機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
デスティニーは左肩に右手をかけていた。
ビームブーメランを抜き、投げてくる。
これを避け、ビームサーベルで斬りかかる。
デスティニーは飛んだ。垂直に飛んで避けた。
赤い光の翼が頭上に輝いている。
ビームライフルを空に向けて撃ったが、
散布されたミラージュコロイドにより、正確な位置が掴めず、
まるで命中しない。
逆に頭上から、高エネルギービーム砲を撃ち込んできた。
ビームシールドでこれを受け、ライフルとガンを乱射した。
ライフルで正面の敵に、ガンで背後の敵へ。
背後の方は、丁度近付いていたビームブーメランに命中。
爆散。他方、本体はビームシールドを貼った上で、
やや下降気味に動いてこれらを避け、
今度は右肩のビームブーメランを投げつけてきた。
これにはビームライフルで対応。ブーメランを撃ち落とし、
次いでに本体をも狙ったが、またも命中しなかった。
「上手いじゃねぇか……『今の』俺より」
苦笑いせずにはいられなかった。
こちらも飛んで、デスティニーへと接近する。
敵機に向けて一直線に飛びかかったつもりが、近付けばわかる。
ごく僅かだが、こちらが見ていた場所とずれている。
相手が撃ち込んでくるビームライフルを避けつつ、
多少軌道修正して接近する。
すれ違い様にビームサーベルで斬りつけたが、
機動力は互角、避けられてしまった。
それでも、間髪いれず、
サーベルを相手の背中へと投げつけてやった。
流石のデスティニーも避けきれず、
高エネルギービーム砲に刺さり、破裂した。
煙に視界を遮られつつも、ビームライフルを再度乱射。
流石に仕留められなかったが、
煙に紛れてデスティニーの左足が落ちていくのが見えた。
だからとて、慢心する暇はない。
今度はデスティニーから高速接近してきた。腕には対艦刀。
頭部ビームガンとライフルを発射し、向かえ撃つも、
またもミラージュコロイドに撹乱されて距離を見誤り、
すれ違い様、ビームの刃に右腕を切断されてしまった。
「流石に核エンジン使ってるだけあるな……こちらと違って」
──時代が降れば、より精度の高いものが出来るとは限らない。
青銅器に始まり、ギリシャの火、ダマスカス鋼に、日本刀……
現代技術が再現できないものだってある。
前にテレビで特集やってたが、
命中精度はまだしも、こと威力だけに限定するならば、
マスケット銃も馬鹿にできないらしい。現代の銃と比較しても。
そういう意味じゃ、この『ZGMF-X42S デスティニー』も大概だ。
C.E.78年のウェストエンド騒動にて、
大西洋連邦がニュートロンスタンピーダーを実戦投入して以降、
安全性の問題から核エンジンを採用した兵器が、
軒並み開発中止、生産停止の憂き目に遭った。
だから、核エンジンを搭載しているだけでも十分強い。
これに更に、迷彩効果を持つミラージュコロイド技術だの、
ビームシールドだの、
終いには既存のモビルスーツを凌駕する圧倒的可動域。
そのデスティニーだが、月面での戦闘で倒された後、
メサイア戦役後の混乱の中で、結局どうなったかが分からない。
戦闘データが残っているから、
模擬戦闘用のデータとしては今でも使用できるが、
開発に関するものは、開発者サンレーモが残した日記を除き、
すべて持ち去られてしまった。
というわけで、今のプラントでは完全に再現することは出来いない。
特に、本来は透明になるハズのミラージュコロイドが、
何故デスティニーでは残像として機能しているのか、
これが分からないらしい。
まぁ、再現出来たところで、核エンジンが使えない以上、
実戦では役に立たないのであるが。
思えば、デスティニーに乗っていたときが一番ツラかった。
ヴァイデフェルトによると、本当に期間として短いらしいのだが、
苦しい日々が続いたせいか、それほど短い印象はない。
初出撃で信頼していた上司アスラン・ザラの追撃となって、
以降もストライクフリーダムなんかに苦戦を強いられてきた。
そして終いには、そのアスランに負けて、
無様にも月の上に叩きつけられたのだから。
良い思い出なんてない、ハズなんだがな……
それは、本当に呆気ない幕切れだった。
片腕を落とされたときには少し焦ったが、そこまで。
次に下から再度急接近したところを、
ビームライフルでコクピットを撃ち抜いて、それで終わり。
爆発する瞬間、炎上するデスティニーを見下ろして、思った。
誰かも言ったことだが、
デスティニーの顔は、目元から涙を流しているよう見える。
涙を流して戦う人のように。
その悲しげな機体が四散する様に、妙にセンチな気分になった。
ともかく、それで模擬戦闘は終了。
街並みは暗闇へと帰っていく。それから、コクピットを出た。
しかし、そこまできても、
やはり煮え切らないというか、納得いかないというか。
そんな思いから、振り返り、機体の様子を確認した。
「…………やることやるしかないよな」
気がつくと、そんな言葉を呟く自分がいた。