機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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──ヴィトー・ルカーニア。
国家元首ラクス・クラインより一回りばかり年上のこの男を、
評する世間の声は冷たい。
補充兵だの、何だのと理由をつけては、愛人を戦場に連れ回し、
また部下との不純な関係も噂される「騎上の男妾(だんしょう)」。
あるいは、派遣先での略奪行為や部下の強姦・殺害事件、
その他、狼藉の数々。
そもそも、前歴からして、
司法委員だった父を持ちながら、財力を背景に、
敵国にコーディネイターの人身売買をしていた密輸業者であり、
戦後にそれが問題になれば傭兵に転身し、
海賊同然のブラックビジネスで活躍した人物である。
多方面から非難の声は上がれども、未だORDER解任とは至らない。
それもひとえに彼が優秀であるからだ。


FINAL-PHASE 希望と絶望と(1/7)

今回の一件についてもそう。

グナイゼナウの周辺海域に爆弾を仕掛けていた。

フェイズシフト装甲の防御力を突破する程の量・火力を。

グナイゼナウは新設のコロニー。

高エネルギービーム兵器を想定し、

外壁の一部にフェイズシフトを採用していたから、

近海での爆発で全壊はしない、との判断であろう。

既に参謀総長以下、有力な司令官は退去した後。

最悪、グナイゼナウそのものが消し飛んだとしても、

問題はそう深刻ではない。

いざとなれば、脱走兵の連中のせいにでもするか?

死人に口なし。

となると、心配なのは情報漏洩(じょうほうろうえい)。

だから爆弾を仕掛けた兵士は口封じと始末され、

末端の兵士には何らの音沙汰(おとさた)ない。

例え、彼の作戦の為にどれだけの味方が犠牲になったとしても……

「勝てばいい……それだけだ。それ以外に意味はない」

ルカーニアは笑う。葉巻を口元に寄せながら。

「……他にいい方法があるか?これより」

足を伸ばし、両手を肘掛けより投げ出し、後頭部を背もたれにあてる。

ルカーニアはそんな体勢で、正面の大スクリーンを見ていた。

そこに映るのは、グナイゼナウ周辺海域の戦闘風景。

いや、虐殺の風景といった方が正しかろうか。

機首の先には、グナイゼナウの爆発に巻き込まれて傷ついた敵、

そしてその奥には、

黒に緑で「人を食らう大蛇」のシンボルが描かれた戦艦。

その名を『メディオラーヌム』という、この戦艦の周囲には、

多くのジズが取り巻いていた。

それも黒いボディに緑の左翼、赤の右翼を有するモデル。

これがざっと見ただけで20や30……いや、50機は下るまいて。

だけでなく、ルカーニアの旗艦『ベルフェゴル』の周囲にも、

見切れているが、それでも20、30は飛んでいるのが見えている。

総勢がどれぐらいになるかは知らないが、

ともかくそれほどの大勢に挟み撃たれれば、結果は明らかであろう。

この数のジズがビーム砲を代わる代わるに撃ち込めば、

弱点となる隙の大きさも問題ではなくなる。

しらみ潰しとばかりに、ザクらドムらを撃ちかければ、

射程の差と手数で勝り、

あるドムが頭を飛ばされ、別のドムは肩を飛ばされ、

また別のザクなどはシールドを構えるも間に合わず、

隙間を抜いてコクピットを撃ち抜かれ、塵(ちり)と散っていく。

そもそも例の爆発に巻き込まれて、半分は消し飛んだ。

残るは十数機。反撃の余力はなく、

カトリーナのものらしきムナガラーが飛んで逃げたのを引き金に、

次々と高度を上げて逃亡を図っていく。

皆が逃げ切れた訳ではなく、

例えばあるアダガが横腹を射ぬかれて散ったように、

いくらかはなおも続く砲撃に浴びせられ、爆発するのであるから。

また1機逃げ延びて、また1機散って。

繰り返すこと10分程度。

「もう、よろしいのでは?」

そう耳元に囁くフィロパトルへ、

「……あぁ」

と応じるルカーニアが、

「終(しま)いだ。これで」

そう左腕を振り上げて指示を出したところで、

この虐殺ショーは静かに終わりを告げた。

何せ、もう目前には鉄屑が転がるだけとなっていたのだから。

「……派手でしたね?閣下」

「誰にも文句は言わせんさ。俺が秩序(ORDER)だ」

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