機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
『また会えたね……「お兄ちゃん」。
この前は、私の可愛いコたちがお世話になったみたいで……』
彼女の言う「可愛いコたち」。
その意図するところをまだ知らぬ俺はただ、
「妹だったり、母親だったり……忙しいヤツだな」
とだけ言い返した。
その忙しいヤツはというと、腕を延ばさないまま、
両手5本の指先からビームを放ってきた。
こちらはそれを避けつつ後退し、
お返しとばかりにビームピックを投げつけた。
1本目はダーティのビームに撃ち落とされ、破壊されたが、
その陰に隠すように投げたもう1本は、
ギリギリまで気付かれず、ついにヤツの右目に命中した。
『……イヒッ』
ダーティのパイロットのものだろう。
不快な笑い声が聞こえてきた。
次は、逆にこちらから接近してみる。
頭部のコメカミ部分にある、
2門のビームガンを連射して牽制しながら。
しばらく、ヤツは動かなかった。
しかし、俺が左腰に下げた剣
(カーテナとの名称がついた、U字を描く鍔が特徴的なビーム斬機刀)
に手をかけた辺りで、上に飛んで逃げた。
「……逃がすかよ」
顔を上げて、ビームガンを撃ち込むと同時に、
カーテナを右手で抜いた。
更に、左手を背中に回し、ビームライフルも構える。
上空よりダーティは、例の下半身から出るビームで攻撃してくる。
こちらは後ろ歩きする形で、後ろ向き、また下向きに移動。
これを避けつつ、
モービィ・ディックを再び構え、ヤツに撃ち込んだ。
まともに狙わず撃ったもので、
片方はヤツがボディに張った陽電子リフレクターにより防御され、
もう片方は命中させしなかった。
その後、一瞬の間を経て、ヤツは左手にビームの爪を形成させ、
本体から分離。
更にこちらへと背中を向けて、左目を背中側に回す。
相手の背骨のように居並ぶビーム砲たちが上から順に火を吹き、
左右から分離した腕が、ビームを飛ばしながら接近してくる。
ビーム砲の1射目を左手のビームシールドで受けたところ、
第2射がライフルに命中し、これを破壊した。
第3射は避けた。第4射も同様。
右手の指先による伸びるビームが左肩を削ったが、
逆にこちら右手のカーテナでヤツの右足を刺し貫く。
『……ウクッ』
呻き声のようで、それでいて喜んでいるようでもある。
……そんな声が聞こえたのは、このときだった。
その声を、果たしてどう表記すべきか。
その声を、果たしてどう表記すべきか。
ンの音のような、アの音のような。
妙に甲高く、少し笑っているようでもある。
ダーティのパイロットは、ともかくそんな奇妙な声を発し、
腕を戻し、機体を後退させ始めた。
2、3秒ばかり、俺も対処に困ったが、
ダーティの動きが緩慢になったのは事実。
チャンスとばかりに、一気に間合いを詰めてカーテナで斬りかかる。
ダーティは避けもしなければ、
リフレクターすらロクに用意せず、あっさりこちらの一撃を食らった。
あまりに動かない上に、
こちらもヴェスティージの速さにタイミングを合わしきれず、
その一撃はコクピットを狙うハズが反れて、
背中側から左肩を貫いた結果となった。巻き起こる煙。
その煙に視界を遮られたかと思えば、
途中から色が変わっていったのである。例の暗い煙だ。
レーダーからダーティの姿がロストする。
俺は、ビームガトリングを構えた。右腕だけ。
適当に100発程度、煙の中に撃ち込んだが、
そこにヤツの姿はなかった。
ダーティを見失った俺は、周囲にいた敵のアダガに左腕をかざした。
赤いアダガ。赤と黄色のカラーリンクに、
俺の脳裏をある名前が過(よぎ)る。
いや、確かに聞いたではないか?アーモリー・ワンで、既に……
そう逡巡(しゅんじゅん)しながらも、
最終的にはガトリングを撃たんと試みたが、今度は1秒遅かった。
最初の数発が出た瞬間に、
突如背後から現れたダーティが、
こちらの頭部をビームの爪で握った。
握り潰すように、それでいて引き抜くように、後ろへと引っ張る。
ヴェスティージの頭部は、ねじ切られるようにしてもげ、
またその手に引っ張られ、
ガトリングの銃身も反れ、機体の残骸などに被弾した。
次いで例の下半身からのビームが放たれ、
ガトリングは左腕ごと破壊された。
ただ、その射程はそこに止まらず、
ヤツにとっては味方であるハズのザクさえ撃ち殺し、
奥に控えていたヴァイデフェルトが乗るジズの片腕すら破壊した。
『ヒヒヒッ……アヒャヒャヒャヒャヒャ!』