機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-06 その手に剣を(3/7)

ホルローギンとノエルの会話には、こんな続きがある。

「秘書殿は……島津(しまづ)の退(の)き口とか、

捨て奸(がまり)など呼ばれる戦術をご存知か?」

「……いえ」

「そうですか……まあ、トカゲの尻尾切りのような話で……」

ホルローギンは左手の掌がノエルに見える向きで、3本の指を立てた。

「関ヶ原という戦いにおいて、敗戦濃厚の状況となった島津家は、

諸説あるが10万近い敵に対し、僅か300の兵しかいない状況で、

敵陣を突破し、離脱するという強攻策に打って出た。

そこで用いられたのが、この捨て奸という戦術でした」

3本の指のうち、1本を折り曲げるホルローギン。

「……300の兵を更に少数に分け、

一部の兵を敵陣の真ん中に取り残し、足止めさせる。

その間に他の部隊が戦線を離脱する。

少しでも長く時間を稼ぐ為でしょう、

銃を持った部隊には相手から見えにくいよう、

胡座(あぐら)をかかせて敵を狙撃させたとのことで、

座禅陣とも言うそうですよ」

「しかし……そんな事をすれば……」

「……そういうことです」

そうして更に、残り2本となった指の片方すら、

ホルローギンは折り曲げた。

「捨て奸として残った者は、そのほとんどが戦死し、

……結果として生き残り、逃げ延びたのは、

全体の3分の1以下、80人程度だったと言われています」

そこまで言うと、

ホルローギンはその左手をティーカップに伸ばした。

持ち手に手を通さず、例の3本指で軽く添えるように持ち、

胸のままに抱えたまま、

「この島津の退き口で……敵も大きな損害を受けている。

負傷した者、落馬した者、

中にはこのときの傷が原因で病(やまい)にかかり、

亡くなった者もいたとか」

そう話してから、紅茶に少し口をつけた。

「そんな戦術……よく成立したものですね。

兵士は自らが捨て駒にされるなんて、嫌がりそうなものですが」

ノエルの問いの直後、カップがテーブルへと戻される。

「その点は、私も直接会った訳ではありませんから……

はっきりとしたことはわかりませんが。

むしろ、志願者は多かったと聞きますよ。かの『葉隠』で著名な、

武士道を死ぬことと評した理屈にも繋がる話でしょう」

そこでムッとした表情を見せたのはノエル。

「お言葉を返すようだが……『葉隠』の意図を理解していないご様子。

あの話は、命を擲(なげう)つことを美化した話ではない」

「……これは失礼」

ホルローギンは軽く会釈をした。

「それに……そのような非人道的な戦術が、現代で成立するとは、

考えにくいですが」

テーブルに両手をかけ、前傾姿勢気味に体を前に突き出すノエル。

対してホルローギンはどこか悲しげな表情で、

「えぇ……そうでしょう。それが……マトモな兵士ならば、ね」

と返すのだった。

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