機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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──C.E.80年7月14日締結、バスティーユ条約。
西ユーラシア連邦の大統領、
エルキュール・リヨン・サン=ピエールの仲介で、
フランス革命の引き金となった歴史的大事件に合わせ、
締結された本条約は、
プラント最高評議会議長アンドリュー・バルトフェルドと、
大西洋連邦大統領ウォルター・サトクリフが、
バスティーユ・オペラハウスで共にオペラを鑑賞、
後に握手する場面がメディアに取り上げられると、世界中で、
『因縁深き2か国が歴史的な和解を果たした』
と報道されたが、その内容は手放しに称賛できる話ではない。
プラントの国民を大西洋連邦リンカーン市へと、
国費による移住計画が採択されたが、
コーディネイター人種の保護の名目で、
渡航の実質的な制限および管理も採択されており、
また、おおよそ連邦の中央部に位置するこの都市への移住は、
かつてユダヤ人を強制的に住まわせたゲットーのような、
被差別部落の設置に他ならないとの批判の声も挙がっている。
他にもいくつかの協定が結ばれたが、
そのうちのひとつが、『公海での戦闘の禁止』であった。
ここでいう、海には単に地球上にある海だけではなく、
宇宙空間のことも含まれる。これを遵守(じゅんしゅ)する限り、
国家は互いの領域外で戦闘を行うことはなくなり、
必然的にどちらかの国が領域を侵害したか明確となる。
その意味では確かに画期的な条項ではあったのだが、
そもそも国家として認定されないテロリスト相手には無力であり、
むしろ公海まで逃げたテロリストを追跡できないという、
デメリットすらあり、現在、問題視されているが……


PHASE-04 波の間に(1/7)

……折り畳んだ紙の新聞に一頻(ひとしき)り目を通すと、

俺はそれを荒っぽくテーブルに投げ捨てた。

あの戦いの後、大破した《Im/A-P》ごと『フレイヤ』に回収され、

それから既に数時間、

俺は『フレイヤ』の待合室のソファーに腰を下ろしていた。

「……ハァ」

と俺は溜め息を漏らした。 

「どうにかならないんすかねぇ……公海の話は」

向き直ると、アレハンドロは翼を広げるように肩を上げ、

腕を背もたれの上に乗せている。

「こういうの……何て言うんすかねぇ」

そう言い、後頭部をかきむしるアレハンドロ。

「なんか……考えませんか?脱走兵の連中はどこから来たのか」

言葉の意図が分からず、俺はしばらく黙っていた。

「どこからってのは、つまり、あれっすよ。

連中の本拠地っていうのか、補給はどことか、そういう……」

言葉に合わせ、両手首をクルクルと動かすアレハンドロ。

その様はまるでペンギンのようだ。

「……わからないことはねぇが」

直後、テーブルに紙が叩きつけられる音に、俺は顔を上げた。

「少し……調べたんすよ。それ」

それは、一束にまとめられた数枚の紙だった。

ゆっくりとこれを自身の方に寄せ、胸の前辺りへ。

一目、添付されていた写真で分かった。

頭蓋骨(ずがいこつ)が剥(む)き出しになったような、

頭部左側に埋め込まれたレドーム。

そして、青っぽいグレーと茶色からなるカラーリンク。

ヤツだ。市街地で戦った……

「……《GAT-X272 ダーティ》」

アレハンドロの声に反応し、俺は相手の方に顔を向けた。

「大西洋連邦が開発した実験機です。

コンセプトはガンバレルの操作性向上と《デストロイ》の小型化」

《デストロイ》。正式には《GFAS-X1 デストロイ》。

20mそこそこのモビルスーツの中で、50m越えとバカでかい体で、

身体中に火器を内蔵した、モビルアーマー以上の戦略兵器。

そう言われれば、確かに似ている。

分離してビームを放つ両手もそうだし、下半身についた顔など、

《デストロイ》のものによく似ていた。

「このデータじゃ、いくつかの実験の後にパーツごとで解体されて、

売却されていたことになってますけど……

恐らくはそのままの形で流れされたんでしょ。脱走兵に」

顔はアレハンドロに向けたまま、目線だけ下ろして、

用紙の内容を確認する。 

「そういや、ここから近いっすもんねぇ。大西洋連邦の『オバマ』。

……こりゃ、闇が深いかもっすなぁ」

また溜め息が漏れた。 

「……俺にどうしろってんだ」

片手で覆い、顔を伏せた。

「どうって……そりゃ、選ばなきゃダメでしょ?

この先、どういう選択をするのか……」 

俺は顔を上げない。

「……いっそ、一緒に脱走兵へ行きますか?」

ふと見ると、アレハンドロは冗談っぽく笑っていた。

「……不謹慎(ふきんしん)だろ?まったく」

呆れ気味に、しかし俺は俺で笑ってしまった。

「さぁーせぇん……」 

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