機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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その頃、彼は食堂にいた。洗面台の前に立っている。
二日酔いで痛む頭を抑えながら、卵を割り、コップに入れる。
ウスターソース、タバスコ、ケチャップ、酢、胡椒(こしょう)、
適当にその辺りのものを足して、
「……健康第一」
と言い聞かせ、半ば無理矢理喉(のど)に通す。
タバスコの量が多かったのか、少しむせた。
顔を上げ、鏡を見つめる。
その表情はまだどこか疲れたものには見えるが、
昨日よりはまだ血色がいい。
右目を隠す形に下がってしまったバンダナを外し、
額の部分で結び直す。
それでも、バンダナが大きく、
末端は眉にかかるくらいに低い位置だったが。
次いで両手で両頬を同時に三度ばかりポンポンと叩く。
それから、
「よし……」
と言って、ワイリーはその場を離れた。


PHASE-04 波の間に(7/7)

呼び出しくらった俺が言われた通りに艦長室までやってくると、

ドアが独りで開き、ある女の後頭部が目に入った。

一瞬、頭が2つ並んでいるかと思った。

それほど綺麗に、正確に、中央を境として髪が塗り分けされており、

左はグリーンで、右は暗い褐色。 

すぐに彼女はゆっくりと振り返り、

それぞれの方向に跳ねた襟り足の左右の端が、

鳥の翼のようにはためく中で、

やがては毛髪の隙間を抜いて、赤い瞳がこちらへと向けられた。

ライチの実にも似た、鮮やかなその瞳は半分だけ開いており、

彼女はこちらに一礼すると、右手側に一歩退(しりぞ)き、

「お待ちしていましたよ……アスカ副長。どうぞ、中へ」

と、こちらに道を開けてくれた。

開いた口より見えたのは、

舌の右端につけられた魚の形をした翡翠色(ひすいいろ)のピアス。

……色々聞きたいことはわかったが、あえて何も聞かなかった。

部屋に入って1歩、周囲を見渡す。

右手の背中側に彼女がいるのは勿論、

左手側にはハビエルがおり、正面にはギドーが座っている。 

「これはまた……どういう状況で?」

俺は後ろの彼女に向かって聞いたが、ギドーが、

「俺から話そう……」

と切り出した。自然、俺もそちらに視線を移す。

「まずは……昨晩の奮闘ぶり、私からも礼を言わせて欲しい。

御苦労だった、アスカ副長」

「……どうも」

ひとまず頭を下げておいた。しばらく顔を下げたままにしていると、

彼の腕が前に突き出されてきた。握手を求められたらしい。

「……はぁ」

顔を上げ、ひとまず、握手に応じた。

「それで……」

ギドーの手が離れる。

「……どうして、自分を?」

「あぁ、そのことだが……」

ふと確認してみれば、ギドーの目線はハビエルに向いている。

俺も横目で確認すると、 

「……昨日の今日で、用心なしに動けないって話」

と漏らすようにハビエルは答えた。

俺は特にかける言葉が見当たらず、

またハビエルもハビエルで、顔を下げており、

何か付け足す様子はない。対して、口を開いたのは、

またもギドーだった。

「1時間後だが、私の直属の部下たち、

つまり、サーベラス艦隊が……アーモリー・ワンに入港予定だ。

まあ、あそこへはツーより、ワンからの方が近いからな。

こういう対応になる訳だが……」

「……はぁ」

ハビエルの方をチラチラ確認するのだが、

頭を下げたまま、特に何も言ってはくれないどころか、

目も合わない。

「到着次第……サーベラス大隊、フレイヤ中隊は共に、

グナイゼナウへと向け、発進する予定だ」

「……はい?」

ギドーの言う意味がわからなかった。

いや、何故そんな話になったかがわからない、というべきか。

「これは……歴(れっき)とした総司令官からの要請です」

背後からの声に、俺は振り返る。

例の茶色い瞳がこちらをじっと見つめている。

胸の前で、両腕を組みながら。

彼女は目を閉じて、話を続ける。

「このような状況、私(わたくし)どもも無理は承知していますが、

命令には従っていただかないと」

ハビエルはその大きな鼻をかいているのか、触っているだけか。

とにかく、何か言ってくれそうにはない。

またギドーについても、すっかり蚊帳(かや)の外といった感じで、

もう口を挟む様子はない。

俺はついつい溜め息を漏らしつつ、

「理解に苦しみますね。何でそんなこと……

そもそも、何でアナタがここにいるんですか?

姫(フェイ)・デ・カイパー総司令官補佐」

そう、彼女に詰問(きつもん)した。

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