機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-06 その手に剣を(7/7)

「流石にスゲェな……ワイリー先輩は。まあ……」

そう漏らしたアレハンドロはこのとき、機体を後退させつつ、

照準をカーン・カーァへと合わせた。

「……俺も負けちゃいねぇが」

条件はベストだった。皮肉ではあるが。

撃墜されたバビロン級戦艦とジズ数十機が巻き起こした爆煙に紛れ、

アビスの位置は特定されているが、姿自体は見えない。

チャンスは一度。胸やらの高出力なビーム砲では速度が落ちる。

狙うとしたら、威力は落ちるが腕のビームガンの方が速く襲える。

「……副長は、ガルムをぶち当ててたがね」

そう苦笑しつつ、両手のビームガンの引き金を引いた。

結末は以前述べた通り。

相手のビームサーベルを持った両手が犠牲となった。

ただ、少しだけカーン・カーァを擁護(ようご)するとすれば、

「おいおい……避けやがったぞ。マジかよ」

そう思わず両手をキーボードから離したアレハンドロの態度と台詞が、

全てを物語ることだろう。

「……速すぎだろ。機体も、パイロットの反応速度も」

『煙に紛れる判断は悪くないが、

ビームが突き抜ける瞬間に、煙は揺らめくもの。

残念だったな、アビスのパイロット。私が相手でなければ、あるいは』

カーン・カーァの言葉が聞こえてきた。

「……クッ」

歯噛みするアレハンドロ。

けれど悔しがっている暇はなく、警告音がコクピットに鳴り響く。

『……生きて帰れたかもしれぬ』

『いえ……死ぬのはアナタの方だ!』

叫び声と共に、頭上では斬りかかるフェイの姿。そして、

「俺だって、勝手に……殺すなってんだ!」

アレハンドロのアビスへと飛んできたムナガラーのアンカー2本。

あえてアレハンドロは、避けなかった。

1本はアビスの左肩についたシールドが、

その丸みを帯びた形状を生かして軌道を逸らし、

もう1本の方は左足へと深々と突き刺さった。

『……感電死しな』

相手のパイロットなのだろう。女性の声で、そう言った。

「いや、その前に……アンタが焼け死にやがれ!」

火を吹いたのは、アビスの胸部中央。

チャージは終わっていた。カーン・カーァを狙ったときには、もう。

『……なに』

避けようにも、アンカーをグッと引き寄せるアビスの前に、

回避できなかった相手のムナガラー。

モロに食らい、胸から上を大きく消し飛ばされた。しかし、

「そこじゃ……ねぇのか」

ムナガラーはまだ死んでいない。苦笑するアレハンドロ。

しかし、

『……うわぁ』

聞こえたのは、そのムナガラーのパイロットの悲鳴。

背中から腹へと貫いて、ビームの刃が顔を出す。

間もなく、機体は爆発。

刃の元であったブーメラン状の武器が後方に飛び、煙に消えていった。

そのうちに煙が上がると、その奥には、

「あーあ……いいとこ、持っていくじゃないっすか。副長!」

……俺のIm/A-Pがいた。ブーメランを片手に持ちながら。 




『ウィルマ!……よくもぉ!』
カトリーナの声が響く。しかし、
『やめろ、カトリーナ……ここは撤退する』
とのカーン・カーァの宣言には、何も答えず、引き下がった。
その辺りの会話を聞いた後、ヘルメットを脱ぎ、ワイリーが呟く。
「意外に早く……カタがついたな」
額から拭う汗。しかし量が尋常ではなく、ある一滴は頬を流れ、
顎の端で滴(しずく)となって垂れている。
「だが……これで……」
そう油断したのも束の間、それは起こった。
ワイリーの目の前には拘束した敵のザクがいたのだが、
それが突如として縦に5本のビームの撃ち込まれて、
爆発したのである。
「なっ……」
弾道を確認するが、そこには小惑星があるだけ。敵の姿は見えない。
代わりに聞こえてくる、
『……お疲れなのね?』
という女の声。額に当てられたワイリーの腕が止まる。
「サーベラス隊のクルー……じゃないな?」
世界が歪んで見える。青みを帯びて見える。
「アンタ……死神か?」
ワイリーの口角が上がった。ただし、その唇は震えている。
「どこから来る?……何が起きる?俺を……どこへ連れていく?」
『フフッ……』
ワイリーの頬へ2滴目の汗が流れ落ちる。
『……伝言を頼めるかしら?シン・アスカさんへ』
「伝言?」
『えぇ……一言だけ』
恐る恐るワイリーは回線をこちらに合わせた。
『どうした?……ワイリー』
と尋ねる俺へ、
『……今のままじゃダメ。もっと派手に、もっと無惨に、
私は見たいの、アナタの壊れていくところが。
ねぇ……「お兄ちゃん」?』
見えていないのに、何故か俺の頭の中に、口を裂かんばかりに開き、
笑う女の顔が浮かんできた。言い様のない吐き気が込み上げてくる。
ワイリーがこちらに機体ごと向いて、
「だとよ?……アスカ」
と呼びかけた。
この直後、一筋のビームがセイバーの体へと降り注いで…… 
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