機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-04 波の間に(6/7)

「……あぢぃ」

と漏らし、手を団扇(うちわ)のように動かすアレハンドロは、

軍服の胸元が開き、髪も多少乱れている。

顔も、汗の跡なのだろう、輝いて見える。

そんな彼がモビルスーツデッキから食堂に至る通路を、

如何にも気だるそうに歩いていると、一人の女性が現れる。

対照的といえる程、堂々と胸を張り、歩いてくる彼女。

一歩進む毎に、そのほとんど白っぽい銀色をした髪のうち、

唯一金髪で、鳥のクチバシのように垂れた右の前髪が、

右へ左へサッサッと揺れて、そこから彼女の右目が見え隠れする。

「……おおっ!サム」

アレハンドロがそう手を挙げれば、

「ああ」

と相手も返事を返す。

「パーディのヤツ……見てないか?」

「パーディなら……さっき食堂で一緒だったが?」

「……どうだったよ?」

サムが首を斜め下へと振った。前髪がまた揺れて、顔が隠れる。

表情が見えない程に。

「正直……元気そうとは言えないな。

顔色も悪かったし、食欲もないみたいだった……

本人はダイエット中だと強がってたが」

「やっぱ……そうなるよなぁ」

アレハンドロの顔も自然下を向く。

「ハサン先輩だけじゃなくて……4人も仲間が殺られたんだ。

無理もねぇか」

サムが小声で、

「……すまない」

と言葉を続けた。

「何でサムがあやまんだよ……全く」

アレハンドロは笑いかけるが、サム表情は硬い。

居たたまれなくなったのか、そこからアレハンドロが歩き出して、

サムとすれ違い、更に数歩、互いに振り返りもしない。

ただ、すれ違う間際、アレハンドロは顔を見れなかった分、

視線が下がっていたのだが、するとサムのボトムズのポケットから、

タバコの箱が顔を覗かせているのに気付いた。

なお、銘柄はラッキーストライク。

ただ、サムは喫煙者ではない。何故そんなもんを、

とアレハンドロは考えてながら、目線を上の方に移していく。

そんな中で、サムが尋ねた。

「今日も、朝練(あされん)か?」

「あぁ……実戦やって、色々思うことがあったんだよ。俺も」

苦笑がちに、アレハンドロが首だけ振り返る。

「まあ……ちょっと、今朝は張り切りすぎたかも」

丁度、アレハンドロの首筋を一滴の汗が流れていった。

「……アスカ副長に勝つ、だったか?」

「まあ……それもあるんだけど」

アレハンドロは首を元に戻した。

奇しくも、それはサムが後方を確認するよう横顔を向ける、

ほんの1秒程、前のことだった。

「サム……オマエ、アーモリー・ワンの戦い、手ぇ抜いてたろ?」

横顔だけで見ていたサムが、体ごと向き直った。

頭の先から爪先に至るまで、サムの体は今、

アレハンドロの方を向いている。

鋭い眼光がアレハンドロに向けられているが、

向けられた方はそれを知ってか知らずか、特に反応しない。

「……何だ?急に」

「いや……別に?……ただの直感だよ?」

サムが首を斜めに振ると、また前髪が頭から少し離れて、

浮いたようになる。

丁度、毛先がアレハンドロの方に向いているせいか、

猛禽類(もうきんるい)のクチバシが獲物を狙っているかのようだ。

そんな気持ち前傾姿勢でもって、アレハンドロに告げる。

「オマエは私を買い被り過ぎなんだ……」

と。そこまで言うと、サムは今度は頭を上げ始めた。

「それとも、まだ……

士官学校の卒業成績で負けたことを、根に持ってるのか?」

呆れたように笑うサム。

「うるせぇ……言うなって、それを。マジで萎(な)えるから」

後頭部をかくアレハンドロ。

「自分では、もう少し出来ると思っていたんだがな。

その点、副長には驚かされた。あんな戦い方があるものか、と。

……レベルが違うと、言わざるを得ないな」

「……でもよぉ」

アレハンドロが首を後ろに振った。

上を向いているらしいその顔は、サムの位置からは見えない。

辛うじて見えるのは、ヤナギの葉みたく垂れた髪と生え際ぐらい。

「いつかは来るかもしれねぇ……

俺たちだけで、戦わなきゃいけねぇときが」

サムの目が少しだけ大きくなった。

「そう……だな。ところで……その副長だが」

アレハンドロの顔がサムの方に向いた。

「どこにいるか知らないか?少し、聞きたいことが……」

「あぁ、それなら、さっきまで待合室に……」

そんな話をしていると、突然、

『……アスカ副長、ギドー大隊長がお呼びです。至急、艦長室へ』

とのアナウンスが流れて……

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