機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
イージスの脅威といったら。現に今も、上の混乱を避けて、
降りてきていた1機のジズが撃墜された。
女性のパイロットが乗っていたらしく、
耳を擘(つんざ)くような甲高い悲鳴が戦場に谺(こだま)した。
ジズから上がったのか、イージスからか、
もう定かではない煙が霧散(むさん)していくと共に、
サムはジョーンの姿をそこに確認した。
ジョーンはビームライフルを構え、戦っていた。
もっとも、恐怖からか、その動きは古いロボットみたくぎこちなく、
折角撃ったビームもほとんど当たっていない。
「おい、ジョーン……大丈夫か?」
回線を回し、サムが彼女の顔を確認する。
否、正確には、すぐに顔が見えた訳ではない。
なにせ、ジョーンの顔は俯(うつむ)いており、
その笠(かさ)のような髪に顔が隠れてしまっていたから。
『……ええっ?』
掠れるような声で返答し、顔を上げたジョーン。
元々色の白い顔の彼女だが、このときはなおのこと白く、
また瞳孔も開いていて、
サムは、ごく一瞬だが、死体と目を合わせた気分になった。
「……大丈夫か?しっかりしろ」
ジョーンはまた俯いてしまった。
『怖いの……死ぬのが』
時を同じくして、
『ウソッ……マイクさん……』
そう声を出したマユ、いやヴァイデフェルトの声が、
俺を現実へと引き戻す。
もっとも直後に、またあの女の声で、
『ボーッとしてたら、皆死んじゃうよ?』
と囁かれてしまうのだが。
次の標的は、そのヴァイデフェルトらしい。
目の前にイージスが迫っているのに、
ヴァイデフェルトはダランと腕を下げたまま動こうとしない。
俺は急いでそちらへと動いた。
間に合わないという確信に、必死で違うと言い聞かせながら。
回線を合わせ、
「おい!ヴァイデフェルト!……避けろ!避けるんだ!」
と叫んだものの、返答はない。
アッシュは次の瞬間にはヴァイデフェルトにぶつかっているだろう。
この距離で狙撃しようものなら、当たっても自爆で、
ヴァイデフェルトが巻き添えになってしまう。
『いや……私、まだ誰のお役にも……』
ヴァイデフェルトの悲痛なる声を聞いた。
このとき思わず、彼女は目を閉じてしまったという。
しかし一秒後、目を開けてみれば、
自身に襲いかかってきていたイージスが、
ビームサーベルで体を串刺しにされていて、
徐々に機体の高度が下がっていっている。
間もなく、イージスの体は爆発。またビームを撒き散らしたが、
その時にはヴァイデフェルトの機体の間に少しの距離があり、
「避けろ!」
との俺の声を聞いて、少し退避しただけで、
爆発に巻き込まれずに済んだ。
一部始終を見ていた俺は当然知っている。
そのビームサーベルがセイバーにより投擲されたものであることを。
ワイリーは何も言わず、ただこちらにモビルスーツの体を向けて、
首をクイッと斜め上に向けて振った。意味としては、
"あっちに行け。他にすることがあるだろう?"
とか、そんなところだろう。
「……うるせぇな」
頼もしさに、ついつい笑ってしまった俺。
その背後で、静かに消え行く女の気配に気を留めることなく。
なお、ここでの彼女の最後の台詞は、
『「誰のお役にも」、ね』
という意味深な一言であった。