機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
《ドミンゴ》と俺の《Im/A-P》との戦いの、その後について。
右肩から斜めに機体を切り裂く、所謂袈裟(けさ)斬りで、
こちらの機体は胸に大きな傷を負ったが、ほんの1歩、
踏み込みが浅かったおかげで完全には切断されなかった。
ただし、それはこちらも同じこと。
咄嗟の機転で武器を持ち換えたことで、狙いをつけ切れず、
折角命中した一撃も、パイロットにはダメージを与えられない。
とはいえ、
ビームは相手の喉(のど)に風穴を空けた末、スラスターまで貫通。
次いで、バックパックが誘爆した。
《ドミンゴ》の背中に煙が上がる中、こちらは距離を取った。
10メートル、あるいは20メートル程度、相手から離れ、
2丁のライフルを相手には向けつつ、相手の様子を窺(うかが)う。
バックパックが誘爆したといっても、そこは燃料系統だ。
実体兵器をほぼシャットアウトするフェイズシフト装甲により、
本体へのダメージはない様子。背中が赤い火柱を立てる中、
爆発の衝撃きよりやや前傾姿勢になっていた《ドミンゴ》が、
ゆっくり上半身を上げていく。
さっきまで握っていたサーベルは、刃を形成していない状態で、
《ドミンゴ》の足元に転がっていた。
次の瞬間、ヤツは両手のサブマシンガンを乱射した。
さっきはそんなもの持っていなかったのに。
左のショートライフルが破壊された。
急遽(きゅうきょ)、俺は左腕にビームシールドを展開する。
この後、敵を確認したところ、
両足についた黒いコンテナが開いているのが確認できた。
恐らく、ここにサブマシンガンがあったのだろう。
ひとまず、右に避けて、ビルに隠れた。
ビルごと撃ち込んでくる可能性も考え、
ゆっくりと移動するが、こちらが隠れたタイミングで、
銃声は止んでいた。
『民間施設を盾に使うとは……
どちらがテロリストか、分かったものではありませんな』
相手の《ドミンゴ》のパイロットの言葉だろうか。
そんな声が聞こえた。足下にはまた死体が転がっていた。
モビルスーツの目から見れば、人形のように小さい死体が。
「……言えてるな」
ゆっくりと目線を上げていく。右側から足音が近付いている。
《ドミンゴ》のものだろう、そう速くはない。
右側からもショートライフルを抜き、左に持ち換え、
これで左側を警戒しつつ、右側は右側でライフルを。
なお、顔は右を向いていた。
右から敵が来れば、ビームガンでも攻撃できよう。
数秒後、足音は止む。
遠目にだが、ビルの隙間からヤツの片足のつま先が見えている。
「……面倒だな」
警戒して2、3秒と。《ドミンゴ》は動かなかった。《ドミンゴ》は。
途中から頭はビルの上に向けた。飛び越えてくることを警戒して。
しかし、ドミンゴは動かない。
動かないまま、さっきと同じ声の言葉が聞こえ始める。
『鹿を追うものは、山を見ず……でしたか?』
……言い訳がましいが、
俺はけして他の敵を警戒していなかった訳じゃない。
レーダーは常に確認していた。
敵・味方を問わず、モビルスーツの動きは捉えていた。確かに。
ただ、俺にひとつのミスがあったとすれば、
それは疑わなかったことだろう。
アレハンドロのミサイルが落ちたとき、
異常な速さで地上に降り立ち、やがて消えた謎の機体の存在を。
音に気付いて振り返ったときには、もう遅かった。
ビームの刃で形成された鋭い爪が振り上げられ、
そして振り下ろされた。左腕が切り裂かれ、破裂される。
一気に機体を後退させて、
ビームガンとライフルと、左のショートライフルまで向けて、
乱射したものの、
相手の圧倒的な機動力の前に、まるで命中しない。
『……ねぇ?』
女の声が聞こえた。
根拠はないが、向かいの相手のパイロットのような気がした。
ヤツの太股部分から、細長い管状の砲口が現れると、それは、
こちらへとビームを撃ち込んできた。
左足は被弾しなかったが、
ライフルを構えていた右足は引っ込めるまでに時間がかかり、
こちらの足首が被弾。バランスを崩した。
そこから先、俺が後退(あとずさ)る瞬間に、
ヤツはまたも口から例の煙を吐き出した。
割に至近距離であったもので、周囲が煙に覆われてしまい、
まるで周囲が見えない。
『……アナタの最期を見せて』
女の声は笑っていた。さっきと同じ女の声だ。
そんな声が聞こえて間もなく、煙の先からあの爪が現れて……