機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-01 星屑に潜む陰(4/7)

赤やら青やらのネオンサインだけが疎(まば)らに照らすばかりの、

暗い路地裏。同じ頃の話になろうか。

そこに今、2人の男がフラフラ歩いている。

いや、正確には2人ともそんな足取りなのではない。

片方がつま先立ちになりながら、右へ左に揺れていて、

もう1人が肩を貸し、揺れる度に踏み留まっては、相手を引き寄せる。

背格好は、肩を貸している方のが一回り小さく、

揺れる毎に、フラフラの男の白髪混じりの黒髪のうち、

結ばれたバンダナの影響で、獣の耳のように跳ねている部分が、

前に倒れたり、逆に後ろへと流れていったり、忙(そわ)しない。

しばらく歩いたところで、このフラフラした方が、

揺れた拍子に、

「……ウッ」

と声を漏らして、肩を組んでいない右手で口を覆った。

「スマン……アレハンドロォ……」

そう言って、男は組んでいた肩を振りほどき、

目の前に建つ電柱へとフラフラと近寄っていった。

やがてもたれかかるように、電柱を両手で掴み、前傾姿勢となる。

「絶対……飲み過ぎたっしょ?ワイリー先輩」

アレハンドロと呼ばれた彼は、そんな言葉を呟きながら、

振りほどかれた辺りに立ち、相手の様子を窺っている。

とはいえ、相手からの返答はなく、その代わり、

彼が嘔吐(おうと)する際に漏らした呻(うめ)き声が聞こえ、

その足場に広がる液状の吐瀉物(としゃぶつ)が見えた。

「……ウヘッ、ゲヘ」

一頻(ひとしき)り吐き出した後も、こうして咳(せき)が出て、

しばらく止まなかった。

アレハンドロは1、2歩下がり、首を気持ち斜めにした上、

右手の親指と人差し指で、鼻を摘まんだ。

やがて咳が収まるとワイリーは、

「オマエは……結局、一滴も飲まなかったなぁ?アレハンドロ」

そう背中で語りかけてくる。横顔だけアレハンドロに向けながら。

「そりゃ、俺は兵士ですからね……いつでも戦えるように、っすよ」

ワイリーの電柱を掴んでいた両手が開き、

代わりに、その両肘が電柱へとぶつけられた。

「そんなこと……何時起こるんだぁ?」

ワイリーは半笑いでそう告げる。

「さぁ?」

アレハンドロは開いた左腕を広げ、その掌を上へ向けて開いた。

「……わかんないっすよ?今日かもしれないし、明日かも?」

水溜まりを踏んだときのように、ベチャベチャと音を立てながら、

ワイリーが振り返った。顔は下がっているが。

「戦場は……生易しいものじゃない」

ワイリーの物言いに、流石のアレハンドロも、顔つきが真剣になる。

微(かす)かに上がるワイリーの顔。

だらしなく下がった額のバンダナに隠れて、右目は見えないが、

左目は隠れておらず、目の下のクマも含め、見えている。

「オマエは知らないから、そんなことが言えるんだ」

「……うちの隊で実戦経験しているパイロットなんて、

副長とワイリー先輩だけっすもんね」

踏み出そうと動くワイリーの足は、

先程彼の口から出てきたものに阻まれ、ツルッと滑(すべ)る。

慌てて膝を曲げ、電柱を掴むワイリー。

水飛沫(みずしぶき)のように飛び散ってボトムズにかかったが、

尻餅(しりもち)だけは着かずに済んだ。

「あ~あ……」

と目を半開きにするアレハンドロに、

ワイリーは電柱を頼りにゆっくりと立ち上がる。

「……例の演説のこと、気にしてるのか?」

そう話すワイリーは、アレハンドロの方には脇目も振らず、

電柱にもたれながら、徐々に持ち直していく。

「考えないことだ……俺みたいに、なりたくなきゃな」

ようやく立ち上がったワイリーは、なおもフラフラのまま、

ゆっくりとどこかと進んでいく。

その後ろ姿を見ながら、アレハンドロは一言、

「……俺だってエースだってこと、忘れてませんか?」

そう呟いた。

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