機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
俺が留置所を出たのは、まだ昼前だったのに、渋滞のせいで、
気付けば辺りは太陽の位置がほぼ反転していた。
ようやく基地に着いた俺たちは、モニタールームへと向かった。
20台程のノートPCが並び、奥には大きなスクリーンが鎮座する。
部屋には、30人ほどの隊員がおり、俺たち2人が入っていくと、
みな一様に立ち上がって、わざわざこちらを向き、
一礼してくる。
黒い軍服を着込んだ俺が高位の軍人とわかってのことだろう。
呆然とする俺に、
一番近くにいた女性隊員が話しかけてくる。
「ヘブンズ・キー局所属のチチェローネであります。
失礼ですが、お名前を窺っても?」
彼女が名乗る『ヘブンズ・キー局』の呼称に、
思わず俺は顔を逸らした。
「あぁ……アルメイダ中隊のシン・アスカ副長だ」
更に後ろに手を向ける。
「こっちは、部下のダイ・フーディニーだ」
チチェローネがダイに対して頭を下げた。
「本日は、どのようなご用向きで?」
「昨日の戦闘のことでな……記録された映像を確認したい。
サーベラス隊のものだ。届いてるか?」
「あー……少しお待ちください」
チチェローネは着席し、目の前のPCを弄り出した。
この間、何となく室内を見回したところ、
全員が肩に腕章をつけているのが確認できた。
白い背景に、交差する金と銀の鍵が描かれた腕章だ。
俺がそんな腕章に目を奪われているうちに、タイプする音が止み、
次いでチチェローネが、
「……これです」
と画面をこちらに見せてくれた。
「ええと……どこから、ご覧になりますか?」
「……最初から頼む。
サーベラス隊が敵との遭遇を確認した、最初の時点からだ」
映像は意外に短く、見終わるまでに30分とかからなかった。
つい俺は立ったままに見続けてしまい、
見終わってからようやく、後ろのパイプ椅子に腰を下ろした。
「何というか……予想以上にヤバいですね」
そう後ろから小声で言うダイは、いつの間にか座っていた。
「脱走兵の連中は……いつの間に、こんな兵器を」
背もたれに右肘を置き、俺は首を曲げ、天井を仰ぎ見た。
「このままとは言わずとも、この性能のモビルスーツが……
量産化されているなんて考えたら」
周囲を見渡すと、心配そうな顔つきの者が2、3名見られた。
「あくまでも……俺の印象として、だが」
何となく、数名の視線がこちらに向くのを感じた。
「はい」
というダイの返事が直後に聞こえたから、
ひとまず、彼の方を向いて喋ることにした。
「モビルスーツ性能の差ってのは……
そんなに心配される程、深刻って訳じゃない。むしろ……」
一応、周囲を確認する。
見渡したところ、パイロットらしき隊員はいない。
いや、正直に言うと、
エースと呼ばれる赤い制服の隊員がいるか見渡しただけで、
実のところ、パイロットもいた可能性はあった。
「………むしろ、何ですか?」
真剣な表情で詰め寄るダイに、俺も答えない訳にはいかない。
俺はゆっくり目を閉じた。
「……言っちゃ悪いが、錬度(れんど)の差だ。
敵の多くは、ユニウス戦役を生き残った連中か、傭兵だ。
新型機の性能以上に、新型機の展開の仕方、
サーベラス戦術に対する対応力なんかが優れている。
見た限りだが、脱走兵側の被害はそもそも少ないみたいだしな」
「では……早急に兵の錬度を上げる必要があると?」
またゆっくりと目を開けた。
「そう簡単にはいかないだろ……
大体、戦いってのは、兵の質だけじゃなくて、だな……」
そんな事を言いかけた直後、突然ドアが開いた。
俺が振り向くより先に、ダイが反応した。
「ヴァイデフェルト……」
名前を呼ばれた拍子に、
ダイの方に向いたヴァイデフェルトの顔だったが、
俺が振り向くと、彼女はこちらに顔を合わせた。
「副長……急いで、会議室に来てください。あの……」
そこでヴァイデフェルトは周囲の視線が自分に向いているのを感じ、
慌てて、
「……お客様が」
と付け加えた。
ヴァイデフェルトへの応答に困る俺を尻目に、ダイが口を開いた。
「……自分はここに残ります。
もう2、3、見ておきたいものがあるので」
「あぁ……わかった」
両膝に置き、勢いをつけて立ち上がった俺は、
ヴァイデフェルトの方に向き直る。
「じゃあ……行くか」