機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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『……ヒヒッ』
その声は笑っているようで、しかし、泣いているようにも聞こえる。
そんな声だった。
「何だか知らねぇが……
潰すんなら、右手からの方がよかったんじゃないのか?」
ヴェスティージの右手には、なおもカーテナが握られている。
少し持ち変えれば、ことは済む話だ。
逆手での操作、それもモビルスーツのものなんて、
勝手が悪いこと、この上なかったが、それでも刃は突き刺さった。
胸の上辺りだったろう。
そこから上向きに力を加え、刃は胸から肩口を引き裂いた末、
その勢いでヴェスティージの体を若干後方に回しながら、
ダーティの体から外れた。
そうした体の動きに合わせて、両足を折り曲げ、
ダーティの体にぶつかったところで、そこを足場に踏み込み、飛ぶ。
こちらがこのように宙返りする間に、
ダーティもその場でターンし、背中をこちらに向ける。
俺はカーテナの刃で上から下へと、相手の背中を切り裂こうとした。
ダーティは例のビーム砲を撃とうとした。
その結果は……
こちらの一太刀が上の3つのビーム砲は破壊するが、
胸の裏側辺りにある砲口までは間に合わず、完全には破壊できず、
一部を傷つけられたところで起動し、砲は誘爆。
カーテナがシールド代わりとなり、こちらにダメージはなく、
流石に剣の方はボロボロになったが、それ以外に損傷はなく。
逆にダーティの方がダメージは深刻だった。
首は折れてダラリと前に倒れており、
背中側の肩の部分からは灰色をした機体のフレームが露出、
またコクピットらしき球体も腰の部分より顔を出している。
彼処(あそこ)をやれば、それで終わる。
カーテナを手放し、腰からビームピックを引き抜いた。
勿論、ダーティとてその間を待ってくれている訳はなく。
サッと振り返って、下半身を光らせる。
「……用は便所で済ませな」
ピックは……2本持っていた。
ダーツのように投げつければ、1発は腰を貫き、
もう1発は下半身の砲門に蓋をする。
エネルギーは再度暴発して、下半身が消し飛んだ。
ダーティが巻き起こした煙を背景に、仕留めたと思った矢先、
あの、
『……ヒヒヒッ』
なんていう不快な笑い声が聞こえてきて。


PHASE-12 狂った兵器(3/7)

「そこじゃなかったのか……コクピットは」

『……残念ね?「お兄ちゃん」』

煙の色はまた途中から変わっていたし、

晴れた先にもダーティの姿はなかった。

ただ、声だけが聞こえてくる。

『ヒッ……ヒヒ。きっと見つけられないでしょうけど、

意外に近くにいるわ。アナタのね……

今の私なら殺せるわ。アナタをね……

でも……つまらないでしょ?それじゃあァァ……ねェ』

「つまらない……か」

額に出来た傷口を軽く掻いた。

「だから、あのときも……俺を見逃したのか?」

あのとき……それはアーモリー・ワンでのことだ。

コアスプレンダーでとりあえず機体から脱出したとはいえ、

あのとき、その辺に転がっていた俺を、

上から踏み潰すなり、ビームで撃ち殺すなり、出来たハズだ。

だのに、ヤツはやらなかった。それが気になっていた。

『……えぇ。モチロン』

ヤツの声が聞こえてくる。

『もっと……アナタの絶望する顔が見たい。声が聞きたい。

だから、もう少し、もう少し生かしてあげるわ……』

「……もう少し?何かする気か?」

『しないわ……私は何もね』

そんな意味深な一言だが、実を言えば、

まるっきり思い当たる節がないこともなかった。

「……ルカーニアか」

『えっ?……ウソ、何故、それを……』

「何だよ。その言い草……俺は鎌をかけただけだってのに。

別に何をするかは知らない。知らないが……

あの男なら、ヴィトー・ルカーニアならやりかねない。

そう思っただけだ」

舌打ちが聞こえてくる。

「……生憎だがな。オマエがどうしようと、俺は絶望なんかしない。

殺したきゃ、殺しな。今すぐにでもな」

『そう……それなら、お望み通りに……』

発言にはウソがあった。いや、厳密にはウソではないが、

2点だけ、意識的に話さなかった箇所がある。

1つは、俺の会話を味方の電波に流していたこと。

サムやアレハンドロ、ダイ辺りは目の前の敵に手を焼いていて、

反応する余裕はなかったろう。

ヴァイデフェルトは……空気を読んだのだろうか。口を挟まなかった。

そして、もう1つは、ヤツの位置を分かっていたこと。

おおよそだが。

移動中を襲撃されたとき、ヤツの攻撃が飛んできた方向には、

小惑星があった。『モビルスーツなら隠れられる程度の』。

体躯を隠せる程度のものがそこにあれば、後は煙に紛れ、

レーダー上からも隠れればいい。理屈はこう単純。

だとして、今、ヤツの体躯が隠れられる場所があるとすれば……あそこしかない。

機体はギリギリまで動かさない。銃声が聞こえるまで、決して。

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