機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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PHASE-10 強行突破(7/7)

異変に最初に気付いたのは、カーン・カーァだった。

アンカーの照準を、こちらのガトリングの銃身に定めた。

判断のミスだった。過信もあったのだろう。

回避動作を取るか、せめてシールドを貼っていれば。

それでも、あと1秒。あと1秒早ければ、運命も変わったかもしれぬ。

しかし、その1秒が命取りだった……

両腕のビームガトリングが掃射された。

その数、数十秒で2000発に及ぶ。

それは最早、雨や霰の騒ぎではない。

空に向けて放たれるのだから、向きこそアベコベだが、

滝のように流れていった。

正直に言えば、俺自身それは想定外な程だった。

掃射から2、3秒にして、

カーンの前にいた連中は全身穴だらけになって散った。

『なっ……そんなことが……』

アンカーの照準を合わせていたレバーから手が離れた。

もう何秒もしないうちに自分は死ぬのだと。

理解したとき、次の1秒はひどく長いものに感ぜられたのであろう。

『……ヒヒッ』

と場違いにも笑う声が聞こえた。

あれはきっとカーン・カーァのものであったろう。

何故かは知らないが。

死に際の数秒、彼が何を思ったかなど、俺が知る由(よし)もない。

ただ、確かに聞いた。

『カソグサ』

という名前を。

妻か恋人か、母親か娘か、それは定かではないが。

そして見た。その最期を。

味方という盾を失ったムナガラーは、全身にビームを浴びて、

その名前の由来になったであろうかの神格のごとく、

赤い身体を肉塊のごとくに潰し、

触手代わりにアンカーを垂らす様を。

余談だが、このガトリング砲の名はクトゥルフ。

過去に製造されたガトリング砲にハイドラの名前がついたことから、

クトゥルフ神話にて、

ハイドラをその眷族とするクトゥルフの名前がついたのだろうが、

同神話にて、ムナガラーもまたクトゥルフの眷族であり、

かつ右腕の異名を取る。

そのムナガラーが右腕のクトゥルフに穴だらけにされるとは、

果たして何の因果か?

ともかく、中のカーン・カーァを含めて、

それが原型を留めぬ姿となり、やがて破裂するまで、

かかったのは、ほんの4秒足らずであった。

さて、周囲にいたモビルスーツたちであるが、

ビームシールド等を構えようとしたが到底間に合わず、

すぐ蜂の巣へ。

カトリーナ自体はその射角からたまたま被弾を免れたが、

クトゥルフの砲撃はより後衛まで届き、

2000発を撃ち終えたときには、

空に掛ける橋のごとく、数百メートルの道が出来ていた。

「……クッ」

歯噛みした。

何せ敵も回避が間に合わぬ程の砲撃である。

弾は敵味方を選んで命中してなどくれない。

残骸から見るに、4、5機、味方のジズが巻き込まれたらしい。

『……副長?』

ヴァイデフェルトの声が聞こえた。

「……あぁ、分かってる。

仕事はしたんだ。後続が来るまではまだ時間がある。

援護に向かうぞ!『フレイヤ』のな」

『はい』

額から流れた血はいつの間にか止まり、

顔には乾いて赤黒い痕となって残っている。

「こんな顔じゃ……アレハンドロに笑われるな」




そのアレハンドロ、ひいては地上での戦闘はどうだったか。
花火のように打ち上げられたアビスの砲撃は、
残念ながら一発たりとも命中せず。 
かえってお返しとばかりに放たれたビームライフルの一撃が、
その左足を撃ち抜く。
「……クソッ」
両手の先にビームサーベルを形成。飛び上がるアビス。
しかし、
「……あれっ」
謎の衝撃が機体の肩口か首筋の辺りに乗り、
アレハンドロの体も少しだけ前に傾いた。
正面の壁にはぶつからない程度、
しかし咄嗟に両手を左右の壁につく程度には強烈で。
持ち直し、
画面に映る、自身の背後に『ZGMF-X56SR-3』の文字を確認した。
「……何だよ?ダイ」
もう一度襲った衝撃。
それはアビスの体を足場に飛ぶモビルスーツによるものだ。
「人を踏み台にしやがって……」
『これで頭を冷やせ……なんてな』
頭上に達した『ZGMF-X56SR-3』。
それは消えた太陽のように白いボディをしたIm/A-Pだった。
背負うシルエットはバスタードソード。
各部に紫のアクセントを加えており、
特に右腕にはR・Z・Bの文字が刻まれている。
「そこは、首だっつーの」
苦笑するアレハンドロを余所に、
大剣を振るうダイのIm/A-Pを避けるクールカ。
クールカのアダガが避けた先にいたのは、ホルローギンのドミンゴ。
その剣をビームシールドで受けると、静かに呟いた。
『その色はまるで……』
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