機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
「……先日、南アメリカ合衆国から要請がありまして、
近々、ヴァージン諸島に、
軍事基地を敷設する予定になっているのですが……
誰を監督に派遣するか、ラクス様も決めあぐねておいでで」
後ろから見ていても、隊長の口角が上がっていくのがわかった。
「……それでは?」
アルメイダの声は多少、上擦(うわず)っていた。
その前で、ゆっくりイスへと腰を下ろすスコルツェニー。
「ええ……あくまでも、遠征での活躍次第で、
ということにはなりますがね?」
満足げに鼻を鳴らすアルメイダの後ろで、俺が口を開いた。
「……発言してもよろしいでしょうか?」
スコルツェニーがわざわざこちらに向き直った。
「アスカ副長、失礼でしょう?」
振り向いた隊長の顔は、口元こそ緩んだままだったが、
目が笑っていなかった。
「いえ……構いませんよ?何か?」
「隊長だけ……我々だけ特別扱いされる理由が分かりません」
隊長の顔から表情が消え、ややうつ向く。
「あぁ……それは勿論、
アルメイダ隊長が手を上げてくれたからですよ」
「しかし……それは参謀長が提案されたからでしょう?
参謀長が何故、アルメイダ隊長を特別視するかが知りたいのです」
「……アスカ」
アルメイダはやや顔を伏せたまま、こちらを一瞥し、
声としては小さいがドスの効いた声でそう言う。
他方、スコルツェニー本人は穏やかに、
「いいんですよ……」
とアルメイダを宥(なだ)める。
「いえ、ね……アルメイダ隊長は、ラクス様のお父上、
故シーゲル・クライン元議長が、『もう一人の娘』と呼んで、
可愛がっておられたとか?」
「……えぇ」
「アーモリー・ワンを守ってもらった功もある。
これ程の功労者を、一介の部隊長に留めておくのは……
と、私なりに考えた結果ですよ」
スコルツェニーは微笑んでいた。
俺は、アルメイダは現場にいなかったと指摘したかったが、
流石にそれは避けた。
「アーモリー・ワンと昨日とで消耗した我々よりも、
それに相応しい部隊は他にあるのでは?
……何より、身内贔屓(みうちびいき)は、
元首の批判材料にされかねませんが?」
さしものスコルツェニーの表情も、
ここまで言えば流石に硬いものになる。更に、
「そこまでにしろ、アスカ副長。
それ以上は私を信任してくださった、参謀長への侮辱だ」
こちらには見向きもせず、
背中で答える上司に、俺は黙るしかなかった。
直後、アルメイダはスコルツェニーの手を取った。
右、左とゆっくりとした手つきで、参謀長の両手を包み込むように。
「喜んでお受け致します……同じラクス様を思う者として」
「……えぇ」
そう会釈を返したスコルツェニー。
頭を下げた一瞬に、上がった彼の口角を、俺は見逃さなかった。