機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
国家元首ラクス・クラインより一回りばかり年上のこの男を、
評する世間の声は冷たい。
補充兵だの、何だのと理由をつけては、愛人を戦場に連れ回し、
また部下との不純な関係も噂される「騎上の男妾(だんしょう)」。
あるいは、派遣先での略奪行為や部下の強姦・殺害事件、
その他、狼藉の数々。
そもそも、前歴からして、
司法委員だった父を持ちながら、財力を背景に、
敵国にコーディネイターの人身売買をしていた密輸業者であり、
戦後にそれが問題になれば傭兵に転身し、
海賊同然のブラックビジネスで活躍した人物である。
多方面から非難の声は上がれども、未だORDER解任とは至らない。
それもひとえに彼が優秀であるからだ。
今回の一件についてもそう。
グナイゼナウの周辺海域に爆弾を仕掛けていた。
フェイズシフト装甲の防御力を突破する程の量・火力を。
グナイゼナウは新設のコロニー。
高エネルギービーム兵器を想定し、
外壁の一部にフェイズシフトを採用していたから、
近海での爆発で全壊はしない、との判断であろう。
既に参謀総長以下、有力な司令官は退去した後。
最悪、グナイゼナウそのものが消し飛んだとしても、
問題はそう深刻ではない。
いざとなれば、脱走兵の連中のせいにでもするか?
死人に口なし。
となると、心配なのは情報漏洩(じょうほうろうえい)。
だから爆弾を仕掛けた兵士は口封じと始末され、
末端の兵士には何らの音沙汰(おとさた)ない。
例え、彼の作戦の為にどれだけの味方が犠牲になったとしても……
「勝てばいい……それだけだ。それ以外に意味はない」
ルカーニアは笑う。葉巻を口元に寄せながら。
「……他にいい方法があるか?これより」
足を伸ばし、両手を肘掛けより投げ出し、後頭部を背もたれにあてる。
ルカーニアはそんな体勢で、正面の大スクリーンを見ていた。
そこに映るのは、グナイゼナウ周辺海域の戦闘風景。
いや、虐殺の風景といった方が正しかろうか。
機首の先には、グナイゼナウの爆発に巻き込まれて傷ついた敵、
そしてその奥には、
黒に緑で「人を食らう大蛇」のシンボルが描かれた戦艦。
その名を『メディオラーヌム』という、この戦艦の周囲には、
多くのジズが取り巻いていた。
それも黒いボディに緑の左翼、赤の右翼を有するモデル。
これがざっと見ただけで20や30……いや、50機は下るまいて。
だけでなく、ルカーニアの旗艦『ベルフェゴル』の周囲にも、
見切れているが、それでも20、30は飛んでいるのが見えている。
総勢がどれぐらいになるかは知らないが、
ともかくそれほどの大勢に挟み撃たれれば、結果は明らかであろう。
この数のジズがビーム砲を代わる代わるに撃ち込めば、
弱点となる隙の大きさも問題ではなくなる。
しらみ潰しとばかりに、ザクらドムらを撃ちかければ、
射程の差と手数で勝り、
あるドムが頭を飛ばされ、別のドムは肩を飛ばされ、
また別のザクなどはシールドを構えるも間に合わず、
隙間を抜いてコクピットを撃ち抜かれ、塵(ちり)と散っていく。
そもそも例の爆発に巻き込まれて、半分は消し飛んだ。
残るは十数機。反撃の余力はなく、
カトリーナのものらしきムナガラーが飛んで逃げたのを引き金に、
次々と高度を上げて逃亡を図っていく。
皆が逃げ切れた訳ではなく、
例えばあるアダガが横腹を射ぬかれて散ったように、
いくらかはなおも続く砲撃に浴びせられ、爆発するのであるから。
また1機逃げ延びて、また1機散って。
繰り返すこと10分程度。
「もう、よろしいのでは?」
そう耳元に囁くフィロパトルへ、
「……あぁ」
と応じるルカーニアが、
「終(しま)いだ。これで」
そう左腕を振り上げて指示を出したところで、
この虐殺ショーは静かに終わりを告げた。
何せ、もう目前には鉄屑が転がるだけとなっていたのだから。
「……派手でしたね?閣下」
「誰にも文句は言わせんさ。俺が秩序(ORDER)だ」