ワールドリワインド   作:恒例行事

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星見廻①

「改めて──俺は実力派エリートの迅悠一。結論から言うと、俺ならアンタの目的を手伝えるよ。廻さん」

 

 そう話してきた何やら胡散臭い男を見る。ズキズキと頭痛がするのを抑え込んで、目の前の男──迅と名乗る奴に話しかける。

 

「なんだ、お前は。お前達は……」

 

 妙に苛立つ。

 

「廻さんの目的──多分だけど、ある人を救いたいんでしょ」

 

 ──この、何もかもを見透かしたような物言いが苛立つ。まるで未来を見ているようで(俺と同じようで)

 

「……黙れ」

 

 もう聞きたくない。これ以上は求めてない。もう、何も求めてない。俺が求めるのは、あの二人だけだから。

 

「ちょっと迅くん……!」

「大丈夫、任せて下さい」

 

 歩いて近づいてくる迅に対し、剣を向ける。

 

「喧しい、殺すぞ。お前なんかに俺の事は──」

「わかるはずない、だろ」

 

 先に言う言葉を潰されて、更に苛立つ。

 

「確かに俺は何もわかってない。何をしてきて、今何を思って、どうやって生きてきたのかは知らない。けどね」

 

「それは今であって、未来はどうなるかわかんないでしょ」

 

 ──思わず、その通りだと思ってしまった。その事が無性に何故だか悔しく、それと同時に納得もした。

 

「貴方も──変えてきた。だからここにいる」

 

 その言葉で、こいつが何を言いたいのかを理解した。

 

 要するに、俺とお前は同じだと伝えたいんだ。

 

 迅は未来を見て、俺は過去に戻る。違いはそこだけで、あとは同じなんだ。

 

「……それがどうした」

 

 俺とお前が一緒だから、どうなる。それが一体何になる。

 

 帰ってこないんだ。あいつらは帰ってこない。俺のやった事は消えないし、無くならない。二人は犠牲になって、俺だけ残って、何になるんだよ。

 

 未来がわかるからってどうなるんだ。

 

 何も変わらなかった。変えれなかった。無力で、悔しくて、悔しくて堪らない。

 

「だからこそ」

 

 そう言って、俺の剣先に近づく。不思議と、腕を動かす気にはならなかった。

 

「俺がこうして、ここに立ってるんだ」

 

 そう言って首筋に剣を当てられたまま、迅が俺の事を見る。その未来を見る目に、何が込められているのか──俺には察する事は出来ない。

 

「──断言する。貴方の目的は、こっちに来れば達成できるよ」

 

 ふざけるな、ぶち殺す──そう思ったところで、ふと思考に疑問が生まれる。

 

 ──待て。そもそもこいつに、俺は何も話してない。

 

 彼女を救いたいとか、彼奴を救いたいとか──そういう事は何も話してない。なのに、何故それが分かるんだ。

 

 よく考えろ。こいつが何を伝える気なのか。

 

 未来で俺が話した? いや、そういう内容で断言するなどとは言わないだろう。嘘でも、そんなバレやすい事は言わない。

 

 もしあるとするならば、どんな可能性だ。カマをかけているだけか? そうして無力化したところで、奪うつもりか。いや、わからない。

 

 何を以てして、俺の事を見たんだ。何を視れば、あいつは答えに辿りつけるんだ。

 

 ──ふと、奴の言葉を思い出す。

 

『ある人を救う』──何故、そう思ったのか。

 

 

 

「……お前が見た場所(未来)に」

 

 

 

 思わず、声を出す。これは、聞いておかなければならないと思ったから。逃してはいけないモノだと、思ってしまったから。

 

 

 

「──彼女は、居たか?」

 

 

 

 そう問うと、迅はニヤリと笑いこう言った。

 

 

 

「──勿論」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……やろっか、廻さん」

 

 ヴィザと戦闘を行っていた少年を何処かに逃がし、俺と迅が代わる。オルガノンを一度納めて此方の様子を窺う姿を警戒しつつ、迅と話す。

 

「片腕無くしてるとは言え、油断するなよ」

「……う、うん。そうだね」

 

 何故かこっちを見て歯切れの悪い回答をする迅に少し疑問を抱きつつ、続けて話す。

 

「恐らくアフトクラトルでも最強格だ。俺も勝率で言えば三割あるかないか、程度だな」

「それはまた、とんでもない相手だな……」

 

 口で話す言葉とは裏腹に、口元を歪ませ仄かに笑いを見せる迅。

 

「どうだ、何か見えたか?」

「ん……うん、成る程」

 

 風刃と呼ばれる黒トリガーを構えて、その武器から斬撃を奔らせる用意をする。俺もそれに倣って、同じように右腕に剣を持つ。

 

 ──悪いな、後少しだけ付き合ってくれ。そうしたら、今度こそ救って見せるから。

 

 剣にそう祈るように内心想い、構える。

 

「カバーするんで、お願いしても?」

「──任せろ」

 

 未だにオルガノンを展開しないヴィザに一気に接近する。一、二の踏み込みで大きく加速しエネルギーを殺さないように回転する。そのまま振り下ろす形になると、無駄に勢いに対して抵抗することになる。

 

 そのため横薙ぎを行い、出来る限り勢いをそのままにする。

 

 回転の最中、僅かに覗けるヴィザの姿を捉えてその瞬間だけ斬撃を放つ。ピンポイントでヴィザのみを狙うが、おそらく防がれる。だが、それで問題ない。

 

 ──キン! 

 

 鍔迫り合いのような形になり、ヴィザと顔を突き合わせる。

 

「──ふふ」

「何がおかしい」

 

 鍔迫り合いを解除して、蹴り上げる。胴体部分に直撃した俺の蹴りを軽く受け流し、ほぼノーダメージで後ろに後退。その隙を逃さず迅の風刃による援護が入るが──それも回避する。

 

「いえ、いえ……どうにも、こういった場面を迎えると心が躍ってしまいまして。昔からの悪い癖、と言うべきでしょうか」

 

 笑みを深めて言うヴィザにどこか気持ち悪さを感じながら、攻撃の手を緩めない。上段下段回転斬り蹴り突き──ありとあらゆる攻撃手段を取る。

 

「……マジか」

 

 無駄に遠くの声まで聞こえるようになった耳に入る迅の呟きを置き去りにして、お構い無しに斬り続ける。ガキン、とオルガノンによって止められるがそれも後ろに一歩引く事で解決する。

 

「く、くく……ああ、いいですな」

 

 残った左手にオルガノンを持ち、ゆっくりと歩き出す。

 

 ──刹那、首筋に大きく違和感が生じる。ピリつくような不快感が纏わりつき、身体が反応する。考えるより先に動いた身体に感謝を示す暇もなく、残光が迸る。

 

 急いでその場で飛び跳ね、迅のいる場所まで下がる。

 

「……近頃はどうにも、この感覚が薄かった。殺すか殺されるか、自らの生命を賭け金に剣戟というギャンブルに全てを賭ける。その刹那の快楽を愉しみ、勝利したその暁に興奮を覚える」

 

 一旦真顔で静止し、口元を僅かに歪める。

 

「やはり、こうでなくては。戦いとは、こうでなければ」

 

 嬉しそうに顔を歪めて歩み寄ってくるヴィザに若干の嫌悪感を抱きつつ、迅と作戦を練る。

 

「ねぇ廻さん、あの人ヤバくない?」

「色々と、な。それよりどうする、恐らく──さっきよりも格段にギアを上げてきているぞ」

 

 ゆらり、とヴィザの周辺に揺らぎを視る。

 

「ん……そうですね。廻さん、これまで通り、勝ちを描ける戦いをして下さい」

「わかった──任せるぞ」

 

 腰に一度剣を収め、抜刀する。

 

 瞬間的に、爆発のような速さで伸びる斬撃をヴィザに放つ。地面諸共切り裂いて伸びる刹那の斬撃に対し、ヴィザも対応する。

 

 オルガノンを展開、斬撃に対しオルガノンの剣をタイミングよく三回当てる事で逸らされる。反撃と言わんばかりに飛んでくる剣を見て──無視して突き進む。

 

 ドン、と左足で大きく踏み込む。その間にも剣は回ってくるが気にしない。姿勢を低くし、剣を回避するように身を沈める。通り過ぎる寸前で、右足を浮かせる準備をする。ギリギリ頭の上を通過していき、そのタイミングで大きく右足を前に出す。

 

 ドゴン! と大きくクレーターのように足が沈み込み、地面を砕く。その隙を狙って二段俺へと剣が飛んでくるが──後ろから伸びてきた斬撃がそれを防ぐ。一瞬当て、軌道を遅らせる事で俺が踏み込む隙が生まれる。

 

 その隙を見逃さず、再度納刀した剣に手をかけつつ一気に駆ける。

 

 瓦礫を吹き飛ばし、大きく衝撃波の様なものを発生させながら向かう。足を地面にはつけない、勢いを保ち身体が落ちない様に飛ぶと言った方が正しい。

 

 弾丸のように突き抜け、ヴィザを斬るというより叩きつける勢いで剣を振る。ガガガ、と大きく勢いを削りながら地面を滑る俺とヴィザに対して迅の援護が入る。

 

 俺を避けるようにヴィザに突き刺さる風刃だが、当たったように見えてかなり高精度で躱されている。マントで大きく身体の致命傷を避けたヴィザが再度オルガノンを巻き戻し当てようとしてくるが──それは当たらない。ピリつくような感覚が無いから、俺に当たることはない。

 

「勝利した暁に興奮を、なんて言っていたが」

 

 ガキン、とオルガノンが一気に失速する。

 

「何故これが──!」

 

 驚きを露わにするヴィザ。先程まで戦っていた少年が、置いておいた(・・・・・・)トリガー。効果は知らないが、どうやらオルガノンすら失速させる強力なものだったらしい。

 

 迅がそれとなく位置調整を行なっていたのはこれで決めるためか、と一人納得し言葉を続ける。

 

「──お前に勝利は訪れない」

 

 なぜなら、と言葉を区切ってヴィザに剣を振る。胴体ではなく手首を狙って振り切り、ヴィザの力を抑え込む。

 

 

「──俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

 

 

 刹那、ヴィザの身体を数発の斬撃が斬り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──廻さん!」

 

 最後の一撃と言わんばかりの鋭さで放たれたヴィザの袈裟斬りを受け止め、そのまま流す。こう言った受けの技能も、ヴィザとの戦闘で研ぎ澄まされていった技術。

 

 死に際の不意打ち──何度も何度も食らってきた。今更その程度に負けるわけにはいかない。

 

「く、はは……!」

 

 全身斬られ、トリオンを多く垂れ流すヴィザだがそれでも尚笑っている。

 

 不愉快な笑いだ。ここで、殺してや──

 

 

「避けろ!」

 

 

 ズア、と。

 

 俺の胴体を、砲撃のようなビームが貫いていった。

 

 

 

 

 

 


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