機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-01 星屑に潜む陰(5/7)

3月30日未明。そこは暗く狭い球場の空間。

オレンジ色のシートに座る人物は、緑色の宇宙服を着込んでおり、

ヘルメットのバイザー・シールドに反射して、

うっすらと目前のモニターの画像が写っている。

逆に、この人物の紫色をした瞳もまた、闇に光って見えていた。

そんな薄暗い世界へと、

『リョウ!……リョウ!』

と呼びかける男性の声が響く。

紫の瞳がゆっくりと視線を上げていくと、

正面の画面の隅に、ある人の顔が写っていた。

それは、赤茶けたロングヘアーを束ね、三つ編みにした男。

左目は黒い眼帯に覆われているが、

右はその青みを帯びた灰色の瞳を顕にしている。

「……ヤン・クールカ隊長!」

思わず、リョウは右手で敬礼してしまった。

その様子に、ヤン・クールカの表情が柔和なものへと変わる。

『上官の呼び掛けを無視するとは……随分、肝の座ったヤツだな』

そんなヤンの言葉に、リョウは萎縮(いしゅく)したようで、

「……すみません。考え事をしていまして」

と、ゆっくり手を下ろした。

『緊張しているみたいだな?』

問われたリョウが、コクリと首を前に倒す。

『誰だって、最初はそんなものだ……恥じ入ることはない』

ヤンは腕を組み、右目を閉じた。しかし、その目は、

「隊長も……そうでしたか?」

というリョウの問いに反応して、すぐに開かれることになるが。

『私に限って、そんなことは』

そう話すヤンの顔つきは多少険しくなり、声にも力が入るが、

その迫力にリョウがピクッと反応した辺りで、

『と……言いたいところだがな』

の一言と共に、顔は右へ向けられ、口元も緩む。

『……正直、恐ろしかったよ。最初は私も』

「隊長が……ですか?」

『……あぁ』

気持ち上を向くヤンの横顔。

『宇宙は広い。少し油断すると、自分が何処にいるのか、

前に進んでいるのか、後ろに下がっているのかさえ分からなくなる。

そんな状態だというのに、

敵は容赦(ようしゃ)なく襲ってくるからな。

死の恐怖に駆られて、失禁する者もいた……』

リョウの表情が暗くなる。

『おっと……失禁などと、レディーに話すことではなかったな?』

と少し苦笑するヤンに、リョウは、

「ボクは男です!」

そう強く反論する。

正面に向き直ったヤンがリョウの顔を確認すると、

もうそこには脅(おび)えた表情はなかった。

ただ、無言で自身をじっと見つめるヤンに、そのうちリョウの方から、

「すみません」

と頭を下げてしまったが。

『構わんよ……

良い面構(つらがま)えになったからな、少々驚いただけのこと。

その様子なら、もう心配はいるまい……

活躍に期待する!リョウ・ナラ隊員』

ヤンが右手で敬礼。慌ててリョウも敬礼を返す。

『……共に生きて帰ろう!』

「はい」

『……ではな』

そう言い残し、ヤンの顔は画面から消えた。

ゆっくりと下げられるリョウの手。間もなく、その口から、

「これが……『メサイアの悪霊』か」

との言葉が漏れ出た。




時計の針をいくらか進めて……
戦艦のブリッジ(操縦を行う場所)を覗いてみよう。 
メカニカルで、卵形の背もたれをした白いイスが10余り並ぶ部屋で、
しかし、肝心の室内は薄暗く、中には1人、パーディがいるだけ。
中央にある席を除いて、イスの正面にはテーブルがあり、
それは麻雀卓のようなものや、PCと一体化したものなど様々だが、
彼女が座っていたのは、壁に埋め込まれたタイプのものだった。
「気を付けてくださいね?先輩」
パーディが画面に向けて話しかける。
画面に映っているのはハサンだ。
銀を基調に、アクセントとして赤、更に一部に黒いラインが入った、
そんな宇宙服を着込んで、コクピットに座っている。 
『ああ、任せてくれ』
そう答えてすぐ、
画面が切り替わり、1機のモビルスーツが表示される。
機体名は《ZGMF-X56SR Im/A-P(アイマップ)》。
背中に4つの小さな翼と、アームがついており、
アームに掴まれた形で、2丁の大きなライフルが置かれているが、
その銃口は両方ともに正面へ向いて、肩に乗っている。
「……《インパルス》、発進どうぞ!」
パーディの声を聞いて、
ハサンはヘルメットの右耳を触った。何かのボタンのようだ。
間もなく、ヘルメットのバイザー・シールドが降りる。 
『ハサン・エルトゥールル。《2号機》、出る!』
灰色のボディをしたこの《Im/A-P》は、
背中に細いケーブルをつけられた状態で、
肩を掴むアームと足の下の縁、レールの上に固定されていた。
発進どうぞの掛け声と共に、
機体はレールの上を勢いよく押し出され、
レールが途切れるのに前後して、色がつき、
赤みを帯びたオレンジ色の装甲と、薄い青緑色のボディを得た。
やがてケーブルは取れ、体は空中へ放り出された。
その直前に、H型を描く背中のスラスターに青い火が付き、
勢いそのままに、機体は空へと飛んで行った。
そうしてほんの数秒で、フレームアウトしたのだった。
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