機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
ルカーニアは笑っていた。
敵味方を問わず、撃墜されたモビルスーツたちが爆発を起こし、
確かに花火よろしく、
数秒あまり星のように光って、やがて消えていく様。
フィロパトルもまた、
そのカールした髪がルカーニアの頬に触れるほどに顔を寄せ、
耳元にて、
「ロマンチックですね」
などと囁く始末。
そんな折、アントンが、
『……全機、全速前進!』
の号令をかけた。例によって、耳を覆いたくなるような大声で。
フィロパトルは少しばかりルカーニアから身を離すと、
「あら」
などと右へ首を傾げた。
その横では、ルカーニアがなおも声を殺すように笑っている。
すぐにフィロパトルがまた頬を寄せた。
「……アントンには教えていないの?」
ルカーニアは言葉では答えず、ただ顔を彼女の方に向けて、
口が裂けたかと思うほどに大きく開き、笑って見せた。
これには、フィロパトルも、
「……お人が悪い」
とつられたように笑い返すのだった。
『アーアー……第一陣、聞こえますか?』
そう聞こえてきたのは、ホルローギンの声である。
「……こちら『銀の黄昏』のカーン・カーァ。聞こえている」
そう話すカーンは、左手をヘルメットに添えている。
『……被害状況を、お教え願えるか?』
「了解した……」
カーンはそう返すものの、報告するより先に、敵に襲われる。
相手は爆弾を背負ってきたジズ。
もう爆弾は撃ち尽くしたらしく、
航空形態から変形してモビルスーツらしい姿になると同時に、
爆弾用に追加された両肩のパーツをパージ。
しかも、このパーツをカーンの方に向けて飛ばしてきたのである。
無論、こんな実弾の威力もないパーツごとき、
当たったところで機体にダメージは受けないのであるが、
視界を遮られると判断したのだろう。
カーンは1歩後退した。
『……カーァ殿?』
カーンの了承から既に数秒が経過。
ホルローギンが心配してか、そう呼びかけたとき、
当のカーンはアンカーを飛ばし、
いつの間にやらビームサーベルを抜き、
接近せんとしていたジズの左腿と右肩を撃ち抜き、
相手の動きを制止していた。
「……悪いな。今、報告する」
砲を抱える相手の右腕が上がる中、
カーンのムナガラーはその頭部をパカッと開き、
砲台を露出させると、
ジズが引き金を引くより先に攻撃し、ジズのコクピットを撃った。
「こちらの損害は……」
更に1歩ばかり後退して、目の前で爆発するジズから目を離し、
レーダー上に表示されている味方の数を、
2、4、6、8……と口に出しながら数えていくカーン。
「……34。第一陣の残存戦力は34機だ」
ふと横を向けば、片腕のないザクの姿が確認できる。
「かつ、全員が無傷ではない」
『なるほど』
とのホルローギンの返答に間髪入れず、
『何が「なるほど」だぁ?チ○コみてぇな鼻しやがって、クソが』
などと食ってかかるカトリーナ。
『やめなよ、カトリーナ』
そう宥(なだ)めるは、
ムナガラーのもう1人のパイロットたるリタ・ブッシュ。
「第2陣……いや、クールカ隊というべきか。
君らはどうするつもりだ?」
そう話している間にも、カーンの方へ、
4機あまりのジズが接近してきている。ビーム砲を撃ちながら。
彼の側にいたカトリーナとリタは、ここで側を離れた。
『プランBで行く……ここは君たちに踏ん張ってもらいたい』
ホルローギンのこの返答に、カトリーナが舌打ちをした。
『健闘を祈る』
ホルローギンはそう言い残し、回線を切った。
カーンのレーダーの端、
彼らの背後の、
それもかなり後方を飛んでいたモビルスーツの反応が、
一気に小さくなる。
それが彼らが高度を下げていっているからだというのは、
画面に表示される、マイナス数百メートルという数値から分かる。
(自身の機体の高度をゼロ地点と見て、
それに比べて上方向ならばプラス、下方向ならマイナスで、
距離が表示される仕組み)
『……いいのかよ?カーン・カーァ』
カトリーナの声。
「いいさ。行かせてやれば。
我々は……目前の敵を叩く。それだけのこと」
カトリーナは不服なのか、即答せず、間を開けて、
『……はいはい』
と呆れた調子で告げた。
「それで、だ。カトリーナ、リタ……君らに頼みがある」