死神「突然ですが、あなたは六時間後に死にます」【短編】 作:死神さん
「突然ですが、あなたは十分後に死にます」
本当に突然の事。
目の前に現れたキミは、屈託のない笑顔でそう言った。
意味は分かる気がする。でも、理由は分からなかった。
☆ ☆ ☆
学校の帰り道。
「ねぇ、死神って知ってる?」
大学の友達との何気ない会話の中で、サークル仲間の一人がそんな言葉を落とす。
突拍子もなくまったく中身のない会話をする事なんて、大学生だとよくある事だ。
そんな事に時間を使ってる暇があると言った方が良いかもしれない。かくいう私もその一人なのだから。
「知ってるも何も、鎌持ったドクロってイメージの奴でしょ? ゲームとか漫画で出て来る奴」
大体敵キャラとして出て来るタイプの空想上の存在。
死を司るとか、人の命を奪っていくとか、そんなイメージを思い浮かべる。
「それがねー、死神って姿はなくて。その人が一緒にいて一番安心する姿になるんだってー!」
「何それ。まぁ、そういうの好きそうだけど」
この友人は根っからの女子って感じだから、そういうロマンティックなお話が好きなんだ。
そう思うと、彼女のそんな身も蓋もない話の理由も納得が行く。女子特有の───恋バナだ。
「私の前に死神が現れたら、どんな姿になるんだろうなぁ〜。やっぱり先輩かな?! んー、でも先生もぶっちゃけありなんだよねー。ねーねー、あんたは!」
ほらやっぱり。
食い気味に、少し目を細めて「分かってんだぞー」と笑いながら聞いてくる彼女を見て私は溜息を吐く。
「お母さんかな」
「つまんねー!」
けらけらと笑う友人の横で、私は一度咳払いをしてからこう続けた。
「だって、安心する人でしょ? 好きな人って訳じゃないと思うな。やっぱり家族とかじゃない?」
「そ、それはそうか……」
私がそう言うと、友人は口を尖らせて渋々と納得する。
彼女にはそう話したけど、勿論そうとは限らない。
私なんかは親と仲が悪い方だから、一緒にいて安心する姿というと間違いなく両親ではなかった。
「それじゃ、また明日ねー! 一限後サークルメンでカラオケだからねー!」
そんな事を考えながら、友人と別れる。
独りになって考える事はさっきの話の続きだった。
「死神……か」
一番安心できる人。そんなのは、一人しかいない。
それはさっきの友人でもなくて、勿論両親でもない。
友人にはバレていたようだけど、この歳なら経験している人の方が多い感情。
恋。
結構卑屈な性格をしていると自覚している私だけど、恋の一つくらい現在進行形でしている。
なんの面白みもない話だけど、相手は同じ大学の同じサークルの同級生。
まだ連絡先も交換していないけれど、サークルで話している間に徐々に一緒にいると胸が苦しくなってきたんだ。
なんの変哲もない、普通の大学生の普通の恋である。
「……あっ」
そんな事を考えていると、学校近くの駅に私の意中の人が向かっているのが見えた。
同じ大学だから偶然も別に当たり前なのだけど、少しだけ運命を感じる。
「もしかして……死神だったり?」
なんて、自分で言いながらふふっと笑った。
そんな訳ないのにね。
私と彼の関係は正直ただのサークルメイトである。連絡先も交換していない。よく話す方だけど、それ未満。
だから、態々話しかけるのは迷惑かな? とか。
でも話しかけないのも変だよね? とか。
そんな年相応な葛藤をしていると、彼の方から私に向かってくる。
「や、偶然だね」
屈託のない笑顔で、彼はそう言った。
あまり感情を感じないというか───いや、それだと悪口になってしまう。
少しミステリアスな雰囲気を感じさせる笑顔。高めの身長は、私の身長が低いからかとても大きく見えた。
「あ、っ、ぁ、ぐ、偶然だね!」
突然意中の人に話しかけられた私は、口籠って変な声を出してしまう。
失礼な事をしたかなと片目を瞑って彼を見てみるけれど、彼は特に怒る様子もなく首を横に傾けていた。
「今帰り?」
「うん。キミも?」
「うん」
短い会話。本当になんでもない会話だけど、頬が紅潮するのが自分でも分かる程顔が熱い。
あー、私は本当にキミが好きなんだなと再確認する。
もし本当に死ぬ時は、死神でも良いから彼に側にいて欲しいとも思った。
「今日はバイト休みなんだね」
特に話す事もなくて黙って電車を待っていると、彼がそんな風に口を聞いてくれる。
隣にいるだけでも幸せで心臓の鼓動も早くなるのに、話しかけてもらえるなんて私は幸せだ。
「う、うん。今日お父さんが家に来るから」
「へー、親が。……あれ? キミは親と仲悪いんじゃなかったっけ」
少し興味なさげな返事をしたかと思えば、彼は思い出したようにそんな事を聞いてくる。
私は幼い頃に母親を亡くして、父親一人に育てられた。
だけど、その父親は母が死んでから無職だし私に暴力ばかり振るし。
大学のお金もないから結局家を出て働いているけれど、バイト代を偶に取りに来る。
そんな話をサークルの時に少しだけ話しただけなのに、その事を覚えていてくれた事が嬉しかった。
「う、うん。お父さん働いてないし、私が頑張らなくちゃだから。……あ、ご、ごめんね! 変な愚痴言って!」
「いや。大変なんだね」
私が手をブンブン振って謝ると、彼は慰めるような声でそう言ってくれる。
「そんな親とは縁を切った方が良いよ」
そして、少し冷たい声でそう続けた。
「それは出来ないよ。だって私が全部悪───」
「出来るさ」
苦笑いの私に、彼ははっきりとそう言う。
なんで自信満々にそんな事を言えるのか。
「殺してでも、そんな親とは別れるべきだ」
「こ、殺してって」
「あっはは。冗談冗談」
「冗談かぁ」
いや、でもなんだか少し真面目なトーンなのが怖かった。彼は偶に変な雰囲気が出てくる。そんな所も好きだ。
「キミは家族で暮らしてるんだよね?」
「うん。両親と……妹がいるよ。妹がね、キミに似てるんだ」
「それ、私の事幼いって馬鹿にしてない?」
「してないよ」
「本当かなぁ」
妹見たいって思われてて、異性として見られてなかったら嫌だなぁ。
「あ、電車が来た」
話が逸れる。
そこから特に引き留めたり、話を続ける事はない。私達はただのサークルメイト。それ以上の関係には程遠かった。
「一限後カラオケだったね。それじゃ、また明日」
彼の降りる駅で手を振って、明日も彼とお話が出来るかもしれない事に頬が緩む。
そんな私を見て彼は笑った気がした。恥ずかしい。
「また連絡先聞き忘れたなぁ……」
なんて愚痴を吐きながら、自宅付近の駅に降りる。
そこまで来ると恋する学生気分という微睡みも消えて、現実が押し寄せてきた。
「お父さん……居るかな」
二階建てのアパートの二階。一番奥の部屋。それが、私の部屋。
ドアノブを回すと鍵が開いている。渡した覚えのない合鍵だけど、一体どこで作ったのか。
「おせーぞ、何してんだ」
扉を開くと部屋に座り込んでいた一人の男性がドスの効いた声を上げた。
どうも部屋は酒臭い。
「が、学校だよ」
「バイトは? 働いてないのか?」
「今日はお父さん来るって言ってたから」
「あー、そうか。そうだな。んじゃ、金渡せ」
今朝方電話が来て、何の用事かと思ったけど。案の定である。
無職の父は偶にこうやってお金を取りに来るんだ。
「えーと、このくらいで良いかな?」
カバンから財布を取り出して、生活に困らないくらい───あとカラオケ代とかを考えて渡せる分だけのお金を渡す。
いつもは五万円くらい渡すんだけど、明日少しお金を使うから今回は三万円。
私の手からお金を奪うように取ったお父さんは、お札の数を数えてから「はぁ?」と私を睨んだ。
「こんだけか?」
「ご、ごめんなさい。サークルのイベントとかあってそれで───」
「お前ばっか遊んで、そんじゃ俺はどうすんだ? お前が俺と遊んでくれんのかぁ?!」
机を叩いて大きな音を立てながらお父さんは立ち上がって私の手を掴む。
「きゃ───や、やめて!」
「お前が母さんの代わりになってくれんのか? あぁ?」
そのまま押し倒されて、お父さんは息を荒げながらそう言った。
お母さんは私の幼い頃、道路に飛び出した私をトラックから庇って事故死してしまっている。
全部私が悪い。
だから、私にお父さんを拒絶する権利はなかった。
私がお父さんからお母さんを奪ったから。
どんな暴言も、暴力も、何をされても文句は言えない。
───私が全部悪いから。
その日はお父さんの機嫌が悪かったのか、気が付けば日付が変わっていて。
「……泣くんじゃねーよ。萎えちまうだろ」
お父さんが落ち着く頃には、午前四時を回っていた。
私にそんな権利はない筈なのに、ベッドも枕も濡れていて。
苦そうな表情をしながら、お父さんは疲れたのかその場で寝てしまう。
全身が痛い。息を吐きながら、私はお父さんに布団を掛けた。
「風邪引いちゃうよ……」
私はお父さんにとってお母さんの代わり。これくらいしか出来ないし、きっと何をしても許されないと思う。
「お金、やっぱり五万円出せる……よ。ごめんね」
お父さんの財布にお金を入れて、私はゆっくりと立ち上がった。
「カラオケ……行けないなぁ」
鏡を見て、乱れた髪を触りながらそんな呑気な言葉が漏れる。
そんな権利はない。
私にそんな権利はない。
恋をする権利なんてない。
それを思い出しては身体を抱いてその場に崩れ落ちた。
なんで私は生きているの。なんで私が生きているの。
私が死ねば良かったのに。そしたらお母さんは死ななかったし、お父さんも悲しむ事はなかっただろう。
生きていても仕方がない。
私なんて死んだ方が───
「突然ですが、あなたは十分後に死にます」
本当に突然の事。
目の前に現れたキミは、屈託のない笑顔でそう言った。
意味は分かる気がする。でも、理由は分からなかった。
「え……」
扉は閉まっている。
周りを見渡して、もう一度見て見てもやはりキミはそこに居た。
午後五時二分。
まだ朝日も登っていない時間。
いつものような、屈託のない笑顔。
少し高い身長。私の好きな人。
キミは何故か、突然私の部屋に来てそう言う。
「……死神?」
お父さんが起きてない事を確認して、無意識にそんな言葉が漏れた。
「ははーん、貴女には私がそう見えるんですね。なるほどコレは面白い。そして貴女は何故か私が死神だと看破した。コレも面白い」
少し驚いた表情で彼はそう言う。
無意識に呟いた死神という言葉。
思い出すのは昨日の学校帰りの友人との会話。
そんな滅茶苦茶な言葉を、彼は肯定した。
だから、私はなんとなくだけど彼は本当の死神なんだと思えてしまう。
そもそも彼がこんな場所に来る訳ないし。彼は私の家も連絡先も知らない筈だ。
それなら、彼は死神以外にありえない。
「……私は死ぬの?」
「はい。十分後。えーと、正式には午前五時十六分二十二秒に死にます」
時計を見てみる。五時四分。あと十二分後の事だ。
流石に突然過ぎる。
「……なんで?」
「私には分かりません。ただ死ぬという事が運命付けられているだけで、実際どう死ぬかという事は定まっていないというか。……とりあえず、死にます」
とりあえず死ぬんだ。
少し頭がパニック状態で、もしかしてこれは夢なんじゃないかなって思ったけど。
身体に残る痛みがそんな事は無いと現実を叩きつけて来る。
それじゃ、やっぱり、私は死ぬんだ。
「自殺……かな」
「そんな急いで自分で死ななくても、十分後には運命が貴女を殺してくれますよ」
死神さんは少し困ったような表情でそう言う。
「だって、初めからそうするつもりだったから。そうじゃないなら、お父さんに殺されるか」
実際はどうだったかは分からない。
確かにこれまで死のうって思った事は何度もあった。
だけど、結局死ななかったし。死ねなかったし。
だけど、死神さんが言うには私は今から死ぬのだから。
「彼に会わなくて良いんですか?」
彼の顔をしたまま、死神さんはそう言う。
「……どうして、知ってるの? それに、死神さんはどうして彼の姿をしているの?」
「姿というか……。我々はあなた達とは存在している次元が違うので、端的にいうと姿というものはないんです。なので、あなたが一番安心する姿に見えるというか、見せている」
そう言ってから、死神さんは少し困った顔でさらにこう続けた。
「……ちょっとした手違いで、あなたの事を知りました。なんというか、運命って面白い」
「手違いなんだ」
「手違いです。ミスではないです」
手を横に振る死神さんは、なんだか焦っているよう。それが面白くて、私は少し笑った。
ていうか、馬鹿らしいと思ってたけど。友人の死神の話が本当だった事がとても面白い。
良い話のネタになりそうだけど、この話を誰かにする事は出来ないのだろう。だって、私はもう死ぬんだ。
「……結構達観してますね。基本、あなたは死にますって言いにいくと信じなかったり、慌てふためく物なんですけど」
「あはは……。だって、そのつもりだったから」
怖くないかといえば嘘になる。
母の死を目の前で見て、死への恐怖は知っていたから。
でも、そんな事より───
「……後悔はないんですか?」
「あるよ」
───その事で頭がいっぱいだった。
ダメだって分かってる。でも、私だって恋をしたかった。
彼の事が好きだから私は泣いたし、本当はお父さんにお金を全部渡しちゃうのも嫌だった。
「でも、もう時間もないし。連絡先も知らないし」
「そうですね。……でも、運命って結構面白いんですよ。神ってのは粋な計らいをする。もし私のミス───あ、いや手違いがなければこんな事もなかったでしょう。もし六時間前、私がここに来ても貴女はそれどころじゃなかったでしょうし」
死神さんが何を言っているのか分からない。
ただ、同時にインターホンが鳴る。
私は死神さんと扉を見比べた。
死神さんは笑顔で「時間がないですよ」と呟く。
少し迷って扉を開いた。
その奥には、背中を向けていたキミがいて。
「突然だけど、話があるんだ」
振り向いたキミはいつもの屈託のない笑顔でそう言う。
「ぇ……。うん、分かったよ」
一度自分の部屋を覗き込んだ。彼と同じ顔をした死神さんは、笑顔で私達を見ている。
お父さんは部屋の奥で寝ているから、ここからなら彼にも見えない。
多分大丈夫。
「話って……?」
時間は五時九分。あと七分。
人はいつ死ぬか分からない。
お母さんが突然死んだ時みたいに、私も突然何故か死んでしまうんだ。
彼に迷惑をかけるかもしれない。彼に辛い思いをさせてしまうかもしれない。
だけど、後悔したくないから。
今生きてる時間を大切にしたい。
「……僕はね、ずっと君の事が気になっていた」
少し歯切れ悪く彼はそう言う。心臓が弾けそうになった。
もしかしたら、もしかしたらなんて思ってしまう。
同時に私はもしかして嬉しくて死ぬんじゃないかとか馬鹿みたいな事を思った。
そんな呑気な事を思っている私の目の前で、彼はポケットから包丁を取り出す。
「え」
時間が止まったようだった。
意味が分からない。
どうしてキミが?
そもそもキミはなんで私の家を知っているの?
連絡先もお互いの住所も知らない筈なのに。
どうしてキミは今ここに居るの?
ふと振り向くと、死神は驚いた様子で───だけど笑っていた。
「あ、そういう事だったんですね」
どういう事……?
「妹に似てるんだ……キミは。気になって仕方がなかった。キミの家族の事も調べたよ。キミが父親に苦しめられているのもね」
「ま、待って。それは違う!」
昨日の学校帰りの事を思い出す。
──殺してでも、そんな親とは別れるべきだ──
「大丈夫。キミが出来ないなら、僕がしてあげる。死神は僕は死なないって言ってたから、絶対に殺せる。今日死ぬのはキミの父親だ。ここに居るんだろう? なぁ、死神……」
どうしてキミがそんな事まで知っているのか、死神の事まで知っているのか。
そんな事はどうでも良い。
私を押しのけて、彼は部屋の奥に入った。
このままじゃお父さんが殺されてしまう。
違う。死ぬのは私なんだ。
「やめて。やめて……っ!」
目の色を変えて包丁を握りしめる彼を後ろから羽交い締めにしてとめる。
だけど、やっぱり男の子の力は強くて。私は簡単に引き剥がされてしまった。
「運命は僕が決める。……邪魔するならキミも殺す」
声を上げて包丁を振り回す。初めて見るキミの表情。
優しくて、それでいて危なっかしい。
「……死ね」
お父さんに向けて振り下ろされる包丁。
五時十四分。
無意識だった。
お父さんの上に覆い被さるように飛び込んで。
身体が熱い。痛い。
「……なん、で」
キミは信じられないと言いそうな表情でその場に崩れ落ちる。
あぁ、私死ぬんだ。
「人殺しなんて……だめ、だよ」
死にたくない。
このままじゃ、キミを人殺しにしてしまう。
キミが好きだ。お父さんの事も好きだ。
二人共私にとって大切な存在だから。
殺させない。
地面に落ちた包丁を拾う。
朦朧とする意識の中で、それを首元に押し当てた。
「ま、待て……待ってくれ。違うだろ。なぁ! そうじゃないだろ?」
運命というものがあるのなら、それはきっと残酷な物だと思う。
どんな選択をしても、どんな行動を取っても、結局辿り着く場所は一緒なのだから。
だけど、もしこれが運命じゃないのなら。自分で選んだ結果だとしたら。それはとても素敵な事だと思うんだ。
だから私は笑う。
だから私は───
五時十六分。
「キミが好きです」
───自分の喉を刺した。
「間違いなく、それはあなたの選択ですよ」
☆ ☆ ☆
「なぁ、死神。……お前は今朝、あそこに居たのか?」
振り向いた先に居るキミに向けて、僕は端的にそう聞く。
「突然ですが、あなたは十分後に死にます」
まるで幽霊と見間違えるようにキミとそっくりな姿のソレは業務連絡のようにそう言った。
「驚いた?」
「はい。まさか彼女が貴方の恋路の相手ではなく殺意の相手だったなんて」
「殺意……とは少し違うのかな。寂しかったんだ。彼女と一緒になりたかったんだ」
「だからってバラして家に持ち帰ろうと?」
さて、どうしようとしていたんだろう。
自分がおかしい事くらいは分かっていた。少なくとも正気ではない。
「妹がいたんだ。初めて死神を見た時、妹の幽霊だと思った」
「そう言う人は結構いますね」
ただ、そんな事を信じられる程おかしくなった訳じゃない。
それでも死神だという事は信じるしかなかったけど。
「幽霊という事は、妹さんはなくなっているんですか? 両親は亡くなったと言っていましたけど。妹さんの事は何も言ってなかったですよね」
「妹はね、両親に殺されたんだ。……僕はね、それが許せなくて両親を殺した」
僕がそう言うと、死神は驚いたような表情をしてから何かを思い出したように「あー」と呟く。
「あの異臭……腐ったカップラーメンじゃないですね?」
「うん。父さんと母さんと妹だよ」
「澄ました顔で凄い事言ってますよこの人」
だから覗かれたくなかったし、騒ぎを起こして誰かに勘付かれるのも嫌だった。
最初はこの死神の事も家に入れてから殺すつもりだったけど、触れる事も出来なくてそれは諦める事に。
「なぁ、死神。僕はなんで死ぬと思う?」
「私には分かりません。ただ死ぬという事が運命付けられているだけで、実際どう死ぬかという事は定まっていないというか。……とりあえず、死にます」
業務連絡のように、昨日聞いたような言葉が繰り返される。
ただ、それは僕が欲しかった言葉じゃなかった。
「違う。死神さんは僕がどうやって死ぬんだと思うか、予想を聞いてるんだ」
「予想ですか……。なんでまた」
「運命なんて知らない。僕の生き死には僕が決める。決めたいから、かな」
あの時自ら命を絶ったキミのように。
たとえ死ぬ事が確定していても、それまでの道くらいは自分で歩きたい。
そうじゃなきゃ、生きてる意味なんてないじゃないか。
「それじゃ、そうですね。貴方は自殺します」
「絶対にしない」
笑いながら、僕はポケットから血だらけの包丁を取り出す。
これで死ぬのは簡単だ。でもそんなの、つまらない。
「何を───」
「殺してやるんだ。なぁ、この場に他に死神は居ないんだろ? なら、僕以外誰も死なない筈だ。それでも僕が誰かを殺せたら、それは……どういう事だと思う?」
そうとだけ言って、僕は周りに集まる警察の元に歩く。
大声を上げて包丁を振り回す僕を見て、警察は拳銃を取り出して構えた。
「人間って、面白いなぁ」
突然ですが、あなたは死にます。
その時あなたは何をしますか?
作品の補足みたいなお話でした。
六時間後の主人公ですが、実は両親を殺していてその後女の子の死はこんな感じだったよってお話です。
始めのお話を書いていた時と少しだけ構想は変わってるんですけどね。ほらやっぱり、気分って大事。
結局何が書きたかったかというと、今を大切に生きようねって。ただそれだけです。
もし運命があるのだとしても、今この道を歩いているのはあなただから。
それでは読了ありがとうございました。