機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
クールカが語りかける。
ホルローギンは自身に攻撃を仕掛けてくる、
ダイと鍔迫り合いを演じながら、少し唸っていたかと思うと、
『宇宙に展開した部隊が多かったのでしょう。考えすぎでは?』
そう言葉を返した。
「杞憂であれば……良いのだがな」
クールカも呑気してはいられない。
下からはあのアビスが接近してきていたからだ。
殺し損ねた2機のゲルググと共に。
3機の砲撃が一斉に下から襲うも、
いずれもクールカのアダガを傷つけるには至らない。
「テメェは俺が……今度こそ!」
空手の正拳突きのようなモーションで伸ばされるアビスの右腕。
その先に光るビームの刃が、クールカのアダガを襲う。
そのまま刺されば、胸を貫いたであろうが、
相手はかのクールカ。当然のごとく避けられた。
それも、アビスの胸にあるビーム砲への警戒であろう、
右側に動いた。
この後、アビスの右腕は肘から先を切り落とされてしまうのだが、
それでも残った腕が邪魔で胸のビーム砲が撃てない。
無論、体勢を変えれば問題ないのだが、
向き直って胸を相手に晒すのには当然リスクが伴う。
腕を切り落としたビームサーベルに、そのまま腹を刺されて、
討ち取られるかもしれない。
だからあえてアレハンドロは腕を退(ど)けなかった。
退けずに、ほぼそのままの姿勢でビーム砲を撃ち放った。
合理的であるとはいえ、
自身の機体を傷つける判断というのは、そう簡単ではない。
かつクールカの判断が裏目に出た偶然もあった。
盾代わりに利用した腕がかえって視界を遮り、
砲の発光を上手く隠したのだから。
故に流石のクールカも、多少反応が遅れた。
それはもう、左肩から左胸を大きく削り、
顔のおおよそ左半分を消し飛ばす程度には。
『……大した奴よ』
クールカもこれには驚きを隠せず、
後方に飛んで距離を取るのだが、
その際に肩を削られた左腕がプラプラと揺れた。
クールカも慌てて左膝を叩いて動作を確認。
どうやら動くには動くようだが、
大きく動かせばそのままちょん切れてしまいそうであった。
同じ頃、より高いところでは、
ダーティ相手にサムとジョーンの2人が奮闘していた。
もっとも、厳密には2人だけではないのだが。
『ホントに、大丈夫なのか?サム。相手はハサン先輩の……』
傍らを飛ぶジズのパイロット、シージーの言葉だった。
「……分かっている。言われなくても」
そう語るサムは、シージーの方など見てはおらず、
分離した2基のポッドでもって、ダーティを攻撃していた。
見上げれば、片方のポッドがダーティの正面に、
もう片方が左脇に、
こうして放たれたビームが空中に「ハ」の字を描いた。
下から見れば同じ高さを飛んでいるよう見えるポッドだが、
いざ放たれれば弾道から分かる。
正面のポッドはおよそダーティの腹部の高さにあって、
左脇のポッドは膝の高さにあったことが。
この両方を回避するとすれば、ダーティは上に飛ぶ。
下にいるサムらとすれば、外しても相手と距離が取れると、
そう考えたのだろう。
しかし、ダーティの動きは速かった。速すぎた。
その機動力は放たれたビームを避けつつ、
下に降りるという離れ業を可能にしたのだから。
流石のサムも目を丸くしたが、すぐに表情を引き締めて、
ポッドの砲口を下に向け、再度砲撃した。
ただ、また間に合わない。ダーティが速すぎるのだ。
あっさり避けられた。
『……おっ、おい!』
シージーの声は震えている。
サムは相手にせず、ポッドの射角を調整し、
ダーティを追撃するが、3度撃って3度とも掠りもしない。
慌ててシージーも砲撃を加えるが、これまた当たるハズもなく。
『おいって!サム!』
叫ぶシージーに、サムは答えない。
答えず、ただポッドによる当たらない追撃を続けるだけ。
そのうちに、ダーティは近付いて来る。
カオスは後退しつつ、ビームライフルと機首のビームガンで攻撃。
これにガイアと、シージーのジズの砲撃も加わり、
空中に蜘蛛の巣を貼るように、
数多(あまた)のビームが飛び交い、時に交差する。
だのに、当のダーティにはまるで当たらないのである。
そのスピード、そして異常に滑らかな方向転換。
右へビームが飛んでくれば左に動き、左にくれば上へ、
上には右へ、次は斜め下へと。
的確に、かつ最小限な動きでもって。
『……全然、当たらねぇじゃん』
そう怯えるシージーが口にした頃に、ダーティの動きが止まった。
折角の好機ではあるが、あまりに突然のことであったから、
かえって3人の腕は止まってしまった。
そこから約1秒後、彼らは聞くことになる。
『もう……めんどくさいなぁ……』
という声を。