機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

60 / 91
PHASE-09 シン・アスカ(4/7)

その日の夜のこと。場所は会議室だが、流石に状況はまるで違う。

ブラインドの奥に見えるのは三日月で、

スコルツェニーが腰かけていた場所にはダイが座っている。

入り口から室内を見るとすれば、

ダイの向かいに座る逆立った髪の後ろ姿が確認できるだろう。

淡い水色の髪の上に、

ペンで線を引いたように見えるネイビーのメッシュが入っている。

彼女もまたコーヒーを飲んでいた。

癖のなのだろうか、飲む際に彼女は横を向く。この時は右に。

この所作に背後に立つ者とは、横顔で顔を合わせることとなる。

もっとも、このとき、そんな人物はいないのだが。

とにかく彼女のじっとりした半目の青い眼と、

鷲のように高い鼻とがそちらにも見える位置にあった。

それには違いない。

「……『ヘブンズ・キー局』の人間の証言です。

信憑(しんぴょう)は高いかと」

ダイがそう告げれば、そんな彼女の顔もそちらへと移される。

「どう思われますか?……ハビエル副艦長」

ハビエルはコーヒーカップをゆっくりテーブルに置くと、

「どうと言われてもねぇ……流行り病は恐ろしいわね、としか」

そう苦笑する。

「……流石に、ラクス様がそれとは思わなかったけど」

「まだ確定ではありませんが、

視力の低下から始まったことを考えると、その可能性は高いかと」

カップより離れたハビエルの指が額へと向けられ、

少し高度を下げて、眉間を2、3度ばかり軽くつつく。

「……手負いの女神様って訳か。参謀長が幅を効かすハズね」

ダイはその生来の落ち着いた性分に矛盾しない程度に、

少しだけ目を丸くして、ただ無言で見つめ返した。

「あっ、知らないんだっけ?」

ハビエルの問いに、

「お恥ずかしいながら」

と頭を垂れるダイ。

「いや……昼、参謀長がいらっしゃってたんだけど……」

腕を下げるハビエル。

「それは知ってますが」

「……そこで、討伐任務への参加を提案されたんだってさ」

「……はぁ」

ダイは首を傾(かし)げる。

「何故、そのようなこと……」

「まぁ、考えられるのは、主導権争いってことよね」

下げられたハビエルの右腕は、今は背中へ回されて、

左腕に掴まれている。

「……参謀長は『要請』という言葉を強調していた。

あくまでも『命令』ではなくて『要請』なんだってね。

この意味、わかる?」

ダイが首にアゴをつける程度に、軽く頷く。

「参謀長から我々に『命令』を下すとすれば、

管轄のORDER……ヴィトー・ルカーニアの同意が必要になる。

ORDERと参謀長では、参謀長の方が格式でこそ上ですが、

実質的には対等。

こと直接の戦力の有無のみに話を限定するならば、

直属の軍隊を持たない参謀長の方が不利とさえいえる」

「……つまり?」

「これが『要請』の名目なら、

参謀長からルカーニア司令に同意を求める必要性がなくなり、

司令は『志願』した我々の出兵を拒めなくなる。

いや、拒むこともできますが、テロリスト打倒の大義がある以上、

拒めば『円卓会議』での立場とラクス様の心証をなお悪くする。

対して参謀長の立場から見れば、

直接自身が『命令』していない以上、足がつかない。

アルメイダ隊への訪問にしろ、部隊の慰安だったで言い訳がつく。

そして討伐任務ともなれば、

各方面の防衛という任務があるORDERよりも、

参謀長が担(かつ)がれる可能性が高い。

結果的に、参謀長は『何もせずに』大部隊の指揮権を得られる」

ふとダイが相手の顔色を窺えば、

ハビエルの唇の右端が結ばれ、皺(しわ)が寄っている。

「……話が長い」

ハビエルがぼやく。

「まぁ……それだけでもないんだけどね」

「はい?」

ハビエルが今度は左腕を上げ、左の耳回りの髪を上向きに撫でると、

その髪は妙に堅く、撫でた流れがそのまま髪を逆立たせた。

「とりあえず……アスカはどこいんのよ?」

「モビルスーツデッキです……例の新型の模擬演習中かと




アナウンスが流れる。
『これより、
「ZGMF-X40A1 ヴェスティージ」の模擬演習を開始します』
直後、真っ暗だった正面が明るくなり、町並みが現れる。
見渡すと、少し離れたところに3機のモビルスーツを発見できた。
左手側にソードインパルス、右手側にはブラストインパルス、
正面にフォースインパルスという3機が。 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。