機動戦士ガンダムSEED C.E.81 LEFTOVERS   作:申業

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FINAL-PHASE 希望と絶望と(6/7)

この話もしておこう。

戦艦『フレイヤ』の廊下に立つ、ヴァイデフェルトの姿。

廊下には白い電灯が灯され、十分明るいのであるが、

ガラス窓から暗い外と月が見える。

半月よりは、少し大きいかというぐらいに。

上半身はほぼ微動だにせず、進むヴァイデフェルトの胸には、

花束が抱かれていた。青い薔薇(ばら)の花束が。

そうして向かう彼女のすぐ前で、ドアが開いた。

何日か前、アーモリー・ワンが襲われたときには、

寝ぼけて俺とぶつかった彼女だが、

今度は一歩下がって避けた上、

花束を落とさぬようによりギュッと体に寄せた。

さて、部屋から出てきたのだが、

「……ダイくん」

そうヴァイデフェルトが呼んだ時点では、長い前髪に隠れ、

その顔は見えていなかった。

ゆっくりと向き直り、その赤い目でヴァイデフェルトを見るダイ。

真っ先に目がいったのは、やはり花束だった。

少し首を傾げ、怪訝な表情を浮かべるダイに、

「……おかしいかな?」

なんてヴァイデフェルトは問うのだ。

「というか……今日は、何かの記念日なのか?」

花束を持つ手の位置が少しだけ下がった。その顔と一緒に。

「ううん……そういう訳じゃないけど」

ダイが一歩前に出た。ヴァイデフェルトの顔が上がる。

次いでダイの右手が、彼女の左肩に。

「……副長に、か?」

吐息が触れるほどの距離に、彼女の顔が斜め下に下がり、

そのままの向きで少しだけ頷く。

「副長は嫌がるぞ……多分な」

「え?」

ヴァイデフェルトの顔が上がる。

即座に、彼女の額へ左手の人指し指を当てるダイ。

そこからツーンと前に押しながら、

「……冗談だよ」

なんて笑うのだ。

「……えぇ?」

押された勢いままに、一歩下がるヴァイデフェルト。

表情も硬いが、ダイはお構いなしで、

「俺なら、ちょっと重いかなぁとは思うけどな。

嫌がりはしないだろう。副長も。あの人はいい人だからな」

ヴァイデフェルトの動きは止まっている。

「何だよ?」

電源を入れられたロボットのように、どこかぎこちなく、

ヴァイデフェルトが応じる。

「あっ、いやね……ダイくん、冗談言うタイプだと思ってなくて……」

「あぁ……そういう」

首を横に振るダイ。

次に彼が自分の両手を腰にあてたとき、

「ごめん」

丁度、ヴァイデフェルトの口からそんな言葉が。

「オマエ……よく副長の近くにいるもんな」

「……うん?」

「……副長の前じゃ、なるだけ無口なキャラで通してんだよ。

隊長は……それとは別に、個人的に嫌いだから、あんま喋らないが」

腰にあてていた右手を上げて、右の前髪をかきあげる。

「レイ・ザ・バレルって人を……知っているか?」

ヴァイデフェルトは首を横に振ってから、小さな声でつけ足す。

「……ごめん」

と。少し伏し目がちに。

「副長の元・同僚で、ユニウス戦役で活躍したエースパイロット。

パーソナルカラーはホワイト。それにアクセントでパープル。

それで本人は、金髪のロングヘアー……」

「……それって」

ヴァイデフェルトの顔が上がる。

今度は左手も上げ、両手で後ろから自身の髪を後ろから前へ押す。

揺れる、ダイの金髪ロングヘアー。

「マメに染めてるんだぜ?……隊長と違って」

「そうなんだ。ちなみに、その人は今、何を……」

ヴァイデフェルトの口が、いいかけて止まったところを見るに、

察したらしい。

「……戦死だ。ユニウス戦役でな」

ダイは横を向き、その横顔すら前髪で隠してしまった。

「俺は……」

体の向きも横に移る。

「……レイさんの代わりになりたいんだ。

いつまでだって、あの人の隣にいれるように」

ダイの右手がその眉間に触れる。

「まぁ……」

眉間から手が下がり、ゆっくりと前髪が退けられる。

「……俺は、俺だけどな」

赤い瞳がヴァイデフェルトに向けられた。

「……それ、渡してこいよ。副長に。

きっと喜ぶだろう。可愛い『部下』が選んでくれたものだ」

ヴァイデフェルトは顔を下げて、すぐには答えなかった。

「私さ……分からないんだよね。正直」

「分からない?」

ヴァイデフェルトが頷く。

「副長と話していると……何だか、その……上手くいえないけど、

私は副長に対して向き合ってるつもりなのに、

何だか副長の方は、私じゃなくて、別の人を見ている感じ……

というのことかな」

窓の外で月が少し位置を下げたように見えた。

「詳しいことは知らないが……副長は昔、家族を亡くしている。

天涯孤独ってヤツだ。所謂な。

俺にはその辛さは分からないが……まぁ、副長には妹がいたらしいし。

もしかしたら……ダブっているのかもな」

一度瞳を大きく開いて、それからゆっくり閉じる。

ヴァイデフェルトは静かに。

「……そう」

彼女の返事は重かった。

「喜んで……いいのかな?」

ダイも顔を逸らした。

「……何とも、言いにくいな」

「そうだね」

両手をポケットに突っ込み、外を見つめるダイ。

足下を見つめるヴァイデフェルト。しばしの沈黙が生まれた。

「……とりあえず、渡してこいよ。それから考えればいい」

「そうだね」

ヴァイデフェルトの足が前に出た。早歩きとか、小走りって感じで。

「ダイくん……ありがと」

すれ違い様に、そう呟いた。

「……あぁ」

ゆっくりと目を閉じるダイ。徐々に遠ざかっていく足音。

やがて、聞こえなくなった頃に、

「俺は……それでもいいと決めたんだ。あの人の側にいれるなら。

でも、まあ……そう思うよな。やっぱり。

好きな人には、自分を見てもらいたいって……」

そうゆっくりとではあるが、ダイも進み出した。

ヴァイデフェルトとは逆の方向に。

「ただ……俺には耐えられないよ。

自分を通して、嫌われることなんて」

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