」
千夜はこほんと咳払いをするとポツリと話し始めた。
「これはね、切り裂きラビットって言う実話なんだけど――」
どうやらこの街の雷は空気を読むのがうまいらしい。
これから怪談が始まろうとしたその瞬間、外が一瞬眩く光り、部屋の明かりの一切が消えた。
停電である。
「く、暗いよ……」
「落ち着いてください。こんな時の為に……」
そう言ってチノは蝋燭に火を灯した。蝋燭のぼうっとした灯りがその周囲だけを照らす。
なんと雰囲気のあることだろう。
「盛り上がってきたわ……! それじゃあ続きね……昔、とある喫茶店に一匹のウサギがいました……そのウサギの周囲では次々と殺人事件が……!」
「――という訳なの。おしまい」
千夜が話し終える頃にはココアとシャロはすっかり怯えてしまい、チノも震えながらタクトの腕にしがみついている。リゼも意外にもこの手の話が苦手なのか震えているようだ。
「そろそろいい時間ね。もう寝ましょう?」
「そうだな。という訳で……チノ、俺を解放して欲しいのだが……」
「ま、待ってください。タクトさんもここで寝ませんか?」
その提案にタクトは少し狼狽えた。
流石に複数人の女子と一夜を共にする訳にもいかないだろう。
「お誘いは嬉しいが、既に部屋を用意してもらっているからな」
「じゃあ布団をここに持ってこようよ!」
「そ、そうだな! 私も手伝うぞ!」
「しかし……」
予想外の援軍である。
それほど千夜の怪談が怖かったのだろうか。
彼女達を落ち着かせて立ち上がろうとすると、チノと別の手がタクトの腕を捕まえた。
「ま、待って! お願い! ここにいて!」
男というものは女子の涙に弱く、それはタクトも例外ではない。
それを知ってか知らずか、シャロはタクトの腕を掴んで涙目、上目遣いで彼を見る。
タクトはそんな破壊力カンストの攻撃に耐えられるはずもなく、やむなく首を縦に振った。
「あらあら。タクト君、モテモテね」
この状況を作り出した本人が何を言っているのだろうか。
その後タクトは用意してもらった部屋から布団を持ち出し、チノの部屋の端っこの方に並べた。
ココア達からもっと近くに来るようにせがまれたが、タクトはそこだけは頑なに断った。
そして夜も更け皆も寝静まった頃、タクトは体を揺すられる感覚で目を覚ました。
気配を感じる方に顔を向けると枕元に金髪のお嬢様がいた。
「……どうした……シャロ。暗殺か……?」
「違うわよ!」
こんな夜更けでも小声でつっこむのは流石と言ったところだろう。
しかし、暗殺じゃないのなら彼女はなぜタクトの枕元に立っているのだろうか。
「その……トイレについてきて欲しくて……」
タクトは無言で頷いて布団から体を起こした。
「じゃあ行くか……」
「ありがとう……」
蝋燭を片手に持ったタクトを先頭に、二人は部屋を出た。
暗い廊下を蝋燭の灯りのみを頼りに進む。雨風によってがたがたと音を立てる窓ガラス。
まるでホラーゲームのワンシーンだ、と考えながらタクトが歩いているとなにやら遠くの方に人影が見えた。蹲っているようだ。
「ひっ……」
怯えるシャロを後ろに庇いつつ、その人影に近づいてみた。
蝋燭の灯りによって徐々にその姿が照らされていく。体育座りの要領で腕を前に組んで座っているその正体は、
「り、リゼ先輩?」
リゼだった。
彼女の足元を見てみると火が消えた蝋燭が置かれていた。
「ろ、蝋燭の火が消えて動けなくなった……訳じゃないぞ……」
体と声を震わせながら言われてもなんの説得力も無い、とタクトは小さく笑った。
「一緒に行きましょう……」
「……そ、そうだな」
シャロはタクトの陰からリゼを立ち上がらせようと手を差し出した。
するとこの街の雷はやはり意思があるようだ。
リゼがシャロの手を握った丁度その瞬間、青白い光と凄まじい音が辺りを包んだ。
「キャー!!」
それに驚いたリゼとシャロが悲鳴をあげて互いに抱き合おうとすれば、彼女達の間に居たタクトがどうなるかは明白だ。
「ぐふっ……」
単体のダメージはそれほどでもないが、それを挟み撃ちで喰らったならば話は別である。
前後から回避不能のタックルを受け、タクトはよろめいた。
「あ! す、すまない!」
「ご、ごめんなさい!」
「い、いや、大丈夫だ……」
腹と腰にそこそこのダメージを感じつつタクトは一つの真実を改めて確信した。
「やはり暗殺か……」
「違うから!」
翌朝、タクトはいつもの癖で早めに目覚めた。体を起こし、寝ぼけ眼で辺りを見回してみるとチノも起きていたようで目が合う。
「おはようございます。タクトさん」
「おはよう、チノ」
タクトは伸びを一つして布団から出る。実に気持ちのいい朝だ。外の音に耳を傾けてみれば、昨晩の雷雨の代わりに雀の鳴き声が聞こえてくる。
チノが窓のカーテンを開けると、眩しいほどの朝日が射し込んできた。
「……おはよう、チノちゃん、タクト君」
「……おはよ」
朝日に当てられた千夜とシャロも目覚める。シャロはまだ眠そうだ。
「シャロちゃん、寝言で今日は特売なの――」
「そそ、そんなこと言っててもここで言うな!」
どうやら目が覚めたらしい。
周りの騒がしさでリゼも目が覚めたようだ。彼女は目を擦りながら起き上がり、奇妙なものを見たような顔をする。
「……」
彼女の視線を追ってみると、部屋の扉の前でミステリアスな姿勢で寝ているココアが居た。
「芸術的だな」
「芸術……?」
匍匐前進の夢でも見ているのだろうか。
五体投地の一コマのような体勢の彼女の気持ち良さそうな寝顔を見ていると、不思議とこちらまで安らかな気持ちになる。
かくして、タクトの初めてのお泊まり会は無事に終えることが出来たのだった。
今回はオリ主のお家事情をほんの少しだけ出してみました。それに伴って、サブタイトル『そう言う因果もあるものだ』にて出てきた年数を少しばかり変更しました。詳しくは活動報告をご覧下さい。
混乱を招くかも知れません変更、申し訳ございませんでした。
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