機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
と漏らしつつ、《ドミンゴ》は退いていった。もう1機もそれに続く。
去り際、下手物モビルスーツのパイロットとおぼしき女性の声で、
『また会いましょう……優しい「お兄ちゃん」』
と、そう言い残したのである。
記憶を覗かれたような不快な感覚と共に、ゆっくり目を開けた。
だらしなく背もたれに身を預ける自分。
暗い室内で、電源の落ちた黒い画面を見つめていれば、
そこが鏡のようになって俺の顔を写し出した。
額からダラダラと血を流している。
思い出したのは、
足で踏んで割った鏡に映った自分の顔だった。
もっともあのときは、より悲惨な顔に見えたが。
なお、その後、この奇怪なモビルスーツは何を思ったか、
《カオス》に接近して、しかもダメージを与えた右腕を突き出し、
体当たりした。腕に仕込まれていたビーム兵器が誘爆したようで、
インパクトの直後、突然、爆発が起こった。
モビルスーツ形態に変形した《カオス》。
右腕を失い、各部が損傷したが、相手の機体も傷付いた。
前面装甲が剥がれ、コクピットが顕(あらわ)になる。
サムはビームライフルを向けようとして、
コクピットを確認したところ、中にいたパイロットは、
パイロットスーツと、前傾姿勢の為によくは見えなかったというが、
血のように真っ赤な口紅が塗られており、女性らしい。
しかも、笑っていたというのだ。口が裂けるのでは、と思う程、
大きく開けながら……
《ガイア》は角度を調整し、両肩についた2門のビーム砲を、
(正確にはビーム突撃砲「スプンタ・マンユ」というのだが)
近くの《リックドム》へと放ったが、外してしまった。
とはいえ、犬のような頭部にも、2本のビームの牙が覗(のぞ)く。
そのまま直進し、例の《ダガー》もどきの方へと向かう。
それから数秒後、
《ガイア》と《ダガー》もどきの間合いが詰まるより前、
《ドミンゴ》が現れたのである。左腕をなくし、
右の肘より下をプランと下げた《ドミンゴ》が。
『お待たせしました……クールカ隊長』
俺が聞いたのと同じ、男の声。《ドミンゴ》のパイロットからで、
その後の経緯を踏まえれば、例の《ダガー》もどきのパイロットへ、
だったのだろう。もっとも当のクールカは、
『……あぁ』
と、そう曖昧(あいまい)に言葉を返すに留まった。
時を同じくして、
クールカと《ガイア》の間合いもほぼ詰まった。
《ガイア》の機動力はかなり高いのだが、相手が悪かったのだろう。
進みながら放っていたスプンタ・マンユを全て回避された挙げ句に、
すぐ目の前まで来たところで、飛んで避けられ、
そのまま背中の上に片足でのし掛かられてしまった。
続いて、アレハンドロの《アビス》がビームガンを撃ち込めば、
狙われた《ダガー》もどきは《ガイア》を足場にして再度飛び、
距離を取る。
起き上がり子法師(こぼうし)とばかりに、《ダガー》もどきは、
ビームライフルを撃ち込むも、
その放ったビームの一閃は《アビス》には当たらなかった。
『クッ』
と苦笑気味に歯噛みしたのはクールカ。
次いでビームライフルをかなぐり捨てる。
『急げ、ホルローギン。ヤツは……』
《ダガー》もどきのスラスターに火がついた。
ビームサーベルも抜いた。
『……私が足止めする』
次にコイツは、ビームサーベルを握った右手を掲げ、
それに左手を添えた。そして、手首を返す。
『さっきは偉そうに講釈(こうしゃく)垂れやがって!
所詮は民間人を虐殺するテロリストのクセに、
どの口が言うんだ、どの口がぁ!』
アレハンドロが叫ぶ。
ビームガンを撃っていた右手の穴にビームサーベルを抜き、
ダランとぶら下げる。メインカメラのビームガンを乱射しつつ、
クールカは高速でアビスへと歩み寄ってくる。
「……来た」
間合いが詰まり、右上方向から左下へと振り下ろす一太刀に、
アレハンドロがビームサーベルにて応戦。
鍔迫り合いとなる。すると、1度クールカが引き、
今度は突きの動作で前に出てきた……