機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
「攻めるとしたら……か」
周囲の表情を確認するが、特に不満げという様子はない。
それでも……と考え、言葉に詰まっていると、ハビエルが、
「士気が下がるとか思ってる?でも、不安要素があるなら……
今のうちに言っとくべきじゃない?いざって時に対処できるし」
そう言うものだから、俺は目を閉じ、少しを顔も下げたまま、
話を続けることにした。
「《ジズ》の武器は、
背中についたプラズマ収束ビーム砲パルジファルだ。
わざわざコクピットを胸から頭に移し、
ジェネレーターを胸に埋め込んでまで向上を図ったというだけあり、
威力そのものはかなり高いが、連射性能は流石にイマイチだ。
パルジファルを2、3発撃っている間に、
例えば《ドム》のビームバズーカでも、その倍飛んでくる。
《ザク》のビームマシンガンなら尚更だ。
それに、戦艦は正面をビームシールドでその身を守っている分、
上や下はまだしも、正面へ向けて撃つ武器がほとんどない」
「……《フレイヤ》のニーベルグ砲は?」
ジョーンが問う。
「パルジファルと同じ理屈だ……手数で負ける」
一応、見渡してみるが、他に意見する者はない。
「この陣形に穴があるとすれば、そこが。
正面からの敵に対しては、弱いとは言わないまでも、決定力に欠く。
だから、相手がそれを理解して対応したなら、
負けないまでも、膠着(こうちゃく)状態に陥る可能性はあるな」
次に手を挙げたのは、サム。
「つまりは……それでも負ける見込みはないと?」
「あぁ……そう」
と俺が言いかけると、遮って言ったのがハビエルだった。
「……《ダーティ》でしょ?」
一瞬で、ハビエルの言わんとすることは理解できた。
「あれは……打算に入れるべきか?」
「……遭遇する可能性は十分にあるじゃない?」
「そう……だが」
もう一度、周りを確認。
アレハンドロの顔つきなど、早く言えと言わんばかりだ。
「負ける見込みは……一応ある」
脱走兵側の主力《ザク》。アーモリー・ワン襲撃時にも数機いた、
所謂《FZ型》のモデルだ。
中には例の《ダガー》もどきの緑色のが2、3機交ざっているが、
大部分はこの《ザク》で、上の艦隊には目もくれず、
俺たちへと襲いかかった。
「まともに戦う必要はない。適当にビームを撃ち込んだら、
さっさと下がるぞ?」
降り注ぐは《ザク》によるマシンガンの一斉掃射。
その中に、《アダガ》のビームライフルの攻撃もいくらか混じる。
こちらはビームシールドで身を守りつつ、徐々に下がっていく。
『ザフトの犬どもに死を!』
そう叫んだ声が戦場に響いていた。敵のパイロットらしい。
それも、《ダガー》もどきのパイロットのようだ。
俺は背中からブーメラン状の武器を取り、投げつけた。
丁度、そのダガーもどきは気持ち前に出ていた上、
マシンガンに比べれば手数が少ないお陰で、ブーメランは被弾せず、
ソイツまで届いてくれた。
命中したブーメランは、まず腹部を切断、返す刀で首も落とし、
その後で、こちらまで戻ってきた。
『ナイス・ブーメランっすね!』
アレハンドロが機体の右手の親指をわざわざ立てて、
そう言ってくれるが、脱走兵の勢いは収まらない。
まずやられたのは、1機の《ジズ》。シージーという隊員が乗っていた。
ビームシールドの発生装置にビームが直撃、爆発を起こし、
そシールドが消滅したところで、更にマシンガンで1発、2発と受け、
3発目に左腕を持っていかれた。
慌てて俺は彼の方に動き、庇(かば)う。
「その機体じゃ、もうムリだ……退け、シージー」
『……はい』
言われた通り、彼は《フレイヤ》まで引き下がった。
対して《ザク》らの前進は続く。とはいえ、脱走兵側もバカじゃない。
『前に出過ぎるな!……三つ首が迫っている!』
脱走兵側のあるパイロットの言葉だ。
「流石にベテラン勢……やっぱ理解していたか」
ただ、それ以上に、俺の気にかかっていたのは、
ダミー戦艦が壊れた直後、一度だけ姿を現し、
そしていつの間にか見失った、《ダーティ》のことだった。
レーダーにも反応はなく、煙が上がっている場所も周囲にない。
『副長の言う通りになってますが、どうします?』
サムが問う。
「敵は前に出てこないんだ……無理に戦う必要は……」
そう答えようとしたときだった。ソイツらが姿を現したのは。
『何だよ?あの蜘蛛(くも)みてぇなモビルアーマーは』
……蜘蛛か、確かに似ているかもしれない。もっとも、足は4本だが。