機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-08 カウントダウン(3/7)

その目を見開き、アレハンドロを見つめるジョーン。

「引き金を引けないと思ってるの?私が」

ジョーンは少しだけ視線を下げて、そう告げた。

「いいや……信じてるんだよ。オマエを」

「……え?」

動揺からか、ジョーンの拳銃を握る手が弛(ゆる)む。

アレハンドロはそれを見逃さなかった。

「……ほいっと」

下向きで押し出すように拳銃へ力を加えると、

脆くもそれはジョーンの手から溢れ、地面へと転げ落ちた。

「あっ……」

声を漏らしたのはジョーンだった。

取ろうと屈む彼女を、アレハンドロは背中から引き寄せ、制止する。

「おっと、それは無しだぜ?」

間もなく拳銃は柵の下の隙間を抜いて、崖から落ちて行った。

振り返ったジョーンの両目がアレハンドロの顔を睨んでいる。

「……そう怖い顔すんなってさ。な?」

アレハンドロが手を離すと、ジョーンは少しだけグラつき、

しかしすぐに持ち直した。

なおもアレハンドロに向けられる視線は冷たい。

「同僚を見るかよ、おい」

冗談っぽくアレハンドロがそう言ったぐらいじゃ、

ジョーンは動じない。

「あのな?

もし、俺が本当にスパイなら、とっくにパーディを殺してる。

……違うか?」

「下手に殺した足がつくから……

口から出任(でまか)せで誤魔化(ごまか)すつもりかもしれない」

「おいおい」

アレハンドロは苦笑した。

「どんだけ信用ねぇんだ……俺は」

ジョーンから顔を背けて、アレハンドロがそんな一言を。

「まぁ、ひとつだけ弁解しとくとだな……

別に敵のモビルスーツが分かったってのは、俺の手柄じゃねぇんだ」

「……どういうこと?」

「パーディから聞いてねぇのか?」

ジョーンは静かに頷く。

「何だよ……それ。せめて疑うなら、確認しろっての」

アレハンドロは両手をパタパタと左右に振った。

まるでペンギンのように。

「ホントはハサン先輩の手柄なんだ……

って、パーディのヤツがもう伝えてあるかと思ってたぜ。

まぁ……あの状態じゃムリか」

パーディはアーモリー・ワンの襲撃以来、

精神的に参ってしまっており、グナイセナウへの航路では、

オペレーター業務をこなしていなかった。

「……ハサン先輩がダーティから見つけたんだ。

アドゥカーフ・メカノインダストリー社のマークをね。

それのお陰で、すぐに調べがついた。

何がスゲェって、

アドゥカーフはダーティに社のマークつかってねぇんだよ。これが」

「……えっと、つまり、どういう?」

ジョーンが首をやや斜めに回す。

「アドゥカーフが使ってるマークじゃなくて、

社が利用している別ブランド、

それも、別事件でテロリストに強奪されたせいで潰された、

もう使われてないブランドのものなんだぜ?

そんなのを見つけたんだ、ハサン先輩は。

もう、死ぬって時にだよ?スゲェと思わねぇか?」

アレハンドロは嬉しそうで、しかし、どこか悔しそうでもあった。

「ワイリー先輩もだ……俺、思っちまったよ。

どうして、俺みてぇな出来損ないが無傷で生き残って、

あんなスゲェ2人が……なんてよ」

アレハンドロは体を横に向けた。

涙を溢しそうになっていたその顔を、ジョーンから遠ざけるように。

「……らしくも、ねぇのによ」

ジョーンから見えたアレハンドロの横顔は、

その口角が上がっていた。

笑顔。しかし、ジョーンにはそれがとても苦しそうに見えた。

「分かるよ……私にも」

そう答えるジョーンに、アレハンドロの表情が少し柔らかくなる。

もっとも、すぐにそれを隠すように顔を逸らしてしまったが。

「でも……まあ、起きちまったことはどうしようもねぇんだ。

結局、やるしかない。

生きているヤツは、生きているなりに。自分なりに、よ」 

この後、アレハンドロは腰のホルスターから銃を抜いた。

拳銃の種類はトーラス・ジャッジ。

ジョーンは撃たれると思い、表情を曇らせたが、実際はその逆。

わざわざ目の前で弾を全部抜き、その場にボトボトと落とし、

「ほーら」

更に、空になった拳銃をジョーンの方に投げ渡したのだ。

ジョーンは驚いた表情そのままに、慌てて拳銃をキャッチする。

「……これで満足か?」

ジョーンはなおも複雑そうな表情を見せる。

「何だよ?まだ信じてくれない?」

ジョーンは静かに、フンと鼻を鼻を鳴らした。

「何か……それでも、完全には……」

そういう彼女の視線は、手元の拳銃の方にあった。

「あぁ……そうかい」

アレハンドロは振り返り、トボトボ歩き出した。

その足音に、パーディの顔が上がる。

「あぁ……しまったよ。折角、チャンスだと思ったのによぉ」

「……チャンス?」

小声で聞き返すジョーンに、アレハンドロの足が止まる。

「今なら、落とせるかと思ったんだがなぁ。畜生」

背中を向けたまま、右手で拳銃のような形を作り、

手首を曲げてジョーンに見せたかと思うと、すぐに引っ込めた。

その後は、何事もなかったようにそそくさと歩き去っていった。

「何よ……アイツ」

ジョーンの顔に笑顔が溢れた。

それを知ってか知らずか、闇に消えていく最中、

アレハンドロもまた、笑っていて……

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