機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-01 星屑に潜む陰(6/7)

そこまで見届けると、

パーディはマイクつきのヘッドホンを取り、テーブルの端へ置く。

それから両手の指を組んで、両腕を上に伸ばし、

伸ばせるだけ伸ばすと、

ゆっくりと胸の前に下ろし、組んだ指をほどいた。

そして、

「……フゥ」

と息をついた。

そこから、左手首を返す。左手には、腕時計がはめられている。

バンドの部分が色鮮やかなミサンガで、

文字盤にも月が描かれた派手な金色の腕時計が。

「えっ……まだ、10時25分?ウソでしょ?」

慌てて彼女が画面を見ると、隅に12:11との文字が確認できる。

「マジ焦った……」

パーディは時計を外し、

ヘッドホンを置いた横へ、文字盤を下にしてゆっくりと置いた。

それから、だらしなく、背もたれに身を預ける。

いつの間にやら画面は切り替わり、

縦横に均等な線が引かれた紫の扇形が出ている。

どうやら、レーダーらしい。下部にグレーの丸い点が映っており、

そこに矢印がされ、《ZGMF-X56SR-2》と出ている。

「……あー、暇」

彼女がそう漏らした直後、背中でドアが開く音がした。

振り返ると、見えたのはブドウ色の髪。

入ってすぐは少し前屈みだったが、顔を上げていくに連れ、

ブドウ色の毛に下に白い毛が少し揺れた拍子に垣間見える。

そんな風貌の小柄な男性がそこには立っていた。

そのピンク色の眼で、辺りを見渡し、女性の姿を確認すると、

缶コーヒーを握った右手を上げて、

「……よぉ!パーディ」

と声をかける。口を横に開いて、目を細めて笑いながら。

パーディと呼ばれた女性は、少し呆れた様子で、

「……何よ?アレハンドロ」

と答える。アレハンドロは鼻で笑うと、

「いやぁ~ねぇ……寝れないから、様子見に」

などと、パーディの方へと歩み寄る。

「お姉ちゃんたちと楽しいことしたから……

興奮して寝れないとかでしょ?どうせ」

「いや~ねぇ~……スゴかったぜ?もうこんな……」

そう笑うアレハンドロは、

胸の前で縦向きに大きく円を描くように腕を振っている。

「……アンタねぇ」

と漏らすパーディ。ふとアレハンドロが彼女の方に向くと、

パーディの胸の脂肪が、

テーブルに少し押し潰されながら乗っているのが確認できた。

「おっと……こちらも中々にぃ……」

そう漏らすアレハンドロに、パーディは、

「……キモい」

とだけ言って、少しなオーバーな動きで向き直り、

アレハンドロに背を向けた。

「冗談だってば……パーディ。そう言うなって」 

「いいから寝ときなさいよ……

どうせ、酒気帯で戦えないんだろうし」

フンと鼻を鳴らすパーディに、アレハンドロは、

「……飲んでねぇよ。一滴たりともな」

「……え?」 

「まあ、そう邪険(じゃけん)に扱うなっての。

俺から差し入れもあるんだし」

「……差し入れ?」

パーディが振り返ろうとしたとき、

もうすぐ後ろまで来ていたアレハンドロが、

その首筋に缶コーヒーを押し当てた。相当冷えていたのだろう、

「ひゃっ」

などといった甲高い声を上げ、パーディが両手を首にあてる。

アレハンドロは後ろでハハハッと笑っている。

パーディが頬を赤らめ、また眉をひそめ、振り返ったとき、

アレハンドロは、

「コーヒーだぞぉ?」

と笑ったまま、彼女の前に手を突き出し、軽く左右に揺らした。

その後、缶コーヒーは、画面の脇の狭い縁の部分に置かれた。

続けてアレハンドロは、その場でゆっくりと回り、

左手をポケットに突っ込み、別の缶を取り出した。

プルタブに手をかけたところで一言、

「しっかし……夜勤は大変だなぁ。彼氏とデートも出来ねぇじゃん」

そう呟く。カチッという蓋の開く音がする。

「……なにそれ、彼氏いないアタシへの当て付け?」

パーディの聞き返す声に続いて、プシューという泡の立つ音がした。

炭酸飲料らしい。

「あぁ……そうだっけ?」

とアレハンドロはニヤッと笑う。

「……わざとらしい」

パーディがそう漏らしつつ、目を反らした直後、

茶色っぽい泡が缶の穴から涌き出てきて、

アレハンドロは慌てて口を蓋のようにつけた。

そこから少し啜(すす)った後で、口を離し、話を続ける。

「なんなら、俺が付き合……」

半笑い気味に言いかけたところで、パーディが振り返る。

「……それはない」

語調は、「ない」の部分を強める言い方で。

青緑色をした目を細め、ジトッとアレハンドロを見る。

「なんだよ……つれねぇなぁ」

アレハンドロは缶を振り上げるようにして、グイッと飲んだ。

「まあ、冗談はさておきだ……」

アレハンドロの顔つきが変わる。

それを見たパーディの目も、少し大きくなる。

「いいのかねぇ……こんなに不用心で」

缶を軽く揺する。

それに合わせて、中の炭酸飲料がピチャピチャと音を立てた。

音は軽い。中身はもう少ないようだ。

「不用心?」

「……ああ」

「どういう意味?」

答えるより先に、アレハンドロは残りを一気に飲み干してしまった。

「いくら夜間とはいえ……

ブリッジには1人、巡回するモビルスーツも1機、

不用心とは思わねぇか?いくらなんでも」

そう言うアレハンドロは、まだ缶から口を離そうとはしないまま。

「しょうがないでしょ?……夜間なんだから」

「……そんな事情、敵さんが配慮してくれるのかよ?」

空になった缶をアレハンドロが握り潰せば、

その音は静かなブリッジ内に思いの他、大きく響いた。 

「だから……自分が見に来たって言いたい訳?」

「まあ……そんなとこかなぁ~」

アレハンドロはニヤッとまた歯を見せて笑いながら、

首を右に少し回し、ゆっくり缶を口元から遠ざけた。

「……それだけじゃ、ねぇけどな」

アレハンドロがそう漏らした直後、それは起こった。

警告音が鳴り響く。耳障りな程、大きな音で。

……例のレーダーに反応が出たのである。

パーディは慌てて、ヘッドホンを手に取る。

マゼンタ色をして、ポニテールに束ねられた彼女の髪の、

白に黒のドットが入った柄のシュシュの部分へ、

丁度ヘッドバンドが当たるように、

ヘッドホンがつけられた。

続けて、マイクを口元に寄せる。

「ハサン先輩!……返事をしてください!先輩!」

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