機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-09 シン・アスカ(7/7)

それから休憩室の、自販機の傍らで缶コーヒーを飲んでいると、

「……シン」

と比較的小さな声で呼び止められた。慌てて振り返り、

「トライン大隊長……お久しぶりです」

と一礼する。

相手のフルネームはアーサー・トライン。

彼とは、7年前の戦役以来、古い付き合いになる。

「そんな、よしてくれよ……僕は大した人間じゃない」

彼はその場で帽子を取ると、少し微笑んた。

「……いえ」

トライン隊長が自販機へと寄っていくから、道を開ける。

「聞いたよ……一昨日に来たんだってね。ご苦労様。

元々、アルメイダ中隊は警備を任されたと聞いているが」

「ありがとうございます。トライン隊も、でありますか?」

「……そうなんだけど」

缶の落ちてくる音。

「うちは本来はバーテルソン司令の管轄でね」

屈んで缶を取る。

動きながら喋るから、声が少し上擦った。

「念の為にと、司令から指示を受けたんだ」

プルタブを摘まんで、缶を開ける。

炭酸だったもので、泡が溢れ出て、慌てて口をつけるトライン隊長。

それが落ち着いたところで、話を再開する。

「今回の話……参謀長の要請があったと聞いたけど」

「……お答えできません」

「えっ?」

トライン隊長の間抜けな返事。

「……他言するなと言われたので」

こちらが伏し目がちに応じれば、トライン隊長も表情を曇らせた。

「あぁ……大変だな」

その点については、俺は何も答えなかった。

「それじゃ、これは……ここだけの話ってことになるかな」

ゆっくりとした口調で、かつ小さな声でそう言うトライン隊長。

心なしか、少し前屈みになっている。

「……オーブ戦役のときのことなんだけど」

「はい」

「除隊したエヴァ・ロンメルがORDERだった時代に、

立案した作戦を無視されかけたことがあって、

そのときは、参謀長の部下さんがそれを見つけて、

上に提言したことで、まあ、事なきを得たそうなんだけど……

彼にはそういう、なんというか、嫉妬深いというか、

自分の権力に固執する傾向がある……って噂なんだけど」

言い終わったタイミングで、目を見合わせた。

「……まあ、単に見落としていたってことにはなったんだけど、

参謀長ほどの人だ。そんなミスをするとは……とても。

ロンメルの今を考えても、正直……」

何か答えねばと、そう思ったものの、言葉が出てこない。

「俺の口からは……何も」

思わず、目を逸らしてしまった。

「……そうか」

ひと呼吸置いて、トライン隊長は、

「……くれぐれも、気をつけてね」

と言い残し、その場を去ろうとした。

そんな時だった。地が揺れ始めたのは。 

体勢を崩しかけるほどに、激しく揺れたかと思えば、

直後にアナウンスが鳴り響いた。

『……コンディション・レッド発令!

現在、グナイゼナウは、外部より攻撃を受けている。

各員、持ち場に急げ!』

「攻撃ィ?」

トライン隊長の声が裏返った。

「ひとまず……急ぎましょう!」

「あっ……ああっ」

互いの母艦は逆方向にあった。

俺はトライン隊長と別れ、『フレイヤ』に急行した。


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