機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-01 星屑に潜む陰(7/7)

そのとき、リョウはなおもコクピットの中にいた。

画面脇のオレンジ色の背景をした棒グラフ状のメーターが、

縦方向に伸びたり縮んだりして。

しばらく見ていれば分かるが、それはどうやら、

音の大きさに合わせて、長さを変えているらしく、

数人の人間の声を無線で次々拾っていたコクピットでは、

メーターはある程度の長さを維持しつつ、

多少長さが変わる程度に収まっていた。

さて拾っていた声というのは、以下のものである。

『……敵機接近!

この形態、データにはない合致する機体はありません』

まず、そんな若い男性の声が響いた。

『噂の新型ですか……早速(さっそく)』

その声に、リョウは小さく、

「ホルローギン……さん」

と反応したが、聞こえなかったのか、

リョウの方の音声が発信されない状態だったのか、

とにかくホルローギンの方に反応はない。

『……どうされますか?クールカ隊長』

ホルローギンの問いに、ヤンは。

『愚問だ。

如何に性能的に優れていようと、相手は単機。勝算はある。

迎え撃つだけのこと……モビルスーツ部隊を出せ!』

その力強い声に、ついついリョウも歯を食い縛(しば)った。

ただ、その直後、

『……うふふ』

との女性の笑い声に、その表情は崩されることとなるが。

リョウの背に走ったのは、奇妙な悪寒(おかん)。

ただ、声を聞いただけにも関わらず、

誰かに見られているような感覚に襲われる。

いや、それだけじゃない。

目に見える世界は青いベールに包まれたような錯覚と共に、

あらゆる音が空間より消えた。

けれども、けして話が終わったのではない。メーターは動いている。

そのうち、

『強がっちゃって……可愛いお嬢さんね』

と、そんな声がどこかから聞こえてきた。

メーターの動きを目で追っていたリョウには、

それが無線で届けられた音声でないことに気が付く。

『……ホントは怖いクセに』

首を引っ込めたのか、肩を上げたのか、あるいはその両方か。

リョウの背筋を凍らせた声。

やはりメーターの動きと、声との動きが連動していない。

否、それどころか、

まるでその声が後ろから聞こえてきたような……

「……ハッ!」

勇気を振り絞り、リョウは振り向くが、

そこにあるのは背中を預けたオレンジのシートだけ。

ましてシートの裏側などに人が入れるスペースはない。

「どう……して」

『何を探しているのかしら?』 

「……えっ?」

次は耳元で囁(ささや)かれたようだった。

小さな風がリョウの耳に触れる。丁度、人の吐息のような。

勢いよく振り返ったが、どこにも人の姿はない。ただ……

『私を……探しているのかしら?』

その声が聞こえたとき、彼女は見てしまった。正面の画面を。

画面に反射する、茶色いヒジャブを頭に巻いた人の姿を。

「……ウソ」

『残念だわ……時間切れね。もう少し、アナタで遊びたかったけど』

ヒジャブを巻いた女性は、前傾姿勢気味で、

その顔の大部分は陰になって見えないものの、

その口元だけは分かる。裂けているように大きく開いているのが。

ただ、彼女の姿はすぐに消えて、

リョウを襲った謎の現象をなくなり、ブリッジからの、

『……発進どうぞ』

という声がリョウの耳に入った。その安堵(あんど)も束の間、

『ジェイナス・ビフロンス、《ダーティ》……出ますわ』

と同じ女の声が聞こえた。ただし、今度は無線越しで。




同じ頃、上空を巡回中のIm/A-Pのレーダーにも反応が。
「聞こえてるよ、戦艦『フレイヤ』……
アーモリー・ワン上空で、所属不明の船舶を捉えた。
この時間帯、入国を申請している船舶はあるか?」
画面にパーディの顔が映る。
『……こちらにそんな連絡は来てません』
すぐに件の船舶は姿を現した。角の丸い三角形状の船舶で、
先端部とその周辺は黄色く、他は濃さの違う2色のグリーン、
という色合いだ。
まだ手を翳(かざ)せば隠れるのでは?と思う程小さいが、
見るところ、この先端部などに、いくつかの砲口が確認できる。
「……こちらザフト。
アーモリー・ワン上空を運航中の所属不明艦に次ぐ」
というように、無線で船舶に呼びかけを始めていた。
「貴艦は現在、プラントの領空を侵犯している。誘導は行う故、
速やかに離脱されたし……こちらザフト。応答せよ」
相手の船舶に反応はないまま、数秒が経った頃、
戦艦『フレイヤ』から無線が入った。アレハンドロの声で。
『送ってもらった映像から判断して……
相手の船は、《ロディニア級戦艦》の可能性が高い』
ハサンは一瞬、反応が遅れてしまった。
「アレハンドロ?……どうしてオマエが?」
対するアレハンドロの反応は速い。
『話は後ですよ、先輩。相手は戦艦なんだ。
それも多分……ザフト脱走兵どもの使ってる、な』 
そう話している間に、向こうの船舶……いや、戦艦のハッチが開いた。
ハサンは再度無線を使い、相手の戦艦に呼びかける。
「こちらザフト。威嚇射撃を行う。警告は既にした。
これ以後、貴艦にいかなる損傷を加えたとしても、
ザフトが責を負うことはない……早急に、離脱されよ」
やはり返事は返って来なかった。
「パーディ……艦内に呼び掛けてくれ。戦闘になる」
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