機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
本来、部隊名というのは部隊の隊長の名前から取るものだが、
ことこのサーベラス隊においては少々事情が異なる。
その名は、部隊長プリュトン・ギドーが編み出した戦術に由来する。
では、そのサーベラス戦術とはどのようなものか?
名高き「軍学者」であったギドーは、
3隻の宇宙戦艦を互い違いに密着させる戦術を提案した。
戦艦はモビルスーツにとっては長距離を移動する為の足であり、
また戦場での動く補給拠点となる訳だが、
必然的にモビルスーツより大型となる宇宙戦艦では、
対モビルスーツ戦闘は不利と言わざるを得ない。
とはいえ、ギドーの発案の前年、
ゲルググの量産により一般化した、
フェイズシフト装甲とビームシールドの技術が戦艦に応用され、
バビロン級が就役。
戦艦は対モビルスーツ戦闘に防御力という武器を得た。
とはいえ、バビロン級にも弱点はある。
予算の問題により、シールドを前面にしか配備出来ず、
ブリッジやエンジン等を持つ後方の守りが手薄となる点だ。
当初、モビルスーツを後方に配置するアイデアも出されたが、
流石に戦艦では面での制圧能力はまだしも、
その他方面でのモビルスーツの攻撃力を凌駕するには至らず、
酷評された。対してギドーの作戦で行けば、
3隻が密着することで互いを守り合うことができ、
一応、隙はなくなる。
その後、制式採用されたジズが、
ファランクスさながらの集団密着戦術を主に考えられたことで、
戦艦を円のように取り囲み、二重の盾を展開する形に修正され、
これを高く評価したヴィトー・ルカーニアにより、
ギドーは一介の学者からまさかの大出世を成し遂げ、
大隊の指揮官という異例の抜擢を受けることとなる。
なお、サーベラスとは三つ首の猟犬ケルベロスの英語読みで、
密着した3隻の戦艦を首に見立て、命名されたものである……
サーベラス艦隊の目前に現れた、コウモリの翼にタコの頭。
有した、その機体の名は『RAMW-X05 ムナガラー』。
そいつは足を持たず、ただ辛うじて太股の名残があり、
ジズを仕留めた2本のワイヤーはこの部分に搭載された武器らしい。
あるジズがサーベルを抜き、一気に間合いを詰め、斬りかかるが、
軽く避けられた。
次いでムナガラーの垂れた頭が便座の蓋のように上向きに開くと、
そこにあった銃口が瞬時に火を吹き、ギドーは狙われた。
突然のことに反応できず、ジズは落とされ、
ムナガラーは一気に後退していく。対して、ギドーは叫んだ。
『撃て!……ヤツを撃て!』
下を向いていた周囲のジズの砲口がムナガラーに向けられるが、
出力は高いが、連射できず、そして動きの遅いジズの砲では、
嘲笑うようにクルクルと回り、飛ぶムナガラーを仕留められない。
どころか掠(かす)りもしない。
しょうがなく、ジズの1機はビームサーベルを抜き、追撃を試みるも、
ギドーが無線で、
『……隊列を乱すな!』
と指示を出し、追撃を許さない。
『……しかし』
『いや、敵1機など……見逃してもいいのだ!陣形を崩すな!
この陣形さえ崩さなければ、我々は!』
そんなギドーの言葉とは裏腹に、
左右から更に2機のムナガラーが急接近。
一度、うちの片方が艦隊の左翼の傍らを素通りしたかと思えば、
右に近付いたムナガラーが、今度は5本のワイヤーを飛ばしてきて、
その側にいたジズたちを攻撃した。
1本目はビームシールドに弾かれながらも、右肩に絡み付き、
2本目は先端の銛のような小さなビーム刃が胸に深く突き刺さり、
3本目はその隣にいたジズの頭を貫通して機体を爆発させ、
4本目はもうひとつ隣のジズの左股に刺さり、
最後の5本目は右腕に絡み付いた。
『……俺の電流は痺(しび)れるぜ?マジで』
男言葉だが、声は女。
それが右を襲ったムナガラーのパイロットのものだった。
宣言通り、一撃で仕留められた2本目以外のワイヤーへ電撃が走り、
接していた機体の部位を破壊した。
『何をしている!……反撃しろ!』
ギドーは必死に味方を鼓舞したが、敵が速すぎる。
やられたジズらの側にいた別のジズが反撃を試みるも、
パルジファルを構えたところを、
また頭のビームでパルジファルごと撃ち抜かれてしまった。
『たった3機に……何を苦戦して!』
ギドーの叫びに呼応でもしたかのように、正しく直後、
陣形を構成するバビロン級の1隻『ヨーハン・ヴァイヤー』が爆発。
その衝撃に周囲のジズらも押し出され、
うちの何機は爆発に巻き込まれてしまった……