機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-08 カウントダウン(7/7)

その頃、当の会議室では。

閉ざされたブラインドの隙間から漏れる陽光は弱く、

部屋は電灯が照らしている。

4つのイスがそれに合わせる高さの長方形型のテーブルを、

左右から取り囲む形で並んでいる構図。

このとき、ルシア・アルメイダは入り口側・左のイスに座った。

ヨーゼフ・スコルツェニーは、部屋の右奥におり、

コーヒーを注いでいる。そのまま、

「アーモリー・ワンの件、とんだ災難でしたね」

と話し出す。首を回し、少しだけアルメイダの顔を見ながら。

「ええ……」

間もなく、コーヒーは注ぎ終わった。スコルツェニーは向き直り、

アルメイダの席の前へと進む。両手には2つのコーヒーカップ。

その片方を彼女の前に押し出すように置き、

もう片方は向かいの席に。

そうして自身もまた、向かいの席へと腰を下ろしたスコルツェニー。

座ってすぐ彼は、フゥと息を漏らした。

「どうぞ」

掌を開き、コーヒーを勧める。

「……すみません」

アルメイダは一礼すると、

持ち手に外側から軽く指を添え、カップを持ち上げた。

「いえ」 

目を閉じたスコルツェニー。

アルメイダは少しコーヒーに口をつけたが、すぐに顔を上げた。

「ところで……本日はどのようなご用向きで?」

「はい……そのことなんですが」

スコルツェニーは持ち手に指を入れると、

真っ直ぐ口元へ運び、微かにだがその音を立てながら、

コーヒーを啜(すす)った。

その後、彼がカップをテーブルに置いたとき、

中身は3分の1近くが減っていた。

時間としても、4、5秒程度はかけていたろう。

ようやく語り出すスコルツェニー。

その手は今日も、あの羽冠のごとき頭頂部に触れていた。

「……今からする話は、あくまでも『要請』であって、

『命令』ではないこと……まず、これを理解していただきたい」

ようやく、スコルツェニーがこう切り出した。

アルメイダは少し困った様子で、少し遅れ気味に、

「は……い」

と応じ、カップを音を立てぬようゆっくりテーブルに置いた。 

そんな彼女の背後で、ドアが静かに開き始める。

スコルツェニーの顔が少し上がり、

アルメイダもまた、勢いよく振り返る。

それはもう、彼女のピンク色の髪がほんの一瞬だが、

風にその身を乗せて揺れる鯉のぼりがごとく、はためいていた。

会議室のドアを開けば、ルシア・アルメイダの黒い頭頂部と、

ヨーゼフ・スコルツェニーの顔が見える。

2、3秒程度。声には出さないが、舌打ちするような顔付きで、

振り返ったアルメイダは睨(にら)んでいた。

「参謀長!……これは、失礼しました」




ここへ向かう途中で、廊下を歩いていたスコルツェニーの、
対角線上を一人の男が歩いてきた。
それは白い口髭を蓄え、
キャバリア犬のような明るい茶髪のおさげ髪をした紳士だ。
スコルツェニーと目が合うと、一礼し、すれ違い様、
「……お勤め御苦労様です」
と小声で笑いかけた。
そこから、互いに背を向けた構図で、
2、3歩、踏み出したところだったか。
スコルツェニーは立ち止まり、
「貴殿は何時まで、プラントに滞在なさるおつもりか?
ヴァレフスキ司令」
そう彼を呼び止める。ヴァレフスキは振り返る。
「すぐに帰るつもりだったのですが……
元首様のご気分が優れない様子で、ほって置くには忍びなく」
そこまで言うと、ヴァレフスカは自身の後ろ髪を撫でた。
「……まぁ、今回の会議のことで、今に帰国すれば、
皆様にいらぬ誤解を招きかねないと思い、
しばしば、様子を見ておこうかと……そういったこともありまして」
ヴァレフスキが顔を下げる。
「貴殿は何故、毎日のようにラクス様をお尋ねになるのか?
失礼ながら……少々、疑問に思っておりましてね」
話の終わりで、とってつけたような笑顔を浮かべ、
スコルツェニーがようやく振り返った。
「理由……ですか。それは、考えていませんでしたねぇ」
ヴァレフスキは笑う。
しかし、スコルツェニーが何も言わず、
微妙な表情で彼を見続けるものだから、
ヴァレフスキも顔色を変えて、
「何か……不都合でも?」
と、そう尋ね返す。
「……いえ。そのようなことは」
スコルツェニーは振り返った。ヴァレフスキに背を向けるように。
「ただ……あまりの入り浸(びた)りように、
御二人の仲を邪推(じゃすい)するものもいるようで……
身の振り方は、よくお考えいただきたいものですな」
「……ご忠告、感謝いたします」
ヴァレフスキはまた一礼。
「それでは……私はこれで」
そう笑顔で答え、
踵を返したヴァレフスキはその場を去っていった。
後には、
「……チッ」
と舌打ちすると共に、
ポケットの奥に手を伸ばし、
スマートフォンの録音をやめるスコルツェニーの姿があった。
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