機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
ブリッジへと報告する。
『敵陣形に動きが……』
などと。
前屈みになるフィロパトル。動じないルカーニア。
とにかく、アントンは話を続ける。
『何やら2手に分かれる戦術のようです』
「……ふーん」
ルカーニアの体勢が気持ち前屈みになる。
「オマエなら、どうする?」
続けて、こうルカーニアが問う。
『右か左に戦力を集中させて、各個撃破されるのがよろしいかと』
このアントンの意見に、
フィロパトルがスッと背筋を伸ばして、
「でも、それだと……
攻撃しなかった方に側面を突かれるんじゃない?」
こう言葉を返した。
アントンは一瞬、目も丸くして唇の端を口の中に入れてしまったが、
それでも続けて、
『数は恐らくこちらの方が上。一気に叩き潰してしまえる筈です。
側面を攻撃されるより先に、片方を殲滅(せんめつ)すれば……』
などと。しかし、
「却下だな」
ルカーニアはアントンの言葉を遮る形でそう言うと、
徐(おもむろ)にその場に立ち上がり、
「いいか?俺の判断はこうだ」
と語り始める……
同じ頃合い、高度を下げていく脱走兵の一団へ、
10あまりのジズが接近、道を塞(ふさ)がんとした。
しかしすぐに、1機のジズがビーム攻撃に被弾。撃墜されてしまった。
残る9機は、それぞれが表面にビームシールドを張りつつ、
7機が密集、残りの2機が分散した。
『本当に……第一陣を置いて進むつもりですか?クールカ隊長』
その声に答えるは、ホルローギン。
『オスマンさん、いいかね?指揮官の指示というのは、
何度も変えるようでは味方が混乱しますからね。
朝令暮改なんて言葉もありますが』
そう言いつつ、接近してきた1機のジズを、
彼のドミンゴが一太刀にて叩き斬った。
『……でしょう?クールカ隊長』
「あぁ……」
クールカが答える。
彼はやはりアダガに乗っており、ビームライフルを構えている。
1機目のジズを仕留めたのも彼だし、
今は自身の傍らにいた1機のリック・ドムを斬り、
更に自分へも接近してきていたジズを、至近距離で撃って仕留めた。
「我々は」
クールカの視線の先は下を向いている。
「早急に市街地に入り、敵の主力を叩く」
そう言って間もなく、
闇に紛れる意味で、全身を黒一色に染め上げていた彼のアダガが、
アーモリー・ワンのときと同じ赤い色味に変わった。
「……私に、続け!」
ライフルを幼児のように抱き抱え、
地上へと急降下していくクールカのアダガ。
『ご随意に……』
ホルローギンのドミンゴがこれに続くと、
他にも数機あまり、ザクだのリック・ドムだのが引き続いた。
当然、ジズの数機が横槍を入れんと近付くが、
あるジズはよそ見をした隙に正面にいたザクに撃ち殺され、
また別のジズは居合い斬りの要領で、ドミンゴに斬り殺された。
勿論、あるジズの攻撃は通り、
クールカらに付き従う1機のザクを撃墜。
『……ジョット!』
とその名を叫ぶ声が上がり、
クールカでさえ表情を歪(ゆが)ませるものがあったが、
それでも、
「怯むな!前に出ろ!」
との檄を飛ばし、クールカは進み行く。
「……我々は、ここまでにも多くの同胞を失ってきた。
誰も死にたくなどはなかったろう。
死者の為に出来ることなど、あるかは知れぬが……
少なくとも、今立ち止まれば全てが水の泡だ」
クールカの決意とも、言い訳とも取れぬ言葉に、
誰も返す言葉はなかったが、
ただその後に続く。その行為でもって彼に応えた。
目前には星明かりを反射して輝く黒いパネル。
それはグナイゼナウというコロニーの天井であった。
クールカはライフルを手に取り、
かなりの近距離から、パネルを撃ち抜いた。
衝撃で穴が開き、地上へと落ちていくパネル。
「……うおおおお!」
雄叫びを上げながら、飛び降り、
パネルの上に降り立ったクールカ。
ビームシールドを張るなりして、後から続々とその部下たちも現れる。
そんな中、一撃の太く赤いビームがパネルの側を通過し、
その軌道を確認したクールカのアダガが飛び退いた。
後方に飛び退いたクールカ。その画面の端に確かに捉えていた。
攻撃を仕掛けた張本人であろう、アビスの姿が。