機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
周囲ではまだ悲鳴が上がっている。
『……イヤ。死にたくない。死にたくない……』
首を引っ込め、コクピットでジョーンはガタガタと震えている。
「……クソッ」
俺は高度を上げて、戦場を俯瞰(ふかん)する。
2機のイージスと、ザク数機が高度を上げて、接近している。
距離を取りつつ、機首のビームガンとビームライフルとで迎撃。
まず、1機のイージスに数発を撃ち込まれて爆死。
残る1機には接近を許したが、あえて相手の懐に入り、
背中の大剣「クラレント」を抜いた。
正に目と鼻の先まで近付いた以上、
かえって4本の足が折り畳まれるまでに時間がかかっている。
その間に剣を降り下ろせば、イージスの体を両断するだけでなく、
その勢いでイージスの体は叩き落とされ、高度を下げていく。
ビリビリと電気が体のあちこちが出て、動きが止まるイージス。
まもなく、そのイージスは爆裂し、周囲にいたザクが巻き込まれた。
「連中は真っ直ぐ進むのは速いみたいだが……
方向転換なんかは苦手らしい」
相手に聞こえるリスクは覚悟で、広域の電波でそう喋った。
「『フレイヤ』!高度を上げて、斜めに進め!
モビルスーツをそれに追従させれば、敵を凌(しの)げる」
数秒の沈黙を経て、ハビエルが、
『了解よ、副長。アンタの判断は正しい』
と返答。戦艦が上昇を始めた。
「……なぁ、ハビエル?何で弾幕を張り、
一気に敵を掃討するという作戦を取らない?」
これは広域の回線ではなく、戦艦と機体の個人回線にて尋ねたが、
『モビルスーツが不規則に点在している状況である以上、
味方を巻き添えにする弾幕攻撃は取れないでしょ?』
との返答が返ってきた。
「だとしても、アッシュの登場からもう数分が経過している。
その間で……例えば、イージスの接近を許すまでの時間にでも、
反撃していればよかったんじゃないか?」
『アンタは「フレイヤ」の性能を過大評価してんのよ……
手数の話をしたのは誰?
第一、今更そんなことを言っても始まらないじゃん。
無敵の副長らしく、さっさと敵を駆逐(くさく)なさいな』
返す言葉がなく、苦笑した。
「あぁ……回答に感謝する」
とだけ言って、回線を切った。
理屈で分かったからって、人間そう簡単に変われるものじゃない。
敵を見上げるイージスたちの動きが、
方向転換の瞬間に一度止まるか、止まらないまでも隙ができる。
それは俺が確認し、通達した事実だ。ただ、ことはほんの何秒かの話。
方向転換さえ済ませてしまえば、敵のイージスは、
また予想以上のスピードで接近し、接触すれば自爆する。
『副長!ジョーンが!』
とサム。確かにジョーンのことは心配だが、敵のことも無視できない。
レーダー上に接近するイージスの反応が出ている。
「そりゃ……そうだよな」
そんな言葉しか言ってやれなかった。
ひとまずは身を翻し、反撃とばかりにビームライフルを撃ち込む。
今度はザクを撃ち抜けた。
「だが……もう少しだ。もう少し」
『副長!……上が心配なんで、向かっていいっすか?』
それはアレハンドロの声。
「あぁ……頼む」