機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-10 強行突破(1/7)

……とまあ、俺やトライン隊長は大慌てなのだが、

当の戦場は、そう大慌てする程の状況ではなかった。

少なくとも、この時点では、まだ。

グナイゼナウの上空約1000mには、

渡り鳥のように居並ぶ50あまりのジズの列。

皆一様に、目前に迫る真っ黒の軍団に銃身を合わせていた。

『ギリギリまで引き付ける……引き付け、一斉に撃ちかけるぞ!』

若い男性のかけ声が響く。

この彼は、淡い水色に黄色を合わせたカラーのジ・ゾウムに乗り、

前列の前に立っている。

その声はスピーカー越しにも大きく聞こえ、

ジズらの後方に陣取る、

戦艦『ベルフェゴル』のブリッジに彼の声が届けられれば、

クルーたちは皆がその両耳を覆った程だった。

ただ、2名を除いて。

「……アントンたら、随分張り切ってるみたいですよ?閣下」

中央のイスの背中側へともたれ掛かり、

そこへ座る男へ、その豊満な胸を押し当てる彼女は、

フィロパトル・アルシノエ。

おかっぱ頭の左側を巻いて垂らした、例の混血の美女で、

今、その赤褐色の髪は、斜めに立つ彼女の体勢に合わせ、

左側へと傾いていた。

そんな彼女、流石にここでは軍服を着込んでいる。

胸元と両肘には、髪の色によく似た赤いアクセサリーをつけているが。

ともかく、もたれるのが彼女となれば無論、そこに座る男は、

「フン」

と鼻を鳴らして笑う、ヴィトー・ルカーニアに相違ない。

ルカーニアは右肘をイスの縁に置いて、頬杖をつき、

そのつり上がった両目を糸のごとく細め、

鼻の奥で息のぶつかる音を立てる形で笑っているのだ。

「……ハリネズミどもはすぐに動ける状態だろうな?」

少し首を後ろに延ばして、

問うルカーニアに、フィロパトルが答える。

「勿論です」

と。少しの間も置かずに。

「ご苦労……」

口角をスッと上げ、ルカーニアは反らしていた上体を戻した。

艦内では、

「敵機接近!」

を叫ぶオペレーターの声が響き出す。

そんな中で、ルカーニアが左手を突如振り上げたかと思えば、

その手にピストルの形をつくり、

次いで、画面に表示された、

闇に紛れるように全身を黒一色に染め上げたザク、ドムらに、

その銃口を向けた。

そして、

『……てぇぇぇぇぇ!』

とのアントンの叫ぶ声の響く中、彼も、

「バァン!」

と笑い、画面の敵を撃つ素振りを見せた。

ただ、当の『ベルフェゴル』の、

その白い体の先、

孕(はら)んだクマを戴(いただ)いたその機首が、

敵とはまるで違う方向を向いていたから、どうにも締まらないが。

こうして放たれたビームの数々は、

暗い宇宙に輝き、濁流のごとく流れ、脱走兵たちへと打ち寄せる。

川なのだから、流れに飲まれるものもいよう。

50のジズが撃ちかける攻撃に、

黒いボディでいくらか目立たないからと全て回避できる筈もなく、

撃墜されるもの、

撃墜されないまでもその身体の一部を欠損するもの、多数。

更に、

『……ハリネズミ隊、前進!』

の号令に及んで、

後方からは更に20機のモビルスーツが投入される。

やはり機体はジズだが、ただのジズでもない。

『なんだ、ありゃあ?』

脱走兵の誰かしらがそう声を漏らした。無理もあるまい。

こうして送り込まれたジズらの両肩に妙なものが乗っているのだから。

ある程度距離の離れているうちには、

赤い点がいくつもついた奇妙な円柱という以上には分からない。

とにかく、この奇怪なジズらのほとんどが航空形態を取っており、

川沿いを高速で進んでいく。

『……速くないか?ジズにしちゃ』

といったのも束の間、その赤い点が突如隆起する。 

『ミサイルか……』

そう漏らしたカーン・カーァの言葉は、半分正解で、半分間違い。

Im/A-Pやアビスにもあった、

あのビームを撒き散らす爆弾の類なのだから。

1機のジズが抱く爆弾は1機につき20発余り。

サイズこそ前述の2機に比べれば据え置きで、追尾機能もないが、

とにかく数が数だ。 

1機のリック・ドムが仕返しとばかりにやられ、

多くがビームシールドや左胸にビームの膜を張って対応するが、

それでも完全に守りきれず、

アダガが1機やられ、リック・ドムも更に2機、ザクも2機やられた。

「……幸先のいいスタートだ」

と笑うルカーニアの声を、カーンらは聞いていた。

その部下カトリーナ・スティーヴィンズは、

『ファック!』

と声を荒らげて、ムナガラーより例のアンカーを飛ばし、

近くまで来ていたミサイル持ちのジズを撃ち殺した。

腹いせとばかりに。

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