ワールドリワインド   作:恒例行事

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大規模侵攻④

「二宮隊長、辻隊員強制脱出(ベイルアウト)……!?」

「相手は!?」

 

 ボーダー本部、司令部では各地で唐突に開いたゲートとその増援への対処に追われていた。

 

「人型だそうです! 剣をメインで扱って、遠距離へ斬撃を放ってくるトリガーを使用! 出力から察するに──黒トリガーです!」

「一人目の黒トリガーか……! 他はどうなってる!?」

「今情報を纏めます! 東隊員が率いるB級連合の場所、影浦・二宮隊の場所──そして太刀川隊員が単独で人型近界民と戦闘中です!」

「慶が単独か……風間隊はどうしてる?」

「風間隊──も、既に戦闘へ突入したそうです!」

「動かせる駒が一気に減ったな……!」

 

 顎に手を当て、何かを考える仕草を取る。オペレーターである沢村はその間にも忙しなく手を動かし各所へと連絡を行う。

 

「……三輪隊は?」

「現在本部周辺へ押し寄せているトリオン兵の対処に当たっています。それと緑川隊員も三輪隊と共に行動しています」

「緑川と米屋を援護に向かわせよう。そういえば出水は何をしている?」

「出水隊員は現在B級連合の元へと向かっている最中です」

「よし、合流させよう。あの三人にB級連合は任せて──空閑くんは何をしてる?」

「はい、空閑隊員ですが──……連絡が来ていません。連絡してみます」

 

 沢村が通信を繋ぎ、出るかどうか試す。

 

「……駄目です。どうやら嵐山隊とは別の場所に居るようです」

「それならば三雲くんに繋いでくれ。おそらく共に行動してるはずだ」

 

 忍田の言葉に従い三雲へと連絡する。よくみてみればC級部隊の援護に向かい、新型と戦闘を開始するとの文が送られてから連絡がない。

 

「玉狛が既にC級部隊の元へと向かっているから問題はないと思うが……」

「現状連絡がありません。──追加です! ……絵馬隊員、ベイルアウトです」

「何……!?」

 

 遠距離の攻撃が可能という話は聞いていたが、影浦や北添に犬飼までもがいるのに後方に控えてる絵馬をベイルアウトさせる相手に驚愕を示す。

 

「黒トリガーか……」

 

 黒トリガーには黒トリガーを。一瞬その言葉が脳裏をよぎったが思考を切り替える。ふと、そういえば迅は何をしているのかと疑問を抱いた。

 

「沢村くん、迅は今何をしている?」

「迅くんは……現在、ある地点へと移動中です」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!」

 

 ヒュガ、と容赦なく降り注ぐ斬撃を何とか避け続ける。絶え間なく繰り返される遠隔斬撃のパターンを見切ろうと只管前線に出続けるが、少しずつ逆に捉えられつつある。

 

 何本か、赤い奴はヤバいと聞いてなるべく破壊する様に意識してはいるが剣速が異常なまでに速い。察知できる影浦でなければ既にベイルアウトしていただろう。

 

「……?」

 

 ピクリと一瞬動きを止め、何かに反応するように腕を振る相手。 ドゴ、と音が鳴り空中で大きな爆発が起きる。その爆風に靡きながら再度影浦へと武器を向ける。

 

『っはー、嘘でしょなんで気付いたの!? そして普通斬り落とす!?』

『ユズル、援護出来そうならしな!』

 

 北添の放った榴弾メテオラを事前に察知し斬り落とし、攻撃を再開しようとした相手に対して狙撃が入るがそれも当たる寸前で斬り捨てる。

 

「……ハッ、白髪の奴は大概おもしれーな」

 

 サイドエフェクトによって攻撃の事前察知が可能な影浦と言えど、ここまでの曲芸は出来ない。確かに狙撃者の攻撃はある人物を除いてわかるし、近接でも敵なしと言えるほどには強い。

 

 だからと言ってメテオラは撃ち落とさないし狙撃は斬らない。旋空孤月を相手にしていて正解だったと珍しく心の中で呟いて、他のメンバーにターゲットが向かないよう接近する。

 

 今回の戦闘、影浦が落ちることによって全てが崩れる。あの遠距離攻撃では絵馬へも射程が伸びる可能性があるし、北添では耐えきれない。犬飼が付近に潜んではいるが、まだチャンスを作れてないため前に出てくることはない。

 

 ならば──と意気込み前に出る。

 

『ゾエ、カバーしろ。攻めるぞ』

『了解!』

 

 影浦が対抗するように黒い斬撃に対してマンティス──スコーピオンを二つ合わせ射程を伸ばす影浦の考えた技を使用する。孤月に対して強度で劣るスコーピオンだが、相手の斬撃に対し絡ませるように伸ばす。

 

「……」

 

 数瞬しか伸びない斬撃に対し的確に絡ませ、相手の剣を振る速度を遅らせる。生まれたタイムラグを逃さず北添が左手に持ったグレネードランチャーからメテオラを撃ちつつ右手のライフルからアステロイドを放つ。

 

 数秒の事であったが若干振る速度が遅れたものの、北添の弾丸全てを斬る。曲芸といっても差し支えないその動きに対し──影浦は珍しく笑った。

 

「──隙だらけだね」

 

 背後から近づいていた犬飼のスコーピオンによる攻撃を、後ろを見てもいないのに躱す。犬飼の左足を斬り、そしてその間に再度放ってきた北添の攻撃を避ける。避けた先に移動していた影浦がスコーピオンによる接近戦を仕掛け、それを犬飼が地面に横たわりながらもアステロイドで援護する。よく見れば隻腕である相手に、もう対処する手が無いと言わんばかりの連携。

 

 最後に──遠距離から飛んできた絵馬の狙撃が頭を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 ぐら、と頭が動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──遠くにいた絵馬へ、超遠距離射程の斬撃が伸びる。一瞬で街を分割したその一撃に対し、避けることも出来ずに絵馬はベイルアウトした。

 

「……何だ、死なないのか」

 

 それは果たして、自分の事なのか。それとも、ベイルアウトした絵馬の事なのか。

 

 狙撃が当たった。確かに頭に命中した。それはこの場にいる誰もが見ていたし、他にも北添の弾丸が数発当たっている。それでもなお無傷、と言うことは。

 

 

「……テメェ、まさか……!?」

 

 

 影浦の絞り出すような声が、辺りに響く。ボーダーの武装は市民に対して被害を加えぬように生身に決して実害のあるダメージが入らないように設定されている。

 

 だが、それでも気絶する程度の衝撃は与えているはずなのだ。何故それを食らって平然としているのかまでは影浦達は理解出来ない。

 

「まぁいいか。もう避ける必要もない──死なないなら、殺せばいい」

 

 刹那、影浦の身体中にチクリと突き刺さるような感覚が奔る。順番は追えない、ならば自分に攻撃が来ると言うことだけ把握し回避行動を取る。

 

「ラービット」

 

 ──が、回避のために横にステップを踏んだ先にラービットが突撃してくる。身体中は敵意に塗れているが、そのどれもが先程と変化ない。つまりラービットの敵意はないと言うこと。

 

「クソがッ」

 

 ラービットに対してマンティスを放ち、振りかぶってくる腕を切断しようと試みる。その間にも迫ってくる斬撃の対処が間に合わないことを悟ってラービットの戦力を削ることを優先。

 

 振りかぶった腕に対し、犬飼が最後のトリオンを振り絞ってアステロイドで妨害を行う。バチチッ! と直撃し、少しだけ軌道を変えたその腕の関節部にマンティスを直撃させる。

 

 硬さを感じさせずスルリと入っていった刃はそのまま腕を斬り落とし、犬飼のベイルアウトの音と共にもう一度マンティスを放つ。狙いは──迫り来る斬撃。

 

 一つ、足狙いの黒い斬撃を半ばで折る。二つ、腰狙いの黒い斬撃を斬る。三つ、胴体狙いの黒い斬撃を腕で叩き折る。四つ、間に合わず胴体を斬られる。五つ、首狙いの攻撃を身を捻り回避する。

 

 北添の援護が入り、ラービットの弱点部位を打ち崩す。寸前で口を閉じられたもののラービットの意識を北添へと向けさせ、そのままメテオラを人型に対して放つ。

 

 一旦影浦への攻撃をやめ、空中から降り注ぐメテオラを斬り捨ててラービットを下げる。やられた箇所の修復を行なっているラービットの隣に佇み、残りの戦力を計ろうとしているのかゆっくりと周囲を見渡す。

 

「……残り一、二……ラービット」

 

 そう言葉を告げると、ラービットがその場から跳んでどこかへ向かう。

 

『ゾエ、わざとアイツを狙わないでメテオラを撃て』

『家狙いって事? あんまり壊すのは良くない気がするんだけど』

『アイツの隙を作って反撃するには手が足りねぇ。チッ、セーフティ外せねーのかよ』

『流石にそれはマズ──うわっとと』

 

 回線で会話していた北添と影浦に対し、ほぼ同時に斬撃が飛んでくる。家を真っ二つに叩き斬り、次々と倒壊させていく攻撃をなんとか避けつつ合流を試みる。

 

『でもぶっちゃけどうしようもなく無い? 流石にセーフティ個人で外せる機構にはなってないでしょ』

『チッ……わかってる。オイ、本部に報告は』

『もうしてる! そのまま耐えて欲しいって連絡が来て、それ以来は何もなし!』

「耐えろって言われてもさー……」

 

 トリオンを漏れ出し、既に満身創痍の影浦といちおうほぼ無傷ではあるが近接戦闘は向かない北添。合流は果たしたものの時間を稼ぎ耐える事は難しい。既にいくつもあった家はほぼ倒壊しており、視界が広くなっている。崩れたその風景はまるで災害の後のようであり、人智の及ばぬ領域のようにも感じ取れる。

 

「……うぜぇな」

「ん?」

 

 影浦が小さく呟く。

 

「ずっと突き刺して来やがる。殺す、死ね、殺意の塊みてーな奴だ」

「うは、怖いなー……全身?」

「どこを攻撃するだとかそういうのは最早ねぇな。身体中切り刻んで殺してやるくらいに感じるぜ」

 

 珍しく、本当に珍しくため息を吐く影浦。

 

 サク、と歩く音が聞こえもう来たかとその後の方向を見てみると確かに接近して来ている。

 

「……ったく」

「やるしか無いよねー、ゾエさんこんな接近戦するタイプじゃ無いんだけど」

 

 シュドッと榴弾メテオラを放ちつつ、先に前へと出る北添。メテオラを手前で爆破して、煙を立ち上げた後にその中に紛れる。

 

 人型の前方がほぼ全て煙で包まれ、それをぼうっと見つめている。手に握った武器を一瞥し、赤く染まった瞳で一点を見続けてカタ、と剣を震わせ煙の中を見る。

 

 煙を分け突出して来た影浦に対し、刹那の居合で真っ直ぐ叩き斬る。

 

 半分になった影浦の後ろから北添がアステロイドを放ってくる。ピクリと反応して、アステロイドを回避して時間差で降り注ぐメテオラを斬る。

 

 

 その流れで北添を斬り──世界が歪む

 

 

 


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