機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
アレハンドロの漏らす言葉に、
『言ってる場合か。来るぞ!備えろ!』
ダイがそう咎(とが)める。
「んなこたぁ分かってる!」
そう答えた直後にはクールカのアダガより放たれたビームが、
アレハンドロの足元に降り注いだ。
ただし、アレハンドロは直撃のギリギリで1歩前に出て、
これを回避したから、その反論も嘘ではなかった。
「……アイツ、今度こそ!」
赤きアダガを見上げる青きアビス。
かつこのアダガの背後には、
青い青い空が一見すれば限りない程に広く広がっている。
更に奥、白く白く輝いていた太陽が今、
舞い降りるアダガの肉体に隠れてしまった。
こうなると、アダガの体は後光が光の翼のように照らしつつも、
その赤いボディ自体は、
酸素を失いやや黒っぽくなった静脈血のごとく、
どこか力なき色として見えた。
丁度、そのとき、
「……くらえ!この野郎」
との掛け声と共に、
アビスは全身の火器という火器を一斉に空へ向けて放った。
アレハンドロが下から攻撃を加えれば、
横からも10機あまりのジズが脱走兵らを襲う。
ただし、彼らがクールカらの下にたどり着くことはできなかった。
突如暗い煙に覆われた何かが、
高速で舞い降りてきて、ジズのうちの1機の上に着地。
煙はやがてダーティという本性を現して直後、
背中のビーム砲で近場にいた別のジズを撃ち殺すと、
ビームの爪で、下のジズも引き裂いてから、
一度大きく飛び上がった。
ある2機のジズが接近してダーティを攻撃するが、
例によって機動力の差で着いていくことさえ敵わず、
しかもうちの1機が下半身のビームで撃ち殺されてしまった。
次いでジズの群れがダーティに向かうもここでも機動力の差。
あっさり上に逃れられ、両腕のビーム攻撃を撃ち込まれる。
それでも、一度はシールドを張ってこれに耐えた。
ただし、それも一度だけ。
ワイヤーで延びた両腕がシールドの隙間を抜いて、
ビームを撃ち込もうものなら、中央辺りにいたジズはやられ、
その隙間に捩じ込むように入ったダーティに、
抱き寄せられるように両腕で絡め取られ、
下半身のビーム砲、背中のビーム砲、そして両腕の爪で、
ほんの数秒にして壊滅。
生き残った1機のジズが、
ビーム砲で反撃を試みたが、機動力に加え、隙もでかい。
あっさり避けられると、平手を打つように、腕をぶつけられ、
光の爪に切り刻まれる運命であった。
『クックッ………』
唾が泡立つような不快な音を出しつつ、
ダーティのパイロットが笑う声が聞こえてくる。
しかし、攻撃がそれで終わりという訳ではない。
散ったジズらの爆煙に紛れて、
一発のビームがダーティへと届けられる。
油断からか、本来なら避けられる程度のこの攻撃を、
ダーティはモロに食らってしまった。
ビームが下半身に直撃。
左腿部の砲台のある部分に命中し、
ダメージこそ小さいが、見た目には派手に誘爆。
ついついジョーンも、
『スゴいよ!サム』
などと口走った。
この直後、煙が晴れると、
そこにはカオスの機動兵装ポッドがあった。
そう、ダーティに一矢を報いたのはこのポッド、
ひいてはそのパイロットたるサムであった。
ただ本人はというと、
「……喜んでいる余裕はなさそうだ」
と意外に冷静なのである。
なにせ、これから数秒後には、
煙を上げるのも気にせず前に出たダーティによって、
後退させようと動くも間に合わず、
ポッドはその爪によって切り裂かれ、破壊されてしまうのだから。
ダーティの片目はキョロキョロと周囲を見渡している。
前から左側、そして後ろへと。
顔自体も、動く左目の視覚となる右方面に向けられており、
全方位に対して抜かりない。
だから、すぐに見つけられてしまった。
ダーティより上477メートル、右1826メートル離れた場所に、
変形して航空形態となったカオスを土台にして、
人形で膝をつき、ビームライフルにてダーティを狙う、
ガイアの姿が。
「……気付いたか」
サムは見えないように上唇で歯を隠しながら下唇を噛んだ。
丁度、口が鳥のクチバシみたいに尖(とが)っている。
『どうするの?』
「……避けるに決まっている」
言ったときにも、もう動いていた。
ダーティの股から放出される大出力のビームが飛んでくる。
カオスはビームシールドを張りつつ、
左に体を傾けて攻撃を避ける。
「ジョーン、掴まってろ」
カオスの体はやや傾いたまま、斜め下向きに、
ダーティへは距離を取りつつ、やや高度を下げていく。
その間、ガイアはビームライフルで撃ちかけたが、
流石に狙いがつかず、当たらない。
それから適当なところで、両肩の側についていた、
残り2基のポッドを機体より分離する。
「……副長の指示を忘れるな。
撃墜は目的じゃない。あくまでも、生き残ることだ。
分かってるよな?」
『うん』
即答するジョーンに、
数日前に怯え戦(おのの)いた人物の面影はない。
その冷静な性格ゆえにそう大きなリアクションではないながら、
一瞬、サムは言葉を失っていた。
噛み締めた唇が小指の先の大きさぐらいには開いて、
それから、その口角がゆっくりと上がった。
「……行くか」