ワールドリワインド   作:恒例行事

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@Aitrust2517 碑文つかささんに我らが空腹少女を描いてもらえました。大変可愛いですね。
すごく可愛いので皆さん是非Twitterをフォローしてください(ダイマ)


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神の国Ⅸ

 

カチャリ、と右腕に持った剣を見る。

 

今度エネドラと模擬戦する際に使用しろと言われたが――手に取って、見つめる。

 

今二人はどんな状態なのだろうか。外の様子を理解しているのだろうか。トリオン体と置き換える技術を利用して彼女を仕舞っている筈だが、その場合どういったシステムになるのだろう。

 

トリオン体と生身を換装しても、視覚情報や脳の処理に弱体化やラグは発生しない。逆に感覚が鋭くなり、戦闘能力が向上する。

 

という事は、トリガーに収納した生身の思考という点に変わりはない筈。中継地点、つまりタイムラグの問題か。

 

人間の身体は反射神経や運動能力がある程度限界がある為、それこそ俺や彼女の様にある意味反則の手を使わなければ太刀打ちできないだろう。

 

 

「――……どうなんだろうな」

 

 

今二人は、どうなっているんだろう。身体があるのか、思考できるのか、意識があるのか。

 

トリガーの中に身体を収納して、即死を免れた何て話どこにもなかった。どれだけ調べても探っても漁っても、黒トリガーになった人間の経験談なんてない。

 

……いや、それでも。理論的に言えば、死んでいる訳では無いと言える。

 

 

黒トリガーに存在する唯一の共通点――それは、使い手を選ぶという事。

 

 

これはどんな黒トリガーでも同じ。俺はエネドラやミラのトリガーは恐らく使えないだろうし、二人に(二人)は使えないだろう。

 

黒トリガーの元となった人物の好みによって使用できる人物が変わるならば、恐らく――まだ生きていると言える。

 

 

なあ、今何を思ってるんだ? 飯も食わなくて大丈夫なのか? そもそもどういう状況なんだ? どんな感覚なんだ? まだ――生きてる、よな?

 

 

…………返事なんて、帰ってくるはずも無い。何度も何度も行った。一度たりとも、帰って来たことは無い。

 

 

胸を締め付けられるような感覚が襲ってきて、更に激しい頭痛に頭を抑えそうになるが――歯を噛み締めて耐える。

 

分かりもしない事を悩んで、現実から目を逸らしている場合じゃない。もっと他にやるべきことがある。

 

息を思いっきり吸い込んで、吐き出す。胸の内に溜まった重たい重たいモノを吐き出すつもりで、思い切り。苦しくなるまで吐き出し続ける。

 

 

……気を引き締めろ。これからだ。これからもっと、新たな情報は得られる。折れてる場合じゃない。

 

 

折れたって前に進め――俺にはもう、これしかないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再度、ヒュースと剣を交えたあの場所まで移動する。と言ってもミラに転送して貰うだけなのだが、肝心のミラが見当たらない。

 

なので現在敷地内を歩いて捜索中なのだが――どこにもいない。

 

自分から吹っ掛けて来たのだからそこら辺の予約はしておいて欲しい――エネドラに内心文句を言いつつ探し続ける。

 

それなりに遠い、という事は分かるが実は詳細な場所を把握してるわけじゃない。ミラのトリガーによって移動が基本なので、そこに至るまでの場所は覚えていない。

 

少しは自分で動いていれば良かったか――そう思いながら足を止める。

 

がむしゃらに探しても見つかりそうにないし、エネドラを探してミラが居ないという事を伝えた方が早いと判断して探す目標を変える。

 

エネドラと合流しておけば少なくとも何も伝えられず互いに行違う、という事は起きない筈だ。

 

最初に紹介された遠征部隊の集まる部屋を訪ねよう、エネドラとミラが居なくても何かしたのヒントはあるかもしれない。

 

廊下を歩きながら、エネドラとの戦いについて考える。

 

エネドラの黒トリガー――液体・気体・固形の三つの形に変化するトリガーを扱って戦う。液体状になれば普通の斬撃は効かないし、固形にすれば相手を貫く強度に出来るし気体になれば相手のトリオン体内部に侵入して攻撃が出来ると聞いた。

 

簡単に言えば万能、器用貧乏と言うほど使い勝手は悪くないので万能が一番正しいだろう。

 

泥の王(ボルボロス)、と彼らは呼んでいた。普通に戦うとすると初見ではやりようがないだろう。せめて液体状の変化をしている際に斬っても無意味、という情報が無いと戦いにすらならない。

 

完全に初見殺し、まぁ黒トリガーとは大体そういう物だろう。

 

ミラのワープも、俺の斬撃も、エネドラの刃も、あの時の粒子野郎も――全部初見に対して圧倒的な強さがある。

 

トリガー同士での戦いは基本、情報が物を言う。俺のような巻き戻しと言うのはこの戦いに於いて絶対的に優位を取れるアドバンテージになる。

 

……巻き戻しでも、間に合わない物はあるが。

 

感傷に浸るのは止そう、それより別の事だ。エネドラとの戦い――……いきなりトリオン吸収を行っても意味ないだろうな。既に何かしらの対策は行われている筈だ。

 

様子見できる相手でもない。時間をかければ気体で攻撃してくるが、速攻で攻めれば新しい手を打ってくるだろう。

 

難しいな。若干搦め手を用意するのが良いかもしれない。

 

敢えて液体の攻撃を誘って、そこから急襲の形で斬撃を放つ。わかりやすい攻撃だが、鋭く早く相手が対応できない速度で行えば関係ない。

 

液体から固形に変形する際に刃の形にするのが基本攻撃の筈だから、その変化の隙を狙うしかないか。

 

 

「――おや、どうしたんだい?」

 

 

声をかけられ、思考を中断して反応する。後ろを振り向けばエリンが立っている。……傍らにヒュースを連れて。

 

どうもこうも、ミラを探している。何か知っているか?

 

「んー……正直わからないかな。遠征部隊って結構仕事抱えてるから、今それ関係で忙しいのかも」

 

仕事……か。ヒュースは何か知ってるか?

 

チラリとエリンを見て、頷くのを確認してからヒュースが話す。

 

「俺達は別に常に連携してるわけじゃない。個人の仕事を行う時も連絡し合うほどの仲では無いし、そもそもそんなに協力する体制である訳でもない。ミラが何か仕事を抱えているなら、それは申し訳ないがわからない」

 

確かに俺に連絡が来てない時点でそうか。……簡単な話だったな。

 

「何か用事があるなら隊長に聞くが?」

 

いや、大したことじゃない。エネドラと模擬戦をするんだが、肝心のエネドラとミラが見当たらなくてな。

 

「……ふむ。その二人が居ないとなると、なんだろうねぇ」

 

どうしたものか。まぁ、急に決まったものであるから他のことをして時間を潰すしかないか。

 

二人に感謝を述べて、部屋に戻る。空いた時間を利用して、トリオンについての研究を行いたいが――いい場所はあるだろうか。これだけの国の大きさなんだから確実にあるはずだが……待てよ。

 

……エリン、一つ聞きたいことがある。

 

「ん、なんだい?」

 

足を止めて振り返り、声をかける。

 

――エリン家で、トリオンの研究は行なっているのか?

 

そう聞くと一瞬目を細め、けれど顎に手をやり考える仕草を見せる。トリオンの研究はすなわち、その国の国力と等倍だとも言われている。

 

様々な国が乱立するこの世界では、トリオン技術の優劣が国の優劣を決める。黒トリガーを持った三人とノーマルトリガーの三十人では圧倒的に黒トリガーの方が強い。

 

だからこそ、エリンも躊躇うのだろう。いくら遠征部隊に入ったとはいえ、それは監視の意味も含めての配属。あのメンバーなら俺を止められるという思惑も多分に含んでいるはずだ。

 

 

「…………うん。ここで立ち話もなんだ、移動しないか?」

 

 

ああ、と返事をして着いて行く。……素直に教えて貰えれば、良いんだがな。

 

「……おい、剣鬼。どうしてそんなことを聞く」

 

エリンの後ろに付いていたヒュースが小声で聞いてくる。……そうだな。俺の目的に、必要なんだ。

 

「目的……?」

 

ああ。

 

そう言いながらチャリ、と腰に下げた剣を揺らす。そうするとヒュースは納得したように頷き、それと同時に険しい表情になった。

 

「それは……」

「ヒュース」

 

ヒュースがなにかを口にしようとした時、エリンに遮られる。

 

「――ダメだよ、ヒュース」

「……わかりました」

 

飲み込んだヒュースとエリンに疑問を覚えるが、まぁいい。

 

俺の身柄は現在、遠征部隊所属ではあるが正確にはエリン家の人間になる。だからエリン家のトリオン研究に混ざるのは決して悪い手ではない。

 

……もしやっていればの話だがな。ヒュースという優秀な人物を輩出出来るのだから、やっているだろうという賭け。

 

やっていなかった場合、ある程度実績を打ち立ててから交渉という形になる。あの時の領主か、ヴィザか。それよりかはエリンの方が協力してくれる確率は高いだろう。

 

黙々と歩くエリンの後ろに付いて、考える。

 

やってみるしかない。試すしかない。全ての可能性を試せ。実行するんだ。考えて考えて考えて、最適な答えを見つける。

 

なぁ、二人とも。そう思うだろ?

 

ピクリとも反応しない剣に問いかけ、やはり反応がない事を確認する。……ああ、神の国なんて言うのなら――なんでも解決してくれる神くらい居てくれよ。

 

 

――一瞬、剣が紅く鈍く輝いたような気がした。

 


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