機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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カーン・カーァ。
タイ語で「コウモリ」を意味するその名は、
そのそれらしい見た目にちなんだアダ名だというのが専らの噂だが、
東アジアで生まれた第一世代コーディネイターの彼は天涯孤独。
本名を知る者はなく、また語る者もない。
実年齢も今となっちゃ定かではないが、少なくとも、
ヤキン・ドゥーエ戦役初期のデータに残った彼の肖像は、
まだ若く、愛嬌のある顔立ちであった。
ヤキン・ドゥーエ戦役時点では、
おおよその同世代とみられる「仮面の男」ラウ・ル・クルーゼ、
「砂漠の虎」アンドリュー・バルトフェルド、
「氷原の狼」ホルローギン・バータルらに比べれば、
腕はまだしも知名度がない男であったが、
そんな彼の名を一躍有名にする事件が起こった。
C.E.76年の最高評議会議長暗殺事件である。
当時の最高評議会議長はルイーズ・ライトナー。
ユニウス戦役の停戦を実現し、
各国との平和協調外交を行った、評議会左派の大物。
同年にラクス・クラインへ、議会での承認に基づき、
「プラント国家統一の象徴たる第一人者(プリンセス)」
の称号を贈ったことでも知られた。
その日は、
エルキュール・リヨン・サン=ピエール大統領の就任祝いで、
ノイエラグーネ市にて式典が予定されており、
ライトナー以下主要な議員を連れた船団が、
首都アププリウスを出発したところであった。
これをカーン・カーァと、
彼の部下たる「嵐の三人娘」ことカトリーナ・スティーヴィンズ、
リタ、ウィルマのブッシュ姉妹が襲撃。
護衛部隊に壊滅的な被害を与え、ライトナー含め議員は皆死亡。
カーン・カーァら主犯の4名は指名手配となるも、
現在まで捕まることはなく、現在に至る。
有名を馳せた人物の多い脱走兵の中にあっても、
こと個人の悪名という意味では、彼に勝る者もあるまい。 


PHASE-10 強行突破(6/7)

傍らに2機のムナガラーを従えると共に、

ビームライフルを構え、こちらを狙っている。

カーンが引き金を引くと、2機のムナガラーは分散。

カーンが牽制するように連射する中、

1機は右から、1機は左から接近してくる。

右のムナガラーはビームライフルで撃ちかけ、

左のムナガラーは武器を持たずに、接近してくる。

『新型め……性能を発揮する前に倒す』

そんな声が聞こえてきた。右のムナガラーから。女の声で。

(それがリタの声だと、俺が知るハズもない)

対する俺は、ビームシールドを……張らなかった。

『……なっ!』

横の2機を無視し、機動力に任せてカーンに接近。

腰のビームピック(小型のビームサーベル)を抜き、

適当なところで投擲(とうてき)するつもりが、

圧倒的な機動力により予想以上に早く間合いが詰まり、

結果的に居合いのような形となり、カーンを斬りつけた。

同時に左のムナガラーから放たれたアンカーが、

俺を襲わんと伸びてきていたが、

こちらのスピードに着いてこれなかったようで、

背後の何もない空間を撃ち抜くに留まった。

『チッ』

カトリーナの舌打ち。勿論、相手の素性はこのときは知らないが。

カーンは一瞬動きを止めたが、そこは相手も腕利きらしい。

ビームライフルを盾に身を守り、後退。

ライフルの爆発でよく見えなかったが、

ムナガラーは退きながら、

こちらもこちらでアンカーを2本撃ち込んできた。

ここでこちらもビームシールドを展開。これを耐える。

『テメェ……よくも!』

ビームサーベルを抜き、カトリーナが背後から襲いかかった。

だが、機動力の差がものを言う。

相手が間合いを詰めるより先に、振り返って体当たりを仕掛けた。

この間、リタも、

ビームライフルで攻撃を仕掛けていたが、

こちらのスピードの前だ。1ヶ所たりとも被弾しなかった。

『……うっ』

ぶつけられたカトリーナは、数秒前の勇ましい台詞とは裏腹に、

そんな頓狂(とんきょう)な声を上げ、

体当たりに軽く吹き飛ばされた。

こちらは尚も続くリタの乱射を避けつつ、

弾かれたムナガラーの背後で旋回して体勢を変え、

両肩の上に出る白きL字型のビーム砲

(正式にはモービィ・ディックプラズマ収束ビーム砲というらしい)

を撃ち込んでやった。

赤い光を放ち、高出力ビーム砲とは思えない素早さで放たれた、

この2門のビーム砲は、

片方がリタを、もう片方がカトリーナをそれぞれ襲った。

リタの方は胸から腹にかけて大きな風穴を開け、まもなく爆発四散。

『……リタ!』

そう叫んだカトリーナ本人は、ギリギリで回避行動を取り、

どうにか避け、少しかすった程度だったが、

それでも両足を破壊された。

更に数秒後、7機のリック・ドムと5機のザクが彼らに駆け寄り、

こちらにも3機のアダガが襲ってきた。

『……副長!今、援護に!』

などとヴァイデフェルトは慌てていたものの、

俺に言わせれば、まるで敵ではなかった。

アダガの1機を足蹴にし、一気に機体を後退させた。

ほぼ同時に、両側ともに、

前腕部を覆っていた青いカバーが持ち上がり、

中に仕込まれた銃身が現れる。3連装のガトリング砲が……

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