機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
いつ回収したのか、先程までその辺に転がっていたサーベルが、
今はまた、その手に握られている。
とにかく立ち上がった。しかし、例の下手物モビルスーツも動く。
急接近してきたかと思えば、先程までビームを撃っていた指先に、
今度はまたクロー状のビームの刃を形成。
引っ掻くように、すれ違い様、振りかざしてくる。
体を捻って避けようとしたが、やはり性能の差。
ヤツの圧倒的なスピードを前に、
完全には凌げず、右肘を切り裂かれてしまう。
ビームライフルを落としてしまったし、右手はもうダメそうだ。
『……ここまで、ですね』
やはり、《ドミンゴ》のパイロットなのだろう。
さっきと同じ男の声で、そんな声が流れてくる。
「こんなところで……死ねるかよ」
俺は苦笑した。背中のバーニアに火をつけて、
飛び魚のごとく機体を無茶苦茶に前進させた。
プラズマ対空砲を撃ったが、角度が悪く、
《ドミンゴ》の右の肩口を一発掠めるのみで、ダメージにはならず。
次いで勢いに逆らって顔を上げて、ビームガンを乱射すれば、
《ドミンゴ》の左足を下から穴だらけにしてやれた。
とはいえ、流石にそれが限界だった。
振り下ろされたサーベルのビーム刃に、首を落とされた。
それは、介錯のような一撃だった。
切り落とされた《Im/A-P》の首は、見たことだろう。
クルクルと回りながら飛んで、下手物モビルスーツの傍らを、
ヤツの動く目に追われながら通りすぎ、やがて落ちるまで。
暗がりだった街が炎上する様と、降下するサムの姿と。
頭を失った体は再び地へと叩きつけられた。
今度は頭がないからか、両手と片足を失った体は腹部から落ち、
左手で庇い手はしたが、見えていないせいで上手く機能せず、
結果は手を曲げられ、腹打ちすることに。
その衝撃で俺の体も押し出され、ハッチの壁にぶち当たった。
ヘルメットが割れ、割れたガラスが皮膚を切ると、
額からは血が流れた。
《ドミンゴ》はそんなこちらの胴体を踏みつけている。
そんな中、
『……聞こえるか?50万人のアーモリー・ワン住民の諸君』
の一言が聞こえてくる。声の主は宇宙の上だろう。
「ク……」
と言いかけたところで、《ドミンゴ》のパイロットの、
『始まりましたか……クールカ隊長の「演説」が』
という声が聞こえた。俺がヘルメットを外したところだった。
脱ぎ捨てられたヘルメットが足下を転がっていく。
付着した血を撒(ま)き散らしながら。
『これで終わりだと思うなよ?偽善者どもめ!』
右、左と両手の手袋を取り、右手で傷口に触れた。
『我々は何度でもやってくる。
ラクス・クラインが、その地位を降りない限りな!』
右手を目前のキーボードの上に力なく下ろした。
その手は勿論、血で赤黒く染まっている。
外で何かがぶつかる音がする中、手元に目をやると、
少し手を動かし、血に汚れたキーボードを確認し、
ブランと下げるような形にはなったが、手を置けた。
そこを触ることは、ひとつのスイッチとなる。
両手と右足と、更に首まで失い、地面に伏せるIm/A-Pから、
上半身と下半身が分離、
コクピットの周辺部分だけが、翼の畳まれた戦闘機の形で、
その場に残される。
分離した上半身は《ドミンゴ》へとぶち当たると、
下半身も下半身で例の下手物の方に飛んだとのこと。
とはいえ、流石にこちらは避けられてしまったが。
勿論、ただの航空機もどきだ。ダメージにはならない。
ぶつかった衝撃に、体勢を崩した程度だろう。
それでも、『演説』を傾聴中で、
隙の出来た敵への嫌がらせにはなったろう。
要らぬ部分がなくなったお陰で、
かえって戦闘機のキャノピーから外の様子が見えるようになった。
当然、そこにサムの姿も見えた。
「サム……戦艦に戻れ!オマエ一人で、どうにかなる相手じゃない」
などと啖呵を切ったものの、当のサムから返事がない。
「……おい!」
ようやく返ってきたのは、
『……ちょう……ま……んて』
などという途切れがちな通信だった。