機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-07 交錯する正義(7/7)

自動ドアが開き、中に入ると、彼女は教卓の奥に座っていた。

ルシア・アルメイダ、その人が、である。

場所は館長室。 教卓に似た白い半円形のテーブルが置かれた、

割に大きな部屋だ。

入って数歩のところで、彼女──ヴァイデフェルトは立ち止まり、

「……おはようございます」

そう一礼したが、

「はい」

相手はこう返答するだけで、見向きもしない。

目前にはノート型PC。見るからに、デスクワークで忙しそうだ。

前髪を弄ったり、部屋を見渡したりして、彼女が少し待っていると、

そのうちアルメイダが顔を上げた。

とはいえ、口をついて出たのは、

「……で?」

の一言だった。

「……え?」

丁度、前髪を触っていたヴァイデフェルトの手が止まる。

「……何の用かって聞いてるんだけど?」

ヴァイデフェルトは状況をすぐには理解できなかった。

2、3秒あまりの沈黙を経て、

「いえ……隊長がお呼びだと、窺(うかが)ったもので」

うつ向きがちに、くぐもった声でそう答えた。 

対するアルメイダは、ため息を漏らした。

ついで、ピンク色の髪の、

黒くなった生え際辺りをかきむしったかと思えば、

「私が呼んだのはアスカ副長であって……アナタじゃない」

と断言する。ヴァイデフェルトは無言で立ち尽くしてしまった。 

「……アスカ副長がどこにいるかぐらい分からないの?」

「ええと……」

ヴァイデフェルトの髪に触れていた手が下りて、

やがて胸上へと落ち着いた。

「……お見舞いに行くと窺いました。ワイリー先輩の」

「あっそう」

アルメイダの視線が手元に戻る。

それより先、数十秒、ヴァイデフェルトに視線が移ることはなく、

ただキーボードを押すカタカタという音だけが響いていた。

「……あ、自分はこれで」

ヴァイデフェルトは振り返って部屋を後にしようとしたが、

「ところで……」

と呼び止められた。

「……報告書、まだなの?」

「……はい?」

「私はこのグナイセナウにいて……詳しい状況が分からない訳よ。

そんな中、二度も戦場に出て戦ったんだから、状況報告の書類、

出すのが普通でしょ?」

ガヴァイデフェルトが振り返り、深々と頭を下げる。 

「すみません……すぐに提出します」

「……今日中に」

隊長の首を前に突き出すような所作を見て、

下げられたヴァイデフェルトの頭がなおも低くなる。

「……はい」

それだけ答えると、彼女はそそくさと部屋を出ていった。

そうしてドアが閉じた瞬間に、

キーボードを叩くアルメイダの手は止まった。

肩の骨を内側に押し込むように、両手を広げて、上へと伸ばす。

「……ふぅ」

漏れた息と共に、アルメイダの体は後方に倒れ、

その身は椅子の背もたれへと預けられた。

「随分、部下を失ったみたいじゃない……全く」

アルメイダが見つめる画面には、

サム・スクリーチの名義で出された報告書が映っている。

報告書のタイトルは「2度の戦闘における戦没者とその経緯」。

その順は時系列に沿ったもので、

ハサン・エルトゥールルが最初で、最後はマイク・フルータ。

「……フッ」

ため息なのか、何なのか。

ともかく、そんな声を漏らし、一同画面を折り畳んだ。

椅子は後ろへと引かれ、天井を見上げる顔に、右手が添えられる。

「何してんのよ……アイツ。また……」

左手の拳が握られ、それは真っ直ぐにテーブルへと振り下ろされた。

「あんなヤツが副長じゃなきゃ……今回も。あの時も……」

そんな独り言の後、室内に響き始める電子音。

スマホの着信音だった…… 




同じ頃、彼女は高台の上から、
街並みをぼんやりと見下ろしていた。手をポケットに突っ込んで。
「何してんだ?ジョーン」
名前を呼ばれ、彼女は振り返った。
呼んだのは、あのアレハンドロだ。
足音が聞こえない程度に緩やかな足取りで、アレハンドロは、
ジョーンの横までやって来た。
一度は振り返るジョーン。しかし、すぐに向き直ってしまった。
「パーディに怒られっぞ?」
ポンと頭の上に手を置き、アレハンドロは笑う。
しかし、ジョーンは1歩ばかり横に動いて、また何も答えなかった。
アレハンドロはというと、
ツーブロックの髪の下に指を突っ込み、刈り上げられた銀色の髪を、
軽く掻(か)いている。
「……のことか?」
「うるさい、チビ」
ジョーンは振り返らないままでボソッとそう言ったが、
アレハンドロはフッと笑った。
ちなみに、アレハンドロの身長は164cm。ジョーンは172cmだ。
「……何気に気にしてることなんだけどなぁ」
地団駄(じだんだ)踏むように、足を鳴らすアレハンドロに、
遂にジョーンが振り返る。
先程までポケットに突っ込まれていた右手には、
今、拳銃(レミントン・モデル95・ダブルデリンジャー)が握られ、
添えられた左手共々、銃口はアレハンドロに向いていた…… 
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