機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS 作:申業
敵戦艦のハッチは左右に2つずつあり、
交互にモビルスーツが送り出され、計3機が急接近してくる。
相手の機体は《ZGMF-R09SS リックドムインフェントリーS改》。
蕾のような曲線を描く両肩が特徴的な、通称《SS型》。
2色の濃さの違う暗い青紫色のボディと装甲、
そして赤い十字の縁の内側、
黒いゴーグルの中に明るい黄緑を光らせた彼ら3機は、
やや後方に立つ2機がバズーカを、
比べて前方の1機がビームサーベルを、それぞれ構えつつ、
いずれも確実にハサンの方へと近付いてくる。
《リックドム》たちによる攻撃は間もなく始まった。
後方に立つ2機が肩に乗せたビームバズーカが火を吹き、
Im/A-Pはその片方は避けたものの、
避けた場所に飛んできたもう片方は回避しきれず、
着弾、放たれたビームが花火のように飛び散った。
もっとも、Im/A-Pも左手にビームシールドを貼り、
左側を前に出すように半身に、かつ少し屈み、
被弾面積を小さくすることでこれに耐えたが。
それでも無傷とはいかず、
飛び火したビームが機体の頭頂部を軽く削った。
そんな間にも、残る1機の《リックドム》が隙間を抜いて接近してくる。
左手にビームシールドを展開しつつ、
ダランと下げる形で右手は右足の腿(もも)の裏辺りに置き、
ハサンに右手が握るビームサーベルを見えないよう工夫している。
他方、ハサンとてただ見ている訳ではない。
後ろにやっていた右肩を今度は前に突き出す素振りを見せた。
次の瞬間、右肩の上に乗った3発のミサイルが発射された。
それはわざと、正面に立つ《リックドム》を"外す"ように。
ミサイルを格納していたポッドは間もなく機体からパージされ、
明らかに軌道の反れたミサイル弾に、
この《リックドム》はわざわざ反応しなかった。
それが大きな誤算だった。追尾機能を持つミサイルたちが、
《リックドム》を認識して方向転換し、襲いかかる。
それでも、《リックドム》はフェイズシフト装甲を採用したモデル。
ミサイルのような実弾兵器ではダメージを与えられない。
そう、それが"ただのミサイルだった"なら。
《リックドム》の左側に襲いかかったミサイルは、
着弾と共に自ら破裂した。周囲にビームを拡散しながら。
1発目が左肩と二の腕の間辺りに側面から命中。
2発目は左肘の辺りに命中。その衝撃が肘より下を吹き飛ばす。
そうして出来た隙間に、3発目が炸裂。
コクピットのある腹部に命中し、横腹を大きく抉った。
この一撃が大きく、同時にバックパックのスラスターまでも壊され、
《リックドム》の動きは止まった。
この時点で《リックドム》はほとんど戦闘不能だった訳だが、
そこはパイロットの意地か。
辛うじて動く右腕を力強く振り上げると、
ハサンめがけてビームサーベルを投げつけた。
とはいえ、そこまで。投擲されたサーベルはあっさり避けられた。
続いて、《Im/A-P》の背中についた大型ビームライフルが動く。
バックパックのアームにより接続されたこのライフルは、
射角を調整し、その銃口を傷付いたリックドムへと向けた。
こうして放たれた一撃は、
動かぬ的となったリックドムの腹部を正確に撃ち抜き、
まもなく機体は爆発し、パーツは四散した。
そのいくらかは、《Im/A-P》にも当たった。
『敵機撃破!……流石です!』
パーディはそう無線で彼を讃(たた)えるが、
「いや……」
敵のビームバズーカを避けつつ、左肩のミサイルで反撃。
敵も学んでいる。今度はもう1機がバズーカで1発は撃ち落とし、
もう1発をビームサーベルで切断。
どうにか3発目は命中したものの、左胸から展開された、
スクリーミングニンバスというビームの膜に守られ、
ダメージを与えられない。
「……まだ2機」
ハサンが言いかけたところで、
別のモビルスーツの反応がレーダー上に現れ……
戦艦《フレイヤ》のブリッジに戻ろう。
アナウンスから1分が経過。室内は暗いままで、
形態もイスが何席か増えた程度に変わっていた。そんな中で、
アレハンドロはなおもパーディの傍らにいた。
彼もまたマイクつきのヘッドホンを頭にしながら……
戦艦《フレイヤ》のレーダーが新たな反応を捉えた頃、
背後の自動ドアは開いた。
ドアの前には数名の男女が並んで立っている。
帽子を被った一人の女性を先頭にして。淡い水色の髪の上に、
ペンで線を引いたように見えるネイビーのメッシュが入り、
毛先が後ろ向きに跳ねた女性だ。
「待ってましたよ……ハビエル副艦長!」
アレハンドロが一礼。
背後にいた隊員たちが右へ左へそれぞれ違う向きに進み、
イスに腰かける中、
ハビエルと呼ばれたこの女性はそそくさと彼に歩み寄る。
「……状況を教えて?」
ハビエルの言葉だ。
「領空を侵犯する戦艦がいて……ですね」
そう言うアレハンドロの言葉を遮る形で、
「《2号機》、ロスト……」
とのパーディの声が響いた。