機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-02 迫り来る脅威(6/7)

上昇を始めた戦艦《フレイヤ》。

勿論アレハンドロは、この《フレイヤ》の上に立ち、戦っている。

『敵機捕捉!』

パーディの声が響く。

アレハンドロもまた見ていた。謎の暗い煙の中から顔を出す、

奇妙なモビルスーツを。

煙に紛れてよくは見えないものの、

相手が所謂ガンダムタイプの顔つきで、しかも顔の半分が、

剥(む)き出しの頭蓋骨のような特異な形態であることだけは、

辛うじて窺えた。

「……食らえ!この野郎」

吠えたアレハンドロ。 頭上に向けて放つ。放たれたものは、

胸からは太く赤い光を放つ複相ビーム砲、

首筋に乗ったマグヌス・バラエーナとの銘を持つビーム砲、

前腕部と額から計6発のビームガン、そして例のミサイル。

上3つは直線を描く為、まるで目標に当たらなかったが、

ミサイルだけは逃げる標的を追っていく。

もっとも、敵は直前でイカやタコが墨を吐くように、

更に煙を口から吐き出す。これで完全に見えなくなった。

しかも追っていた2発のミサイルは一瞬煙の中に紛れたかと思うと、

次に姿を現したのは、何故だか地面へと落ちていくところだった。

「……はっ?」

こうしてアレハンドロは、地上へと降下していく、

この奇怪なるガンダムを目撃したのだった。

『……イヒッ』

ソイツは通り過ぎる一瞬、アレハンドロは聞いた。

無線越しに届いた笑い声を。甲高い女の声だった。

「気味の悪いヤツだな。けど、下には……確か……」

アレハンドロは下を確認しようとしたが、その余裕はなく、

《アビス》の両肩のシールドにビームが当たり、向き直る。

高度を上げていた《フレイヤ》には、

もう宇宙空間がすぐそこに見えていたのだが、

ビームを撃ってきた相手は、その宇宙空間にいた。その姿は、

「何だありゃ……ダガーか?」

アレハンドロの言う通り、その形態は旧地球連合などが運用した、

モビルスーツの《GAT-01 ストライクダガー》に酷似している。

カラーリンクは赤を主体にしてアクセントに黄色を使ったもので、

《ダガー』と異なり、目は一つ目であるが。

「とりあえず……食らいやがれ!」

複相ビーム砲を再度撃ち込むと、このダガー風の機体は、

右に避けた。コロニーの外壁の関係で、

アレハンドロ、ひいては《フレイヤ》から見えない位置へと。

同じ頃、《フレイヤ》から続々とモビルスーツが展開されていく。

その中に、3つの樽のごとき兵器を背に乗せた、

航空機型の《ZGMF-X24SR ベルデカオス》という、

機体を見つけたアレハンドロは、回線を回した。

「サム!……さっきのヤツ、追いかけてくんねぇか?

下は副長一人だからよ」

『……了解した』

その後、カオスは機体を斜めに傾けながら、《フレイヤ》を離れ、

徐々に高度を下げていった。




こちらの戦場に視点を戻すとして、
《ドミンゴ》は飛び上がり、接近してくると共に、
大きく刃を振り上げる。こちらも飛んで回避しようとしたが、
近すぎて、避けられる高さまでは飛べなかった。
かつ、敵もそのまま斬りかかるように見せて、
ギリギリで目的を変えて、サーベルを大きく振りかぶってくる。
銛(もり)で突くように落ちてきたビームサーベルは、
当たらなかったものの、こちらを後退させた形となった。
とはいえ、こちらもムザムザやられた訳ではない。
ライフルでヤツの顔を撃った。
完全には命中しなかったが、煙を上げたところを見るに、
もう右耳のビームガンは使えまい。
このあと、サーベルが俺より先に地面に落ちた。
次いで、俺の《Im/A-P》の足が地面につき、《ドミンゴ》はその後。
《ドミンゴ》は腰に手を宛てていた。
居合い切りのように、抜刀と共にこちらへ斬るつもりらしい。
ただ、刀を振る一瞬、ヤツのコクピットが顕(あらわ)になる。
ビームライフルが期待できるのは、その一瞬だけ。
ビームガンでは角度的にコクピットは狙えない。シールドが邪魔で。
むしろ下手な部分に当てて、
煙で視界を遮(さえぎ)られようものなら、かえって不利だ。
相手が下手なパイロットなら、前に出てビビらせる手もあるが、
近すぎて間に合わないだろうし、
むしろ、別の動きをしようした隙に、そのまま斬られかねない。
逆に引き下がるにしても、
このシルエットの《Im/A-P》の機動力では逃げ切れまい。
……ここまで来たら、一撃に賭けるしかない。全く嫌な時間だった。
時の流れるのが遅すぎる。心臓の音も心なしか煩(うるさ)い。
ようやく、敵の手が動いた瞬間に、俺が動かしたのは右手じゃない。
左手だ。敵の抜刀する腕。敵もこちらの武器を警戒しているのだろう。
丁度、腕が邪魔になって、右の銃ではコクピットが狙えない。
だから左腕を動かした。スカート部に手をつける為に。
左側についていた四角いパーツを取り外す。
下の部分をスライドさせると、そこの部位がグリップになり、
中にあったトリガーが現れる。ビームショートライフルだ。
流石に《ドミンゴ》も予想外だったろう。気持ち動きが遅れた。
ほんの1秒あるかないかだったが。
ともあれ、その一太刀は確実にこちらへと振り下ろされ、
また、こちらの一撃もまた確実に放たれて……

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