機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
左腕の付け根辺りを的確に撃ち抜いた一撃。
ダイだって、咄嗟に回避運動を取ったのだ。
狙いはズレているハズ。
それをこのヤン・クールカという男の狙撃能力は、
的が回避した際のおおよその位置を把握し、撃ち抜かせた。
『お見事です』
と誉めるホルローギンを余所に、当のクールカは、
「コクピットを狙ったのだが……私も腕が鈍ったらしい」
などとため息を漏らした。
ただ、そう呑気に話しているほど暇ではなく、
まず下で爆発が起こり、自然視線がそちらへと誘導される。
次いで、ダイのブーメランが死角より投げつけられた。
今度はホルローギン、
下から上へと突き上げるようにビームサーベルを抜き、
居合い切りの要領でブーメランを両断。
対してクールカは、ビームライフルの銃口にサーベルを形成。
本来ならビームの弾丸として放出されるものを、
刃として銃の先に維持したのである。
これを形成したのが丁度、ブーメランの接近時で、
ブーメランの刃もドミンゴの首を掠める位置まで近付いていたが、
クールカが少し首を逆側に傾けて、これを避けた。
『……クソッ』
クラレントをまた抜いたダイのIm/A-Pがホルローギンに詰め寄る。
更に下でも爆煙を抜いて、飛び魚のごとくアビスが跳ね出て、
クールカへと斬りかかった。
アビスの両手の先に形成した2本のビームサーベルがクロスして、
Xの字を描きながらクールカへとぶつかる。
クールカもクールカとてビームライフルの刃で受けようとしたが、
今度は少し遅かった。
アビスの刃が、アダガの刃に対してではなく、
ビームライフルの銃身辺りに突き刺さってしまったからだ。
「……またか」
クールカの口角が下がる。ライフルを投げ捨てたアダガ。
適当に頭部のビームガンを撃って牽制しつつ、
こちらもこちらで2本のビームサーベルを抜いた。
ダランと垂らされたクールカの両腕。
ビームガンの乱射に対して、両肩のシールドで受けるアビスだが、
その隙間を抜く形でアゴにあたる部分に被弾してしまう。
巻き上がる煙を上手く目眩ましに使いつつ、アレハンドロは1度後退。
「……良い芽が育ちつつあるようだな。ザフトにも」
そう漏らしたとき、
クールカの視線は画面の右側に映るIm/A-Pの方に向いていた。
ホルローギンとビームの刃を鍔迫り合う、ダイの方に。
しかし、彼もそう呑気してはられない。
なにせ、敵はアレハンドロのアビスだけでなく……
「拠点防衛用にはジズは向かないことぐらいは、流石に気付いたと」
地上からアダガらに砲撃を加えてくるものがいる。
その機体、名を『ZGMF-1014C ゲルググハンターC』。
肩に大型のキャノンが乗った青っぽいソイツらは、
祝砲さながらにやたらめったらに撃ちすくめている。
クールカやホルローギン、またはダーティなどには被弾しないが、
リックドムやらザクやらにはいくらか被害が出ている。
そして今、高層ビルの上に舞い降りた口から煙を吹くアビスが、
胸からアダガに向けて赤く太いビームを放った。
『参謀本部をやらせるかよ!』
とのアレハンドロの咆哮と共に、打ち上げられたビームが空で鳴いた。
──プラントという国家は、
一口に言えばスペースコロニーの集合体。
砂時計型をした1基のコロニーを1「区」としてカウントし、
その何区かを纏(まと)めて「市」と呼んでいる。
例えばアーモリー市の中に、
その1区としてアーモリー・ワン、アーモリー・ツーがある訳だ。
150余りの区と、20程の市のうちで、例外は3つだけ。
1つは、L5にあるアププリウス。
プラント最高評議会が置かれる建国以来の首都だ。
もう1つは、L4の新興都市ノイエラグーネ。
その名はドイツ語で「新しいラグーン」の意で、
外海と隔てられた水域を指すラグーンの名に相応(ふさわ)しく、
同じL4領域内でも最も近いグナイゼナウでさえ、
約40万キロ離れており、
これは月と地球の距離とほぼ同じ。
そんなこの孤島は、C.E.77年の建設以来、
ラクス・クラインによる事実上の直轄(ちょっかつ)状態にある。
その美しさから「宇宙(そら)のヴェルサイユ」と呼ばれた、
ラクスの「宮殿」オールド・サマー・パレスを筆頭に、
各国領事館が置かれた外交と文化の中心地として機能。
その多くが50万人程度の居住を想定している各コロニーに対して、
200万の人口とその居住を可能としたコロニー自体の広大さから、
他を遥かに凌駕するプラント最大の都市となった。
さて、話を戻すが、例外的に区としてではなく、
単一のコロニーのみで1つの市とカウントされる3都市。
最後はグナイゼナウ。その別名を、「参謀本部」という……