機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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スコルツェニーが立ち上がる。
「詳しいお話は……また日を改めて」
そこまで話し、一礼したスコルツェニーは、
出口の方へと歩き出した。去り際、俺に、
「……先の2度の戦いで、
アルメイダ中隊はモビルスーツを数機失われたと、
窺(うかが)いましたので、こちらで用意させていただきました。
開発中だった新型です……お役に立てれば」
こう言うのだ。実に、胡散臭(うさんくさ)い笑顔で。
「……ありがとうございます」
とこちらは一礼。
「いえいえ……私はアナタにも期待しているのです。
南米には、アナタも想いを残しておいででしょうから……」
スコルツェニーは笑っていた。それは変わらない。
ただ、このときだけ、上記の言葉を囁いたほんの数秒の間だけ、
その笑みに侮蔑(ぶべつ)と皮肉を織り混ぜていた。
それがただ微(かす)かに見上げ、見つめるだけでも分かった。
「……また、お会いしましょう」
そうしてスコルツェニーが部屋を去るまで、俺は顔を上げなかった。
ドアの閉まる音がして、足音も聞こえなくなった頃、
俺はゆっくりと顔を上げた。
そこには険しい表情で腕を組む、アルメイダの姿があった。
ずけずけとこちらに歩み寄ると、
「……立場を弁えることね」
とだけ言い残した。吐き捨てるように。
そうして、彼女もまた去っていった。


PHASE-09 シン・アスカ(3/7)

モビルスーツデッキに向かうと、スコルツェニーの話通り、

見慣れないモビルスーツがそこにはあった。

それも、

「……フリーダム」

なんて俺が呟く程、よく似ていた。『ZGMF-X10A フリーダム』に。

上向きに真っ直ぐ伸びた2本と、それぞれが左と右へと伸びる2本。

カニの鋏(はさみ)みたいに折り畳まれた背中の両翼。

全てが同じではないが、よく似ている。フリーダムに。

実際にフリーダム自体が戦ったのは7年前が最後で、撃墜され、

その後の活躍は後継機の『ZGMF-X20A ストライクフリーダム』や、

更に後継機の『ZGMF-X30A アルティメットフリーダム』に、

譲ることとはなったが、今なおその「伝説」、その人気は衰えない。

核エンジンが産み出す圧倒的なエネルギーを武器に、

当時のトップレベルの武装を余すことなく搭載、

単機にして戦局を優に覆し得る力を持った驚くべき機体。

その奇特なるモビルスーツが今、俺の目の前に立っているのである。

7年のブランクを消し飛ばすように。

それはもう7年前、いや10年前にオーブの空に見た、

偉大にして恐るべき存在のままに。

居並ぶジズの中で、異彩を放つソイツには、

その物珍しさからか、人だかりが出来ている。

メカニックもパイロットも、はてはオペレーターなども。

真っ先に俺に気付いたのは、ヴァイデフェルトだった。

「……副長だ!道を開けてくれ!」

直後、誰かの叫びに応じて、何人もの隊員が振り返り、

海が割れるように、ひと一人が通れるほどの隙間を開けてくれる。

開いてくれた道を進むこと、5歩とか、6歩とか。

左手側にいたダイが、こちらにバインダーを差し出した。

それはダイいわく、

「データです……この機体、

『ZGMF-X40A1 ヴェスティージ』の」

だという。話を聞いてから、バインダーを受け取ると、

そこには確かに載っていた。

目の前にいるヴェスティージは、起動する前だから灰色一色だが、

資料の上に挟まれた写真には、白と青を基調とした姿で映っている。

サッと、2枚目、3枚目とめくりながら、

緩慢(かんまん)な歩みでヴェスティージに近付く。

一応、全部の資料に目を通した頃、

俺の足も機体のすぐ側まで来ていた。

「……幸先がいいというか、なんと言うか」

後ろでそんなダイの声がした。とても嬉しそうだ。

「ジズなんかとは比べ物にならない……高性能機ですよ、これ。

これなら、どんな敵が来ても大丈夫ですね」

書類から手を離し、バインダーを下ろした。

見上げたヴェスティージの顔は……何故だか、

妙に悲しげに見えた。俺はごく小さな声で言った。

「俺がフリーダムに……か」 

苦笑せずにはいられなかった。誰にも聞こえないことを祈ったが、

いつの間にか傍らにいたヴァイデフェルトに聞こえたらしい。

複雑な表情でこちらを見ているのが分かった……

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