ワールドリワインド   作:恒例行事

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こんな感じの物語好きだからもっと流行れ


第一次侵攻

 街中が破壊の渦に巻き込まれている。

 

 巨大な白い身体の怪物が、家を壊し瓦礫を砕き人を喰らい斬り撃ち穿ち殺す。

 

 地獄――そうとしか表現できない。

 

「――んだよ、これは……」

 

 呆然と、そう呟くことしかできない。今朝は普通に目が覚めて。昼は幼馴染に勉強を教えてもらい――何時もの日常。

 

 なのに――なんだこれは。

 

「――(めぐる)……ッ!」

 

 幼馴染が話しかけてくる。おいおい、俺に構ってる状況じゃないだろ。

 

「待ってて、今助けるから……!!」

 

 無駄だよ。家の崩落に巻き込まれて生きてるだけまだマシだろ。俺の事は置いて、先に逃げてくれ。

 

「――ッ! 何でそんなこと言うの!」

 

 事実じゃんか、だってもう――身体の感覚が分かんないし。

 

「いい、から……! 逃げるの!」

 

 ……このままじゃお前も巻き込まれる。頼むから逃げてくれ。

 

「嫌!」

 

 頑固だな、全く……

 

「~~~ッ!! も、う……!! 重た、すぎッ! 待っててね、すぐ助けるか……ら……」

 

 お前だけ、は……生きてて、くれ……

 

 

「ねぇ待って! 返事してよ! ね――」

 

 

 

 

 ―――

 ――

 ―

 

 

「――る。――る」

「ん……」

 

 目が覚める――目を開けると目の前には幼馴染の顔。

 

「……は?」

「ちょっと廻! 聞いてる!?」

 

 ガクガクと肩を揺さぶられる。いや、それよりもだ。

 

「……あるじゃん、感覚」

「はぁ? 何言ってんの、寝ぼけてる?」

 

 先程感覚の無かった下半身を動かす為に、幼馴染をどける。

 

「ちょ、ちょっと何すんのよ」

 

 そのまま幼馴染を座っていた椅子に座らせ、肩を掴む。むにーと頬を引っ張るとそのまま伸びていく。

 

「ら、らにすんの」

 

 若干頬を赤らめ――恐らく頬を引っ張ったから――文句を垂れる幼馴染を放置してさっきのがなんだったのか考える。

 

 思い返してみても、あの時の記憶はある。

 

 確か、一人で留守番する事になったから出かけた幼馴染を見送って家でゆっくり漫画読んでた気がする。そしたら突如外が騒がしくなってきて、何だと思って窓から外をのぞいたら――変なでかいのが空から降ってきた。

 

 そしたら家の崩落に巻き込まれて、下半身が動かないことに絶望しながらパニックになってたら――幼馴染が来た。

 

 以上、回想終わり――いや、わかんねぇよ何だこれ。

 

「訳が分からん」

「それはこっちの台詞!」

 

 うがーと牙をむいて来た幼馴染に対し、座ったままのデコを押さえつけて届かないようにする。

 

「いや、ちょっと悪夢みたいな何かを見てさ。変な夢だったわマジで」

「悪夢? 何それ」

「さてな。俺が知りたい」

 

 一体何だったんだろうか、俺の夢だったのか?

 

「それにしてはリアルな感覚だったわ。下半身動かなかったし」

「それマジでやばい奴じゃん……やっぱ一緒に居ようか?」

「いや、いいよ。お前にそんな迷惑かけてられないし」

 

 出かける寸前だった幼馴染を見送る為、玄関まで向かう。

 

「じゃあ行ってくるから、本当に調子は大丈夫なの?」

「おう、平気だ。楽しんできな」

「……ん。分かった! じゃあ行ってきます」

「おういってら――」

 

 そう言ってドアを開けようとした幼馴染と、ドア周辺が一瞬で外に繋がった。

 

 周辺が一気に消えた――そのまま、消えうせたのである。

 

「……は、あ」

 

 何だと思い上を見上げる――そこに居たのは、さっきも見たでかい白い怪物と少し小さめの四本足の変な奴。

 

 でかい怪物の口は閉じられており、その口からドアと思われる素材と――人間の足の様な物が見えた。

 

 

「あ……あぁ……」

 

 

 あの足は一体なんだ?うちに来るまで誰かが犠牲になったんだろう。

 

 ――否。

 

 じゃあ誰が?決まっている。

 

 脳が現実を認識したがらない。拒否したい、逃げ出したい、否定したい。

 

 だが、現実が嫌と言うほど押し付けてくるその事実は――残酷で無慈悲なものだった。

 

 

 

「――てめえええぇぇぇぇぇえぇぇ!!」

 

 

 武器の様な物など何もなく――素手で走り詰め寄る。人を飲み込むような怪物だぞ、勝てるわけがない――うるさい。

 

 そういう話じゃないんだ。

 

 

 ――好きな人を奪われて、黙っているなんて男じゃない。

 

 

「その人を、返せえええぇぇーーーー!!」

 

 

 そして小型の四本足の奴が前に出てきて――その身体のブレードに切断され、呆気なくその人生の幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 ―――

 ――

 ―

 

「ちょっと廻! 聞いてる!?」

 

 ……ああ、何だ。そういう事だったのか。

 

 さっき聞いたばかり(・・・・・・・・・)の言葉に既視感を感じながら、俺は目を開ける。

 

 視界に映りこむのは、さっきと変わらない幼馴染の顔――その事実にどうしようもない程安堵を抱く。

 

「何だよ……そういう、事かよ……」

「はぁ? 何言ってんの、寝ぼけてる?」

 

 さっきと変わらない台詞、さっきと変わらない表情――間違いない。

 

 俺は、死んでは巻き戻る特異体質を得たらしい。

 

「ごめんな」

 

 そう言って肩を揺さぶるために彼女の手を取り、座っている俺に引き寄せ抱き締める。

 

「ちょ、なななな、なにすんの!? まだ昼だし!?」

「ごめんな……ごめん……」

 

 どうやら俺が思っていたより、さっきのは堪えたらしい。彼女が生きている――その事実がどうしようもなく有難い。

 

「……怖い夢でも、見たの?」

「怖い夢、か……確かに、とびきりの悪夢かも」

 

 終わりのない物――この無限ループには恐らく、終わりなんて存在しないのだろう。かつて見た漫画やゲーム、小説でも似たような話はあった。

 

 突如巻き戻しの能力を身に宿してしまった主人公が、自らの命を犠牲に何度も何度もやり直して世界を、国を、街を、人々を、仲間を、大切な人を救う。

 

 ありふれた英雄譚だが、そのミソは主人公があくまで凡人であるという点である。

 

「最悪だ……本当に」

 

 抱き締めた彼女の温もりを、俺は恐らく生涯忘れることは無いだろう。

 

 そして抵抗しない彼女の温もりを味わいながら――再度、意識が暗転した。

 

 

 

 ―――

 ――

 ―

 

「ちょっと廻! 聞いてる!?」

「……ああ、聞いてるよ」

 

 気だるげに肩に置いてある手を取る。

 

響子(きょうこ)

「何?」

 

 そう言ってこっちを見つめる彼女――響子に、俺は宣言する。

 

 

「今日一日、俺とデートしないか?」

 

 

 さぁ、逃走劇を始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと廻! 聞いてる!?」

 

 ……ああ、また駄目だったか。

 

 最早何度目のやり直しかすらわからない程繰り返し――また失敗した。その事実が俺に重くのしかかる。

 

 四足歩行に斬られて死んだ。

 

 でかいのに飲み込まれて死んだ。

 

 でかいのに踏み潰された。

 

 どこからか飛んできた銃弾に撃ち抜かれて死んだ。

 

 彼女が斬られて死んだから、後を追って自殺した。

 

 彼女が踏み潰されたから、俺も踏み潰された。

 

 失敗失敗失敗――成功の二文字が酷く遠く感じる。

 

 

「何が駄目なんだ……」

 

 

 わからない、わからない。どうやったってうまくいかない。まるで世界が俺たちを殺しに来ている――そんな風にすら考えてしまう。

 

 それでも。

 

 とにかく模索する。どれだけ失敗して死んでも、彼女が殺されても――俺の精神が死なない限り、俺たちは死なないのだから。

 

「絶対助けるからな」

「はぁ? 何言ってんの、寝ぼけてる?」

 

 もう何度聞いたかすらわからない彼女のそんな声を聞いて、俺は再度計画を練り直す為に思考し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと廻! 聞いてる!?」

 

 聞いてるよ。次は別の道を試そうか。

 

 

 

 

 

「ちょっと廻! 聞いてる!?」

 

 うん。痛い思いさせてごめんな。次こそ助けるから。

 

 

 

 

 

「ちょっと廻! 聞いてる!?」

 

 ……おう。聞いてるよ。

 

 

 

 

「ちょっと廻! 聞いてる!?」

 

 何故だ。さっきまであのタイミングで四足歩行は出てこなかっただろ。何だ、俺の行動で少し変わったのか?あの少年を助けたのが駄目だったのか?

 

 

 

 

「ちょっと廻! 聞いてる

 

 人を助けると未来の行動が変わり、結果的に死が近くなる。でも、見殺しにするのは違うだろ。でも、見殺しにしないと俺たちが生きていけない。クソったれ。

 

 

 

 

「ちょっと廻! 聞い

 

 あの少年とあそこの婆さんは無視だな。逆にあそこのOLは助けた方がいい。後から囮にできるから。そうなるとあそこの場面で四足歩行を意識する必要は無くなるな。響子の息切れだけが問題だけど、それは俺が担いでいけば問題ないだろ。

 

 

 

 

「ちょっと廻!

 

 くそっ、何だあのおっさん。折角うまく行ってたのに、これじゃ最初から練り直しだ。あのおっさんが出没する理由は恐らく途中のガキ(・・)を助けたからだな、今度は無視だ。

 

 

 

 

「ち

 

 上手く行ったと思ったんだが、駄目か。結局、ほぼ全部見殺しにするのが正解。避難所に辿り着けばまた少しは変わるのか?でも、避難所の手前までたどり着いてやり直しがかかるってことは避難所もダメなんだろ。どこだ、安全圏はどこにあるんだ?そもそも奴らはどこから発生してるんだ?何故来た?生物なのか?機械なのか?改めて考えてみても、謎ばかりだ。

 

 ……考えてみる必要がある。

 

 そもそも奴らに攻撃したことは無かった、試してみよう。

 

 

 

 

 

 

 一

 

 試しに鉄パイプで殴りつけてみたけど、ダメージは通ってないっぽい。感触もクソ硬かったし打撃は入りそうにない。次は包丁かなんかで斬ってみるか。

 

 

 二

 

 包丁じゃ傷一つ付かない。斬るって言っても本当に切れ味が良くないとダメそうだ。そもそも馬力はどんくらいなんだ?車で轢いてみたら意外といけるか?試す価値はある。

 

 

 三

 

 ぶっ飛ばしたら、反対向きになって起き上がれずにじたばたしてた。どうやら倒すことは出来なくても、四足歩行は何とかなりそうだな。ただこれをやると無害な奴まで一緒に轢いちまうし、俺へのダメージが半端ないしな。

 

 

 四

 

 四足歩行を何とかなるとか言ったが、あれは嘘だ。殴り掛かる前に斬り殺されたわ。

 

 

 五

 

 アレ、どうやって近づいたんだっけ?何かすぐ殺されるなぁ。

 

 

 六

 

 ああ、そうか。誰かが(・・・)一緒に居たんだっけ。あれ、すごく大切だったと思うんだが。

 

 

 七

 

 何を考えてるんだ俺は彼女を守ると決めたのにむざむざ危険な目に遭わせるとか幾ら死に戻るとはいえ苦しい思いを何度もさせるわけにはいかないだろう最初に誓ったことを忘れるなよこのアホカスなにをしてでも助けると決めたんだろう貫き通すぞこの野郎

 

 

 八

 

 あのクソ四足歩行野郎俺の事を狙わず響子を狙うとは絶対許さねぇいつか車で轢き殺してやるあのクソガキ俺たちの退路塞ぎやがって調子に乗るなよ邪魔をするな俺が殺してやろうか(・・・・・・・・・)

 

 

 九

 

 次だ

 

 

 十

 

 ああああぁぁぁ!!クソ、うまく行きそうだったんだ!!邪魔すんなよおっさん……!!

 

 

 十一

 

 駄目だな。あいつが生きてるといいことない――殺すか。

 

 

 十二

 

 殺すのに手間取って人が寄っていて邪魔された。次は全員殺してやる。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――

 ――

 ―

 

 

 

 

 

 四十一

 

 どうやっても響子が殺される。どうすればいい、どうする。考えろ、考えろ、考えろ。考えて考え抜いて試して幾らでも挑戦しろ。俺にできるのはそれだけ――繰り返す。

 

 

 

 

 

 四十五

 

 今回はでかいのに飲み込まれてから少し時間があったから、自殺用に持っておいたカッターで手首を首を何度も切り裂いて死んだ。一つ不思議なのが、これまで一瞬で死んでた気がするが何故か生きていた。これに謎があるかもしれない。

 

 

 

 

 

 五十

 

 響子に否定された。何でだ、何で分かってくれないんだ。だってそいつは、お前を何度も殺した男なんだぞ。殺すしかないだろ、分かってくれよ。お前のためなんだ、全部全部全部――お前のためなんだよ。

 

 

 

 

 

 五十五

 

 消えろよ。邪魔だ、俺たちの邪魔をするな。全部が全部、全て一切合切――邪魔だ。殺す。いや、殺すというのか?こいつらはもう人間じゃない、怪物を連れてきた人を殺すんだ――それはもう人じゃない。敵だ。殺すべき敵だ。目的の邪魔だ。障害物。消す。消すに限る。消すしかない。だから――分かってくれよ響子。

 

 

 

 

 

 ―――

 ――

 ―

 

 

「ちょっと廻! 聞いて――」

「行くぞ」

 

 行動開始。何度目の繰り返しになるかも分からないが、正攻法は存在しないことが分かった。

 

 条件としては、人を殺さず、邪魔者を避け、四足歩行から逃げ、デカブツから逃げ、人の多い所まで逃げる――とりあえず避難所まで行ったらそこを翔け抜けて隣町まで行くのがベストか。

 

 手早く一番近くにあるカッターを手に取りポケットに入れ、何故か(・・・)お洒落をしている響子の手を取り玄関に向かう。

 

 靴はスニーカーではなく、効率重視の安全靴。これを履く履かないで足の負傷率ががらりと変わった。

 

「ま、待って廻! どこに――」

 

 ドアを開け、まず左に駆けだす。T路地のちょうど中心にある家から左に駆けだし、凡そ一分ほど走ると大きな通りに出る。

 

 通りの南側では既に騒ぎが起きている為、ここで北上する。北に向かえば学校があり、簡易的な避難所として機能しだす。一度だけ響子を預けたことがあったが少し離れた隙に避難所が襲われていたため自殺してやり直した。

 

 学校を素通りし、徐々に人が学校に集まるために歩き出しているのを認識する。

 

「ね、ねぇ! 廻、聞いてる!?」

「聞いてる」

「と、止まって! お願い!」

「駄目だ。ここで止まったら死ぬ」

 

 響子の意見をねじ伏せ、進み続ける。仕方ないじゃないか、前に休憩したが――結果死んだ。

 

 あと数歩で逃げ切れたのに、その数歩が足りなかった。

 

 だから今回は休憩させない。無理やりその数歩を付け加えさせる。

 

 走れなくなった響子を背負い、駆ける。ひたすら隣町に向かって歩き、走り、四足歩行とデカブツに見つからないように冷静に、急いで向かう。

 

 そして隣町を繋ぐこの橋を渡り――ここからが本番だ。一番邪魔なおっさんをどうにかして避けなければならない。殺すのはNG、突き飛ばしたりしても響子に後でどやされるのは確認済みだ(・・・・・)

 

 街の中央まで凡そ十分ほどだが、その間に沢山の障害物がある。一番はデカブツと四本足。デカブツに関しては身を隠していてもこっちを補足してくるため、どれだけ遠くから先に発見するかに限る。まぁ既にいる場所は大体覚えたから、こいつらはなんとかなる。

 

 次に人。殺したら響子に文句言われるし、周りの人間にリンチにされる。どうにかして無害な奴の近くを通る――こうするしか方法が無かった。道は全部で二本、おっさんを選ぶか四足歩行を選ぶか。

 

 四足歩行に関してはもう倒せないと結論付けた。硬すぎるし、車ですら無傷でひっくり返るだけとか正直どうしようもない。二人いればどっちかを犠牲に倒せるが――それじゃ意味がない。

 

 響子だけは守るって決めたんだ――それだけは、忘れないようにしなきゃいけない。

 

 最終的に選ぶのはおっさん。あいつさえどうにかすれば、響子は(・・・)逃がせる。

 

 

 

 

 

「廻……」

 

 廻――私の幼馴染。

 

 今よりもっと小さい頃に両親が行方不明になり、沢村家に引き取られた子。

 

 私より四つも年下なのに、私と正反対の事ばかりする。

 

 喧嘩はするし、口調は荒いし、勉強をあんまりしないくせにテストの点数だけはいいし――その癖私に優しいし。

 

 家族、っていうよりは――好きな男の子、なんだろう。

 

 普段廻は変なことはしない。たまに部屋から気味の悪い笑い声が聞こえてきて様子を見たら漫画読んでたとかそういう事はあったけど、今回みたいなことは初めてだった。

 

 突然居間のソファで気絶するから彼の肩をゆすって起こしたら、いきなり外に連れていかれて。

 

 こっちは走りづらい格好してるのにもお構いなしに走って、話を聞こうとしても全然聞かせてくれないし。

 

 騒がしい後ろを振り向けば、何かでかい白いのが人を襲ってるし。

 

 訳が分からない事ばかりで、混乱が解けない。混乱が解けないまま彼に連れられ走り続けてた。

 

 息が切れて動けなくなったら背負って走ってる。私だってそれなりに重たいのに、全然気にせず走るんだもん。振動だってすごいし、お陰でたまに変な声でちゃう。

 

 だから――心配。

 

 何が廻をここまで豹変させたのか、その正体がさっぱりわからない。

 

 まるで未来が見える(・・・・・・・・・)かのように振舞う廻に、少し恐怖を感じてしまった。

 

 でも、それでも――私を守ろうと、そうしてくれてるのだけは分かる。

 

 だから待つ。

 

 騒ぎが去って、説明してくれるその時を――。

 

 

 

 

 

 

「うわああぁぁぁ!! た、助けてくれええぇぇ!!」

 

 

 瞬間、私の意識が声の元に向く。

 

 一人の男性が、でかい白い奴に追いかけられてこっちに迫ってくるのを。

 

 世界がスローで見える、そう錯覚する。命の危機になると瞬間的に感覚が鋭くなるというのは、あながち嘘じゃない――そんなどうでもいいことを考えながら、私はその男性を見続けた。

 

 でも、廻はそんなことはなく。

 

 まるで男性何て居ないかのように走り続ける。

 

 

 ねぇ、待って。あそこに助けを求める人がいるよ。

 

 助けないの。見殺しにするの。

 

 

 そんな言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡るけど、廻は止まる気配がない。

 

 そうこうしてるうちに、男性は追いつかれ――パクっと、何の遠慮もなく口に咥えられた。

 

 

「ぁ――」

「見るな」

 

 

 そう言って走り続ける廻に、私はどうしてと感想を持ってしまった。

 

 何で、そんなあっさりと人を、今の今まで生きてた人なんだよ、どうして?

 

 そんな感想を置き去りにして、廻は走り続ける。気が付けば後ろからさっきのでかい白いのが追って来てる、廻もそれに気づいているんだろう。足を進める速度は上がったし、息も切れてきている。

 

 でも、白いのはそんなこと知らないと言わんばかりの速度で近づいてくる。

 

 すると、突如廻が進行方向を変えた。裏路地の様な所に入り、一気に距離を短縮するつもりらしい。

 

 そして路地を進んでいると、突如視界が暗くなった。上を見上げると――さっきの白い奴。

 

 思わず叫びそうになったけど、ぎゅっと廻が力を込めて抱き締めてくれた。後ろ手だからあんまり力は入ってないけど、私の為にわざわざそうしてくれたという事が嬉しい。

 

 白いのは追いかけてくるばかりで、くらいついてくる気配がまだない。路地の先が見えて、もう少しで抜けれそうだ。もしかして抜けた先で食べるつもりなの――そう思う。

 

 廻は一生懸命走ってるから、それを伝えると若干驚いたような顔をして――「大丈夫。響子だけは守るから」――と言った。

 

 私だけは――?

 

 そう思った次の瞬間――私は路地を抜けた先へと投げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――届いた。

 

 

 この路地を抜けた先には――自衛隊の車がある。

 

 前々回程にそれを発見し、あと数歩という所で二人とも飲み込まれて死んだ。

 

 だから今回は――響子だけでも逃すことにした。

 

 どうやら白いデカブツは段々死にづらくなっているので、うまく行くかもしれないというある種の賭け。

 

 

 こっちを驚愕の表情で見つめる響子の顔を最後に――意識が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ストーリー出来てるけど書く時間内から出来上がり次第投稿します
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