機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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FINAL-PHASE 希望と絶望と(4/7)

あの醜い頭の中から飛び出した何かがジョーンに襲いかかった。

手にはナイフ。割と大きかったように記憶している。

いや、もしかしたら、包丁だったかもしれない。それは分からない。

ともかく、ヤツ──ダーティのパイロットは、

その手に刃物を持っていた。

ヤツは何故ジョーンを狙ったのか。ただ近くにいたからなのか。

いや、そもそも、人間を狙うような知能がそのときあったのか、

それすら分からない。

どうして、あそこにジョーンがいたのだろう。

ジョーンは言っていた。期待に答えたいと。

どうしてそう思った?アレハンドロが言ったから?

分からない。分からない。

……アーモリー・ワンを出たときに無理をするなって言ったのに。

ジョーンなんて、まだ新人なんだ。役に立てなくたって……

分からない。分からない。分からない。

あそこにいたのがジョーンじゃなかったら?

いや、そもそも……俺がヤツを捕虜にするなんて決めなければ。

分からない。分からない。分からない。分からない……

どこで間違えた?誰が間違えた?

ただ、結論だけを言うなら……

俺はヤツを捕虜にして、

戦闘の最中にヴァイデフェルトのジズに託し、ここまで運ばせた。

運ばれたヤツは刃物を片手にコクピットから飛び出し、

ジョーンを襲った。胸をひと突き。

慌てて周りの連中がヤツを押さえにかかる一方で、

ジョーンの姿が消えていく。

波のような人の群れの中で、溺れていくように。

俺は……あの群衆の中をどう抜け出たのか、記憶はない。

アレハンドロが、

「副長!」

なんて俺を呼んだのが、最後の記憶。

……気が付くと、俺は数名の隊員に両肩を押さえられていた。

目の前には、あのダーティのパイロット。

頭に巻かれたヒジャブの隙間から見えたヤツの口が、

赤い血を滴(したた)らせていて。

次いでに、俺の拳にも血が滲(にじ)む。

痛みも傷口もないところを見るに、ヤツの血だろおう。

「……押さえてください。副長」

右腕を押さえていたヴァイデフェルトが、そう囁(ささや)いて。

足下を見れば、ジョーンが倒れていた。

祈るみたいに胸を押さえて横たわる彼女は、指の一本も動かない。

彼女を刺したであろう刃物は、その辺に落ちていて。

更にしばらくすると、何の前触れもなく、

「……イヒヒ」

などという笑い声を漏らしたと思えば、

指を振り上げ、俺に何かを飛ばしてきた。

ベチャッという音を立てながら、俺の頬に着地した謎の液体。

濡れた彼女のボトムズと、なおも股間へ向けて伸ばされる手。

荒い息……

「……テメェ」

ヴァイデフェルトの腕を振りほどいて、一歩は前に出たが、

それ以上、かける言葉が見当たらなかった。

握る拳に力が入らなかった。

「副長!」

泣き出しそうな声で呼び止めるヴァイデフェルト。

俺は振り向く勇気もなくて、

ただ曲げただけの拳を静かに下ろした。

「……ヒヒヒヒヒヒッ!」

ヤツは笑っている。なおも。

……4月6日の昼頃のこと。俺たちの戦いはこうして終わりを迎えた。

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