機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-10 強行突破(5/7)

その頃、俺は。

例のモビルスーツ、ヴェスティージのコクピットに座り、

そのときを待った。

『……カタパルトオンライン、射出推力正常』

アナウンスと共に、2本のアームに肩から持ち上げられ、

ヴェスティージの体は左側に移されていく。

鋳型のようなものに填(は)められ、

背中にはケーブルもつけられた。

また正面では、蓋となっていたハッチが上向きに開き、

ビームと爆発の光に彩られた戦場がそこに映し出される。

レールも延びた。

『……進路クリア』

ヴェスティージがゆっくりと下ろされ、

足が型のようなものの上に固定される。

例によって、横パネルに出た3つの文字が「CLEAR」へと、

黒に赤字の「ABORT」が青に黒字の「LAUNCH」へと変わった。

『……ヴェスティージ、発進どうぞ』

「シン・アスカ、ヴェスティージ……」

加速が始まる。

「……行きます!」

すぐに機体が押し出され、レールの上を進んでいった。

ケーブルは外れ、レールもすぐに途切れた。

あとは、自力で飛ぶことになる。

射出後に少し加速してみれば、強烈なGが全身を襲った。

何度か操縦してみて、ある程度は慣らしたつもりだったが、

シミュレーションと本番ではまるで違う。

急に重いものを投げ渡されたような衝撃がのし掛かり、

一度機体の動きを止めた瞬間に、

衝撃より解放された体が、

コクピットの端にコメカミから叩きつけられた。

それからあと、

血が垂れているのが分かるまで、少しの時間がかかった。

ヘルメットの下に添えていた左手へ、

宇宙服の隙間を抜いて、血が直接皮膚を濡らす感覚がした。

俺は画面に反射した、額より血を流す自身の顔を見ていた。

瞬間にフラッシュバックした。

おかしなことに、

今、自分に見えている自分が、自分ではないのだ。

黒いハズの髪は茶色に。

そこに映っていた男もまた額から血を流していた。

しかも、彼の場合は、

その血が顔を塗り潰してしまいそうな程だった。

自分ではない自分。

その正体を俺は、本当は分かっていた。気付いていた。

だって、それは……

『副長!』

その声は、俺を現実に引き戻すように俺へと突きつけられた。

「……マユ」

『はい?』

違う。違うんだ。分かってる。俺が呼んだマユは彼女じゃない。

それに、ここにいるのは、彼じゃない。

「ヴァイデフェルト……俺は、大丈夫だ」

『……副長!』

そう呼ぶヴァイデフェルトの声が遠方より聞こえていたが、

反応する余裕は俺にはなかった。

……カーン・カーァのムナガラーが接近してきている。




どれくらい離れていたろうか。
スペースデブリに紛れ、近付く黒い影がある。
宇宙の闇に溶け込むような黒いボディをした、頭デッカチのザク。
いや、大西洋連邦製の『RGX-106 ハイザック』のようだ。
その改良機なのだろう。
後頭部にレドームらしき大きな円形の突起があり、それは最早、
胴体がもう1つあるかのような大きさである。 
「見えた……」
最初にそれを目撃したのが、
このハイザックのパイロットだった。とはいえ、まだまだ遠い。
機体そのものの視力ではまるで届かず、その手に持つ、
狙撃用に改良されたビームライフルのスコープを介して、
辛うじて豆粒のように動く敵を視認できるというレベルだ。
その中には、
「おい!……見たことないのもいるみたいだぞ?」
その機体はヴェスティージ。
青い装甲に守れたこの白き巨人が、
ザフトの新型であると、脱走兵は知らないのだろう。
少なくとも、このパイロットは知らなかったようだ。
『慌てんなよ?
……連中だって、俺たちのムナガラーをよく知らないんだ』
カトリーナがハイザックのパイロットに応答する。
『これだからナチュラルは……』
と漏らすリタの声も聞こえる。
「どうする?……カーン・カーァ」
ハイザックのコクピットの画面には、一人の男性が映っていた。
豚のように上を向いた鼻と、
逆三角を描く大きな耳が特徴的な丸刈りの男性。
やや白っぽい肌の黄色人種といった風貌である。
男は薄ら笑いを浮かべた。
『狩るに決まっておろう。我々がな』
カーンの発言に、カトリーナとリタも、
『そう言うのを待ってたぜ』
『ナチュラル小僧は黙って見学でもしとくだなぁ』
と口々に笑う。
「いや……待てよ。流石に……」
『安心しろよ?オマエにも手柄は残してやるから』
「そういう問題じゃなくてよ……」
言いかけたハイザックのパイロットの台詞を制す形で、
カーンの顔は画面から消えた。
代わりにまもなく彼は、
『ヤツは我々……「銀の黄昏」の手柄にしてやろう』
というカーンの声を聞いた。
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