機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
ダイは大剣クラレントを背中へと戻しつつ、
逆の手でショートライフルを抜き、撃ちながら後退する。
『……息巻いた割には、冷静なようで』
ホルローギンの声が小さくなる。
ただし、その弾道は盾を抜いてドミンゴを傷つけるには至らない。
『気が引けますがね……若い目を摘むのは。
しかし、これも、仕方ありませんね』
ホルローギンの呟きが終わる頃には、
彼の乗るドミンゴの体は若干の前傾を取っていた。
「……来る」
ダイも当然、それは察知した。
察知し、ただ逃げることは出来ないと判断したのだろう。
クラレントを戻した右腕が、今度はブーメランに手をかけている。
なお、ブーメランは背中に三角帽のような形で置かれており、
かつ左右とも端の部分に三角形の穴が空いていて、
手をこの穴の部分に入れて掴み、投げるのである。
また三角帽の形態は2つのブーメランが結合した状態であって、
投げる際にはこれが中央で割れて2個となった上、
三角帽の欠けたところをほぼ完全に補う形で、
ビームの刃が形成される。
……長々と解説したが、
要するにダイはブーメランを取り、投げつけたのである。横向きに。
しかし、
『……おっと』
ホルローギンも、そこはベテラン。腕がある。
飛んできたブーメランに絶妙な角度でぶつかり、
弾く程度はお手の物。
『ルートは悪くなかったんですがね……』
「……クッ」
歯軋りしつつ、第2球。もう一方のブーメランを投げつける。
今度は縦向きに回転させながら。
『生憎……私は大道芸人じゃありませんので』
そう漏らしつつ回避したホルローギンは、
そこから一気にダイとの間合いを詰め直すのである。
「受けて立つ」
と一瞬構えたダイだが、この男の強みはその視野の広さにある。
近付く相手を見つめながらも、
その周囲にすら気を配る余裕がある。
まあ、その分、近くが弱く、
間合いを見誤るミスで先程は首を刻まれた訳だが。
……とにかく、その視野がここでは活きた。
「……アレは?」
ダイには見えた。
近付くドミンゴの体の背後に浮かぶ、白く細長い物体を。
それがビームサーベルの柄と分かるまで、時間はかからなかった。
そうして思い馳(は)せる。近付く相手の体の角度を。
改めて確認して、直観は確信へと変わる。
右足のコンテナが正面のIm/A-Pから視認できない位置にあることを。
「……サブマシンガンか」
把握した瞬間、次の対応は決まった。
ダイはあえて前に踏み出した。それは相手のリズムを崩す為。
それも武器も持たずに。
『……ほぅ』
思わず感嘆の言葉を漏らしたホルローギン。
相手の左腕を自身の右手で掴み、やがて肩と肩とがぶつかり合う。
「これで……マシンガンは使えないな!」
とのダイの表明通り、
ホルローギンのシールドが邪魔になってマシンガンは撃てない。
撃てば、シールドに防がれてビームが飛び散り、
ドミンゴの体を傷つけてしまう。
これがダイのシールドなら、
マシンガンが飛び散った先がダイの機体を傷つけただろう。
加えて、仮にホルローギンがシールドをここで剥がせば、
Im/A-Pのショートライフルが動く。
ショートライフルの射角からなら、
かえってドミンゴのコクピットが狙える。つまり……
『私の動きを封じた、と……言いたいところでしょうか?』
ホルローギンは妙に嬉しそうにそう言うのだ。
これがビームサーベルなら、
ビームシールドの隙間からIm/A-Pを攻撃できたろう。
ただし、追い詰めたハズのダイの表情は硬い。
「いいや……そう上手くはいかないんだろ?」
『そこまで、お見通しとは』
ドミンゴより手を離したダイ。シールドを足場にして飛び上がった。
彼が投げたブーメラン2本が返ってきたのは、
それからすぐだった。
『ブーメランを手にする隙に攻勢へ出るつもりでしたが……
いやぁ、大したものですね。末恐ろしい』
ブーメランをキャッチするIm/A-Pの姿を見ながら、
ホルローギンが笑う。
『骨が折れそうだ』
笑い声を上げるホルローギンに、
「……舐めやがって」
と反論するダイ。
しかし、その顔はホルローギンの方を向いていなかった。
何せ、この2、3秒後には、
長距離射程のビームライフルがダイを襲うからである。
『流石に、気付きますか』
ホルローギンはなおも笑い続けて。
ビームライフルの弾道を辿れば、そこにいるのはクールカのアダガだ。